「アンディ・ウォーホル展:永遠の15分」 森美術館

森美術館
「アンディ・ウォーホル展:永遠の15分」 
2/1-5/6



森美術館で開催中の「アンディ・ウォーホル展:永遠の15分」のプレスプレビューに参加してきました。

20世紀後半のアメリカを代表するクリエイターであるアンディ・ウォーホル(1928-1987)。いわゆるアートのみならず、デザイン、写真、音楽プロデュース、映像その他と各方面に進出。様々な業績を残してきました。

ともかく作品は膨大。例えばアート面から振り返ってはどうか。それこそ昨年のポップ・アート展しかり、いくつかの代表作を見る機会は少なくない。しかしながら時間を追ってどう展開していったのか。ファンならいざ知らず、意外とあまり知られていないかもしれません。


「アンディ・ウォーホル展」会場風景

そこで本展です。時系列でウォーホルの制作を見る。出品は400点。全てアンディ・ウォーホル美術館のコレクションです。また作品に加えてウォーホルの私的所有品、通称「タイムカプセル」もあわせて展示。こちらは300点です。うち来日時に彼が集めた資料も含みます。日本では20年ぶりとなる本格的な回顧展。さすがに一定のスケール感はありました。


右:アンディ・ウォーホル「自画像」 1986年
左:アンディ・ウォーホル「自画像」 1978年


では展示を追いかけましょう。まずは自画像。実は本展、最後も自画像で終えますが、それは展示の通底に「ウォーホルは何者なのか?」という問いが投げかけられているから。いわゆるマルチに活躍したウォーホル。それこそ女装など、自画像からして多様ですが、ともかくも冒頭において初期から晩年までのポートレートがいくつも紹介されています。


撮影者不明「少年期のアンディ・ウォーホル」 1935年 他

最初期のものでは3歳の頃に母や兄とともに収まった写真も。また1954年には世界一周旅行に出かけますが、その際に日本に立寄り、おそらくは東京で「はとバス」に乗ったのではないかということ。皇居前で記念撮影に収まったウォーホルの写真も展示されています。

それにしても自画像ではとかく奇抜にも見えるウォーホル。性格は内向的、また容姿にコンプレックスを持っていたとも伝えられるそうです。一方でのスナップ写真ではあまり演じることもないのでしょうか。例えば1980年にローマ法王に謁見した際の写真。にこやかな笑みを浮かべている。そもそもカトリック教徒でもあります。


右:アンディ・ウォーホル「靴と脚」 1950年代

さて1949年の大学卒業後、NYでイラストレーターとして成功したウォーホル。ファッション誌の「ヴォーグ」や「グラマー」、そしてシューズメーカーの広告イラストレーションなどを手がけていく。またこの時期で興味深いのは「ブロッテド・ライン」と呼ばれる技法です。ペンで先に紙に描き、別の紙に押し当てて転写する。それによって独特の線描を獲得しました。

また新聞や雑誌をコラージュしたり、ゴム印を使って反復させた技法も確立。また一風変わって屏風仕立ての作品なども作っています。反復や転写。後にウォーホルが多用するシルクスクリーンにも通じる面があるかもしれません。


右:アンディ・ウォーホル「キャンベル・スープ缶(トマト・ライス)」 1961年
左:アンディ・ウォーホル「潰れたキャンベル・スープ缶(ビーフ・ヌードル)」 1962年


60年代に入ると美術館への進出を図ります。絵画の制作です。例えばお馴染みのキャンベル缶から「トマト・ライス」。ここでは絵具を直接指でのせたり、また垂らしたりしている。隣の「ビーフ・ヌードル」はどうでしょうか。下書きに鉛筆を用いています。また同時期の「バスタブ」では塗り残しをそのまま利用した。これらは彼が反発したアメリカの抽象主義の描法に影響された面もあるそうです。キャンベル缶の一つをとっても制作上において様々な実験をしていることが分かります。


右:アンディ・ウォーホル「病院」 1963年
左:アンディ・ウォーホル「自殺(シルバーの飛び降りる男)」 1963年


そしてこの時期にウォーホルが取り上げたのが人の死です。それが「死と惨禍」シリーズ。まずは「病院」です。母体から逆さ吊り取り上げられた赤ん坊。血まみれなのでしょうか。モノクロの画面では真っ黒に写っている。不気味で恐ろしい光景。しかしながらそれを覗きたくもなる欲望。「自殺」や「電気椅子」も同様です。人は死に対してどう反応するのか。ウォーホルの意図はともかくも、やはり考えさせられる面は多分にあります。


アンディ・ウォーホル「マリリン・モンロー(マリリン)」 1967年

ちなみにこれらはいずれも報道用の写真を何度も転写して作られたとか。そもそも半ばアイコンと化した「マリリン・モンロー」でさえ、当初はウォーホル自身が女優の死のニュースを見聞きして制作したものでもあります。「死と惨禍」。全体からすれば僅かな出品に過ぎませんが、私の中でのハイライトはこのセクションでした。

さて時代別にウォーホルの制作を半ば体感的にも見ていく展示。その最たるものがアトリエ。ウォーホルがNYに構えたスタジオ「シルバー・ファクトリー」が再現されています。


「シルバー・ファクトリー」展示風景

会場ではご覧のようにスタジオの一部を実寸大で再現。シルバーの名の如く内部は全て銀色のアルミフォイルで装飾されています。ちなみにこの装飾の発案は写真家のビリー・ネーム。彼もスタジオに住み着き、訪問者やウォーホルの制作風景を多数カメラに収めました。


手前:アンディ・ウォーホル「ブリロの箱」 1961年 (シルバー・ファクトリーから)

