「渡辺聡 『dim vistas』」 TARO NASU GALLERY

TARO NASU GALLERY港区六本木6-8-14 コンプレックス2階)
「渡辺聡 『dim vistas』」
1/29-2/16



一枚の絵画から、もう一枚の絵画を抜き出して、生成します。ドット状のシールを用いて絵画を自在に半ば複製、また再生させてしまう、渡辺聡の個展です。

モチーフは世界各地の風景です。例えばヨーロッパの街角を捉えたような景色が、無数の白抜きのドットから浮き上がるかのようにして描かれています。図版(上の画像はTABより転載。こちらにかつての展示の写真あり。)がないので何ともお伝えしにくいのですが、ようはその描かれた風景を、約1センチにも満たない小さなドットが整然と連なって覆い尽くしているのです。そしてそのすぐ隣に、ドットに埋め尽くされたもう一枚の同モチーフの風景画が並んでいます。つまりは一見、同じに見える『ドット風景画』が、同時に二枚並んで提示されているわけです。

この二枚は、一方が描かれた風景よりドット部分を抜いたもの、そしてもう一方がその抜いたドットを同じ配列にて別のキャンバスに張ったものでした。元々、このドットの張ったキャンバスの上に風景を描き、まずはそれを一枚ずつ、丹念に剥がす作業から始まるということですが、万を数えるというそのドットを別のキャンバスへ移し替えていることを考えただけでも、何か途方に暮れてしまうような画家の執念を感じます。白抜きのドットによって抜かれた、もしくはそのドットだけで構成された風景はどこか危うく、絵画と言うよりも映像のような雰囲気も感じられますが、例えば人が一度見た景色の記憶のように、到底、細部まで覚えていないそのイメージを絵画として表したような感覚なのかもしれません。

エッフェル塔や天壇公園など、誰しも知る有名観光地の風景が多いのも印象に残りました。また時に、ドットが風景を解体するかのようにして拡散していきます。まるで記憶の断片が拡散していく様子を見るかのようです。

今月16日までの開催です。これはおすすめします。
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