「ブルーノ・ムナーリ―役に立たない機械をつくった男」 世田谷美術館

世田谷美術館
「ブルーノ・ムナーリ―役に立たない機械をつくった男」 
2018/11/17~2019/1/27



世田谷美術館で開催中の「ブルーノ・ムナーリ―役に立たない機械をつくった男」を見て来ました。

20世紀のイタリアを代表する美術家のブルーノ・ムナーリ(1907〜1998)は、単に美術に留まらず、デザイン、絵本、著述のほか、子どもへの造形教育などの領域で幅広く活動しました。

ムナーリの原点は、イタリアの未来派にありました。未来派とは、20世紀初頭にイタリアを中心に興った前衛芸術運動で、伝統を否定し、工業化社会に基づく機械美やダイナミズムを賞賛しては、美術のみならず、写真や建築、それに音楽や文学などで展開しました。ムナーリ自身も1926年、「未来派宣言」を発表した詩人フィリッポ・マリネッティに出会い、同派の一員として活動をはじめました。都市の建物を幾何学的に構成した「風景」などは、この時期のムナーリの画風を示す典型的な作品かもしれません。

「動き」も未来派の重要なテーマの1つでした。それを反映したのは、「役に立たない機械」で、紙片や板などを糸で繋ぎ、天井から吊り下げたオブジェでした。僅かな風に靡いては、紙片が緩やかに回転する光景は、まるでおもちゃのように楽しげでした。

第2次世界大戦が終わると、ムナーリはミラノで結成された「具体芸術運動」(MAC)の創設メンバーになりました。その頃に発表したのは「陰と陽」で、全ての色彩や線に等しい役割を設け、人の目の中で色彩の運動を起こすことを目指しました。一例が、板に青や黒の色面が配された「陰と陽」で、ちょうど右に切り込みがあり、作品の向こうの白い壁が、さもキャンバス地のように開いていました。作品は確かに静止しているものの、しばらく眺めていると、不思議と色面が前後や左右に動き出すかのような錯覚を覚えました。頭の中で回転させた姿をイメージして見るのも楽しいかもしれません。

「ムナーリの機械/河出書房新社」

ムナーリでよく知られるのは、やはり絵本の仕事ではないでしょうか。1945年、5歳の息子に与える絵本がないと感じたムナーリは、自ら絵本を作ることを決め、絵本シリーズ10冊を考案しました。同年には、早くも7冊が出版されたそうです。

ただしムナーリの絵本は、一般的なそれとはかなり異なっているかもしれません。例えば本の中に小さな紙がとじ込まれていて、めくると別の場面が現れたり、そもそも紙だけでなく、フェルトや木、トレーシングペーパーを用いるなど、素材も多様でした。もちろん展示品に触れることは叶いませんが、おそらくは絵本の鑑賞に際して、視覚だけでなく、触覚も重要になるのではないでしょうか。ムナーリは「子ども自身の経験で物語を変化させる必要がある。」(解説より)と考え、読み手の想像力を刺激するような絵本を作り上げました。

ともかく多彩に展開したムナーリの活動を一括りにすることは出来ません。「旅行のための彫刻」では1枚の紙を用い、旅先に持ち運べるようにした作品で、ともすると石や木材などを素材とした彫刻に軽さや運動を取り入れました。ムナーリは、誰もが最小限の方法で美術を創造し得るべきだと考えていました。

デザインとしては、カンパリの広告や、ダネーゼとのプロダクトや遊具の仕事があげられるかもしれません。一枚のアルミ板による「灰皿」は、シンプルながらも、古さを感じないモダンなデザインで、機能性も兼ね備えていました。


いわゆる「見立て」も、ムナーリの自由な発想を示す一つの例と言えるかもしれません。「おしゃべりフォーク」では、フォークの歯を指に見立て、人の仕草を表した作品で、まるでフォークが語りかけるようなジェスチャーを見せていました。

ほかにもムナーリが生涯を通して扱った文字に関した仕事も重要ではないでしょうか。作品は計300点にも及びます。その膨大な業績と高い創造力に圧倒されるものがありました。

「ブルーノ・ムナーリ/求龍堂」

カタログも380ページと重量級でした。ムナーリの子で、ジュネーヴで大学の名誉教授も務めるアルベルト・ムナーリもテキストを寄せるなど、論考も充実していました。ムナーリの全貌を捉えるのに有用な一冊となりそうです。



なお本展は、今年の4月に神奈川県立近代美術館葉山で開催された巡回展の最後の会場になります。



2019年1月27日まで開催されています。

「ブルーノ・ムナーリ―役に立たない機械をつくった男」 世田谷美術館@setabi_official
会期:2018年11月17日(土)~2019年1月27日(日)
休館:毎週月曜日。但し2018年12月24日(月・振替休日)、2019年1月14日(月・祝)は開館、2018年12月25日(火)、2019年1月15日(火)は休館。年末年始:12月29日(土)~1月3日(木)。
時間:10:00~18:00 *最終入場は17時半まで。
料金:一般1000(800)円、65歳以上800(600)円、大学・高校生800(600)円、中学・小学生500(300)円。
 *( )内は20名以上の団体料金
 *リピーター割引あり:有料チケット半券の提示で2回目以降の観覧料を団体料金に適用。
住所:世田谷区砧公園1-2
交通:東急田園都市線用賀駅より徒歩17分。美術館行バス「美術館」下車徒歩3分。
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