「原三溪の美術 伝説の大コレクション」 横浜美術館

横浜美術館
「生誕150年・没後80年記念 原三溪の美術 伝説の大コレクション」
2019/7/13~9/1



横浜美術館で開催中の「生誕150年・没後80年記念 原三溪の美術 伝説の大コレクション」を見てきました。

1868年に岐阜で生まれ、横浜を拠点に生糸貿易や製糸業で財を成した原三渓(本名:富太郎)は、書画を描き、茶を嗜み、美術品を蒐集したり日本画家を援助するなど、文化面でも幅広く活動しました。

その原三溪の旧蔵品が横浜美術館へ一堂に集まりました。出展数は約150点(展示替えあり)に及び、このスケールで公開されたのは、没後にコレクションが分散した後、初めてことでもあります。

冒頭のプロローグ、原三溪が自ら描いた「白蓮」に心惹かれました。そもそも三溪は、母方の祖父である南画家の高橋杏村に絵を学ぶなど、幼少期の頃から書画や詩文に親しんでいました。同作は輪郭線を用いず、淡い色彩によって蓮を表した作品で、三溪は故郷の岐阜の生産で有名な蓮を多く描きました。



「乱牛図」は三溪が16歳の頃に描いた一枚で、放牧牛や牧童を南画風に表していました。また先の高橋杏村や、長男で三溪の叔父に当たる高橋杭水の南画も展示されていて、あわせて見比べるのも興味深いかもしれません。

平安や鎌倉期の仏画をはじめ、雪舟や雪村、それに光琳から応挙、さらには玉堂に鉄斎など、三溪の蒐集した書画も大変に見応えがありました。「愛染明王像」は、数少ないとされる平安期の愛染明王の優品で、蓮華座の上で口を開け、6本の腕を四方へ伸ばしては、見る者を畏怖するように座る姿を捉えていました。


「寝覚物語絵巻」 平安時代後期(12世紀) 大和文華館 展示期間:8月9日(金)~9月1日(日)

「寝覚物語絵巻」も絶品でした。11世紀末頃に成立した「夜の寝覚」なる絵巻の末尾部分の残欠で、戸外で桜が可憐に咲く光景などを、実に繊細でかつ優美に表していました。またどこか装飾的な表現も印象的でしたが、実際にも三溪は本作において、琳派の創作者が何らかの刺激を受けたのではないかと指摘しているそうです。

伝毛益の「萱草遊狗図」も忘れられません。南宋の宮廷画家による作品で、親犬と戯れ合う子犬などを可愛らしく、また生き生きと描いていました。三溪は本作を大正8年、同じく毛益作とされる「蜀葵遊猫図」とともに購入して、「優秀ナルモノ」と高く評価しました。先の「寝覚物語絵巻」とあわせ、三溪の蒐集した古美術品の中でもすこぶる優品と言って良いかもしれません。

江戸時代の絵画では浦上玉堂の「積翠鐘声図」に魅せられました。墨を重ねては、迫り上がるような山水の風景を表現していて、何とも言い難い躍動感も感じられました。この他、小品ながらも、余白を活かしては、虹の広がる様を雄大に示した応挙の「虹図」も印象に残りました。

三溪は茶や懐石の際、伝統的な作法によらず、自由な趣向で楽しんでいたそうです。それゆえか茶にまつわるコレクションも実に幅広く、会場でも奈良時代の水瓶から桃山の黒織部、朝鮮の刷毛目茶碗、それにシリア北部のラッカの杯や香炉など、様々な品が展示されていました。そのうち特に見入ったのが、森川如春庵の「信楽茶碗 熟柿」で、それこそ熟れきった柿色に染まった、表面のざらりとした質感に心惹かれました。


下村観山「弱法師」 大正4(1915)年 東京国立博物館 展示期間:8月9日(金)~9月1日(日)

ラストはパトロン三溪、すなわち三溪が支援した同時代の日本画家の作品でした。ここでは下村観山の「弱法師」や菱田春草の「秋林遊鹿」、さらに今村紫紅の「近江八景」、小林古径の「極楽井」や速水御舟の「萌芽」など、いずれも甲乙つけがたいほどに魅力的な作品が並んでいました。三溪は単に美術家を金銭的に援助しただけでなく、古美術品を見せる場を与えたりするなど、教育的な支援もあわせて行っていました。ともすると近代日本画の発展は、三溪の存在なくしては成し得なかったのかもしれません。



展覧会にあわせ、同館内アートギャラリー1で行われている「もっと知ろう!原三溪―原三溪市民研究会10年の足跡」も充実していました。2007年に「原三溪翁伝」を読み解くために発足した市民研究会による展示で、原三溪の人間像や足跡を写真や解説パネルなどで事細かに紹介していました。

最後にイベントの情報です。8月の後半、5日間限定にて横浜美術館と三渓園を結ぶ無料のシャトルバスが運行されます。



5日間限定!「横浜美術館・三溪園間 無料シャトルバス」(PDF案内
運行日:8月19日(月)、20日(火)、21日(水)、23日(金)、26日(月)
料金:無料。(要整理券、先着順、定員制)
*美術館からの乗車は「原三溪の美術」展のチケット半券の提示が必要。

横浜美術館発は11:10、12:30、14:00、15:20で、三溪園発は10:30、11:50、13:20、14:40、17:10で、各便26人までの定員制です。横浜美術館、三渓園とともに当日、事前に整理券を配布し、なくなり次第終了となります。

所要時間は約30分ほどです。三溪園へは通常、美術館の最寄駅である桜木町からも市営バスで行き来可能ですが、シャトルバスを利用して改めて三溪園を散策するのも良いかもしれません。なお展覧会会期中に限り、本展のチケットを提示すると三溪園の入園料が100円引、また三溪園の入園チケットで本展の観覧料が300円引になります。


お盆休み期間中の平日に観覧してきましたが、混雑こそしていなかったものの、場内は思いの外に盛況でした。会期末も迫り、終盤にかけてより多くの方で賑わうのではないでしょうか。



まさにご当地、横浜美術館のみの単独の展覧会です。巡回はありません。

9月1日まで開催されています。

「横浜美術館開館30周年記念 生誕150年・没後80年記念 原三溪の美術 伝説の大コレクション」 横浜美術館@yokobi_tweet
会期:2019年7月13日(土)~9月1日(日)
休館:木曜日。
時間:10:00~18:00
 *毎週金曜・土曜は20時まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600(1500)円、大学・高校生1200(1100)円、中学生600(500)円、小学生以下無料、65歳以上1500円
 *( )内は20名以上の団体料金。要事前予約。
 *毎週土曜日は高校生以下無料。(要学生証)
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
交通:みなとみらい線みなとみらい駅5番出口から徒歩5分。JR線、横浜市営地下鉄線桜木町駅より徒歩約10分。
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