ウォーホルはここで多くのアシスタントを使いながら作品を生み出す。まさに工場です。また床面に並ぶのは「ブリロの箱」。既製品の段ボール箱とまるでそっくりな箱を木で作る。ラベルの文字や絵はシルクスクリーンです。ウォーホルはこれをコレクターに一山ごとに売ろうとしたとか。日用品と芸術品との価値との関係。当時、様々な議論を巻き起こしました。

またあわせてウォーホルのプロデュースしたバンドのヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコの映像も一部紹介されています。この辺りも見どころの一つとなりそうです。


アンディ・ウォーホル「毛沢東」 1973年

少し長くなりました。先を急ぎます。1968年に起きた銃撃事件により瀕死の状態に陥ったというウォーホル。72年の「毛沢東」シリーズから美術の制作を再開。「ビジネス・アート」の言葉のもと、有名人のポートレートシリーズ、いわゆる注文肖像画の制作を多数受けます。


アンディ・ウォーホル「絶滅危惧種:アフリカゾウ」他 1983年

また活動も多様化。例えば1983年の「絶滅危惧種」。雑誌や新聞から選んだその名も絶滅危惧種の動物たち。アメリカの自然史博物館に展示した他、売却益の一部を保護団体に寄付したとのこと。また一方でアーティストとのコラボも展開。中でも親しい友人だったパスキアとの活動です。「ドル記号」絵画にパスキアが手を加える。二人の関係はウォーホルの死まで続きました。


左:ジャン=ミシェル・バスキア、アンディ・ウォーホル「コラボレーション(子年、ロデント)」 1984~85年

晩年は例えばキャンベル缶など、かつてのモチーフなり制作手法を言わば反復させているのも特徴です。一方で宗教的なモチーフも現れます。「十字架」です。また1983~84年に日本で行われたウォーホル回顧展のための作品も紹介。TDKのテレビ広告に出演したこともあったそうです。まるで俳優のように卒なくこなすウォーホル。心中如何なるものだったのでしょうか。


「タイムカプセル」関連資料

その他ウォーホルの映像作品をまとめたコーナーや初めにも触れた「タイムカプセル」の資料も展示。彼は74年に個展を開くために来日していますが、その頃から日本に関する文物、雑誌や写真を収集していたようです。浮世絵から雑誌の文楽特集、さらには長嶋茂雄が表紙の報知グラフなども目を引きました。


「アンディ・ウォーホル展」映像展示風景

チラシにもある「入門編」という言葉が当てはまります。ともかく各方面に様々な足跡を残したウォーホル。受容史なりを検証するというよりも、ウォーホルの人生そのものを作品とともに追体験する。そうした展覧会と言えるかもしれません。

なおウォーホルが大阪万博のアメリカ館で発表した「レイン・マシン」(*)。その改良版(一度、破棄されたため。)が出品されますが、期間は限定です。3月1日より会期最終日まで森タワー52階のシティービュー内に開設予定の「ウォーホル・カフェ」にて展示されます。ご注意下さい。


「アンディ・ウォーホル展」会場風景

内覧に引き続いて、会期初めの日曜に見て来ましたが、早々も関わらず、かなり賑わっていました。GWまでのロングランの企画、後半は混雑するかもしれません。

「アンディ・ウォーホル展:永遠の15分/美術出版社」

5月6日まで開催されています。まずはおすすめします。

*3D加工されたひなぎくの花の写真が枡目状に並ぶ壁の前に、人工の雨を降らせるインスタレーション。

「アンディ・ウォーホル展:永遠の15分」 森美術館@mori_art_museum
会期:2月1日(土)~5月6日(火・休)
休館:会期中無休。
時間:10:00~22:00 *入館は閉館の30分前まで。
 *毎週火曜日のみ17時まで開館。但し2月11日(火・祝)、4月29日(火・祝)、5月6日(火・休)は22:00まで開館。
 *4月19日(土)は「六本木アートナイト2014」開催に伴い翌朝6:00まで開館。
 *入館は閉館時間の30分前まで
料金:一般1500円、大学・高校生1000円、中学生以下(4歳まで)500円。
 *入館料で展望台「東京シティビュー」にも入場可。
場所:港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
交通:東京メトロ日比谷線六本木駅より地下コンコースにて直結。都営大江戸線六本木駅より徒歩10分。都営地下鉄大江戸線麻布十番駅より徒歩10分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
« 「プライベー... 「世紀の日本... »
 
コメント
 
 
 
光栄です! (じょなみ)
2014-04-01 21:14:05
トラバ返しありがとうございました!
こんな、しっかりとした鑑賞レビューが書けるはろるどさんに返していただけて大変光栄です!
写真がいっぱいで展覧会の雰囲気を思い出しました
また解説も充実していて大変勉強になりました(*^_^*)
 
 
 
Unknown (はろるど)
2014-04-06 20:16:28
@じょなみさん

こんばんは。こちらこそコメントをありがとうございます。

光栄などとんでもないです!
少しでも展覧会の雰囲気、また感じていただければ嬉しいです。

今後とも宜しくお願い致します!
 
 
 
はじめまして (comcom)
2014-05-06 14:48:56
はろるどさん

こんにちは、はじめまして。comcomと申します。

TBさせていただきます。

ブログも始めたばかりで、勝手があまりよくわかっていないのですが、とてもわかりやすいレポートを拝読し、たいへん勉強になりました。

これからも記事楽しみにしています!
よろしくお願いいたします。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2014-05-12 22:00:09
@comcomさん

こちらこそ初めまして。
コメントとTBをありがとうございました。

>とてもわかりやすいレポートを拝読し、たいへん勉強になりました。

お褒めの言葉恐縮です!

こちらこそ今後とも宜しくお願いします!
 
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。