「レオナール・フジタ展」 Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム
「レオナール・フジターポーラ美術館コレクションを中心に」
8/10~10/14



国際最大のフジタコレクションを展観します。Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「レオナール・フジターポーラ美術館コレクションを中心に」へ行ってきました。

フジタと言えばまず思い浮かぶのは美しき乳白色。その質感表現はどのように成されたのか。意外と知られていない面も多いかもしれません。

本展ではそうした乳白色の『秘密』についても探求。乳白色の作品はもとより、フジタと関わりのあったエコール・ド・パリの画家、また彼がパリのアトリエに飾ったタイル画などを紹介。いくつかのトピックからフジタの画業を見る仕掛けとなっています。


レオナール・フジタ「タピスリーの裸婦」1923年 油彩/カンヴァス 京都国立近代美術館

さてはじまりは乳白色、その誕生です。1913年に渡仏、1920年代の初めには早くも乳白色で名を挙げたフジタ。「タピスリーの裸婦」に展開されるのも乳白色です。また細い面相筆による描線もフジタならではもの。またタピスリーに描かれた香しい花々も見どころです。どこかモミュメンタルでかつ彫像的な感も受ける裸婦像ですが、花や猫は思いの外に写実的に描かれていることが見て取れます。

また乳白色と並び興味深いのは、フジタが同時代の画家と如何に交流し、また彼ら彼女らから何を学んでいたのかということです。


アメデオ・モディリアーニ「ルニア・チェホフスカの肖像」1917年 油彩/カンヴァス ポーラ美術館

ここではフジタとともに、ルソー、モディリアーニ、パスキンらの作品もあわせて展示しています。ともに南仏に旅したモディリアーニやスーティンらと深く交流。モディの描く特徴的な首の長い人物像、言われてみればフジタの描く女性にもそのような表現が見られます。

さて最初にも触れた乳白色の秘密とは何なのか。それがベビーパウダーです。フジタは下地の油分を制御するためにベビーパウダーを用います。パウダーには墨を引きやすくするタルクという成分が含まれているのだそうです。

ちなみに本展では土門拳がパリのアトリエのフジタを捉えた写真も公開。そこには確かにベビーパウダーの缶が写っています。筆を手にとりキャンバスへと向かうフジタの姿には迫力がありました。


レオナール・フジタ「つばめと子供」1957年 油彩/キャンバス ポーラ美術館

展示後半のテーマは子どもとアトリエです。戦後、再びフランスへと渡ったフジタはパリを拠点に活動、子どもを主題とした作品を多く制作します。

フジタの描いた子どもは理想の家の住人のこどもです。そしてその家にはアトリエが。フジタは同じく理想のアトリエをマケット(模型)で表現。それが展示されているのです。

小さなベットにテーブル、そして暖炉。ドールハウスそのものですが、このマケットを舞台にして子どもを描いた絵画を描いているのもポイントです。例えば「たまごを持つ少女」はマケットの暖炉の前でのポーズ。また油彩の「室内」はそもそもマケット内部を描いたものです。またチラシ表紙、11人の子どもたちが円卓を囲む「誕生日」は、ポーラ美術館の創業家で二代目の鈴木常司が最初にコレクションした作品だとか。どこか無表情にも映る子どもたちもここでは生き生きとしています。


レオナール・フジタ「床屋」1958年 油彩/ファイバーボード ポーラ美術館

ラストはタイル画の「小さな職人たち」シリーズです。アトリエの壁面に飾るため、晩年にタイル画を200点ほど制作したそうですが、ポーラではうち95点を所蔵。それらの全てが公開されています。

またこれに先行して作られたアトリエのスペイン扉を飾るパネル画も紹介。また復元されたスペイン扉もあわせて展示されています。

最後に面白かった作品を一つ。それが大型の2面の油彩、「植物のなかの裸婦」です。青みを帯びた背景に絡む植物の蔓、そして裸婦の描かれた作品ですが、元々は屏風絵であったとか。戦後、GHQとともに来日してきた人物のために描かれたものだそうです。その装飾的な作風からはミュシャを連想しました。


レオナール・フジタ「秋」1953年 油彩/キャンバス ポーラ美術館

いわゆる回顧展ではなく、タイル画などの小品も多い展示ですが、いくつかのトピックに焦点を絞ったフジタ展。フジタ・ファンにはたまらない内容かもしれません。

「もっと知りたい藤田嗣治/林洋子/東京美術」

館内は余裕がありました。ゆったり楽しめると思います。

10月14日まで開催されています。

「レオナール・フジターポーラ美術館コレクションを中心に」 Bunkamura ザ・ミュージアム
会期:8月10日(土)~10月14日(月・祝)
休館:会期中無休。
時間:10:00~19:00。毎週金・土は21時まで開館。入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1300(1100)円、大学・高校生900(700)円、中学・小学生600(400)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。要電話予約。
住所:渋谷区道玄坂2-24-1
交通:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東急東横線・東京メトロ銀座線・京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東京メトロ副都心線渋谷駅3a出口より徒歩5分。
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