メールマガジン「『失われたアートの謎を解く』の謎を解く!」が発行されます

9月7日(土)にちくま新書より発売される『失われたアートの謎を解く』(監修:青い日記帳)。

「失われたアートの謎を解く/監修・青い日記帳/ちくま新書」

レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」やフェルメールの「合奏」などの盗難事件をはじめ、ナチスの美術品犯罪や戦争による破壊、ないし高松塚古墳やラスコーといった文化遺産など、いわゆる「失われたアート」についてまとめた本で、失われた経緯や奪還、再生への努力など、歴史の裏側に潜むドラマや人との関わりなどについて紐解いています。



またちくま新書としては異例と言って良いほどヴィジュアルが多く、テキストを追うだけでなく、図解資料を一覧しながら楽しめるようにも工夫されています。



その『失われたアートの謎を解く』の発売に際し、本の概要や魅力を紹介するメールマガジン、「『失われたアートの謎を解く』の謎を解く!」が発行されます。

登録は至って簡単です。下記の専用サイトにお名前とメールアドレスを記入するだけです。ご登録後、翌日朝7時より毎日計5通、メールマガジンが自動で届けられます。お名前はハンドルネームで構いません。無料(通信料金を除く)で利用いただけます。途中で配信を停止することも可能です。

▼「『失われたアートの謎を解く』の謎を解く!」メールマガジン登録はこちらから
https://mail.os7.biz/add/ITqX


計5回のメールマガジンでは、本の内容だけでなく、執筆陣や編集者へのインタビューの他、監修を務めた青い日記帳のTak(@taktwi)さんのコメントなども掲載されます。また第1回目と5回目には、無料で紙面を試し読み出来るメールマガジン読者限定の「特典PDF」もプレゼントされます。

▼「『失われたアートの謎を解く』の謎を解く!」メールマガジン注意事項

1. メールアドレスをご登録いただいた方にEメールにて配信いたします。
2. 本サービスは無料(通信料金は除く)でご利用いただけます。
3. 本サービスの利用に当たっては、メールアドレスの登録が必要になります。
4. 本サービスは「『失われたアートの謎を解く』編集チーム」が登録受付及びメール配信におけるサービス利用契約を締結した株式会社オレンジスピリッツのオレンジメールサービスを使用しての提供になります。

メールマガジンは「『失われたアートの謎を解く』編集チーム」が受付、発行しますが、配信に際しては筑摩書房の許可をいただいています。なお今日9月6日には、筑摩書房より『失われたアートの謎を解く』の特設サイトもオープンしました。そちらでは「ムンク《叫び》は二度盗まれる」を試し読みすることも出来ます。



▼『失われたアートの謎を解く』特設サイト
https://www.chikumashobo.co.jp/special/mysteryof_lostart


最後にイベントの情報です。現在、「青い日記帳×池上英洋!失われたアートの謎を解く」のトークイベントの参加者を募集中です。



<丸善雄松堂 知と学びのコミュニティ>
「青い日記帳×池上英洋!失われたアートの謎を解く」
日時:2019年9月14日 (土) 19:00〜20:40 *受付開始:18:30
会場:DNPプラザ2階(新宿区市谷田町1丁目14
参加費:500円
申込サイト→https://peatix.com/event/1311804

これは青い日記帳のTakさんと、『失われたアートの謎を解く』に寄稿された東京造形大学教授の池上英洋先生が、紙面に取り上げられた美術品などについて話すもので、来年に池上先生の企画されたレオナルド・ダ・ヴィンチに関する展覧会についても触れていただきます。



会場は市ヶ谷駅にほど近いDNPプラザです。先着順で定員の100名に達し次第、受付は終了となります。



なお『失われたアートの謎を解く』では、私も執筆担当の一員として、原稿の一部の作成に関わりました。よってメールマガジンにもコメントを寄せています。



私の拙い原稿はともかくも、プロの編集者の方が何度もチェック、及び加筆と修正して下さったため、読み応えのある内容になったと思います。まずはメールマガジンにご登録下さり、『失われたアートの謎を解く』を手にとって頂ければ嬉しいです。


それでは多くの方の「『失われたアートの謎を解く』の謎を解く!」メールマガジンへのご登録をお待ちしております。

▼「『失われたアートの謎を解く』の謎を解く!」メールマガジン登録(無料)
https://mail.os7.biz/add/ITqX


「失われたアートの謎を解く」(ちくま新書) 監修:青い日記帳 
内容:美術史の裏に隠された、数多くの失われたアート。その歴史は、人間の欲望の歴史でもあるーアートが失われた詳細な経緯と、奪還や再生の努力、歴史上の人物とアートの関わりまで、美術の歴史の裏側を徹底ビジュアル解剖!  《モナ・リザ》盗難/修復不可能にされたムンク《叫び》/ナチスの美術品犯罪/フェルメール《合奏》を含む被害総額5億ドルの盗難事件…
新書:全224ページ
出版社:筑摩書房
価格:1037円(税込)
発売日:2019年9月7日
特設サイト:https://www.chikumashobo.co.jp/special/mysteryof_lostart
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「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」 水戸芸術館

水戸芸術館 現代美術ギャラリー
「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」
2019/7/13~10/6



水戸芸術館で開催中の「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」を見てきました。

1955年に生まれた現代美術家の大竹伸朗は、絵画、印刷、さらには音や写真を取り入れた立体作品などを手がけ、実に幅広く旺盛に制作を行ってきました。

その大竹は、1970年代から現在に至る約40年もの間、「ビル景」なる作品を描き続けてきました。それでは一体、どのような作品が展開していたのでしょうか。


「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」会場風景

会場内に足を踏み入れて驚きました。目の前に広がるのが、一部に建物の影らしき存在こそ確認出来るものの、多くは大胆な筆触によって表された、おおよそビルを捉えたとは言い難い絵画で、油彩のみならず、インクやグワッシュ、木炭と、さらに厚紙などを取り入れたコラージュとも呼べうる作品でした。


大竹伸朗「Bldg.(タンジールにて)」 1996〜2002 個人蔵

実際にも大竹は、あくまでも世界の都市のビルや風景をそのままに描いているわけではなく、自身に記憶した都市の「湿度や熱、騒音、匂い」などを「ビルという形を伴って」描き出していました。言い換えれば、都市に住む人間のエネルギー、あるいは経済活動や気候などの現象までを絵画に表現しているのかもしれません。*「」内は解説より 


大竹伸朗「バグレイヤー/東京 I」 2000〜2001 個人蔵

とはいえ、タイトルに目を向けると、東京やジェノヴァ、ニューヨーク、ナイロビなど、特定の都市の名も記されていて、あくまでも想像に過ぎないせよ、大竹が各都市をモチーフにしていることが見て取れました。

さすがに40年間に渡って制作し続けているだけあり、「ビル景」の作風を一様に捉えることは出来ません。そして中にはクレー、またキーファーらのドイツの新表現主義など、抽象を思わせる作品も少なくありませんでした。確かに全ては大竹のビルの記憶から引き出されているものの、もはや1人の画家の作品とは思えないほどに多様とも言えるかもしれません。


大竹伸朗「東京ープエルト・リコ」 1986 公益財団法人 福武財団

大竹がビルをモチーフとして初めて意識したのは、1979年から80年台前半に度々訪れた香港での出来事でした。そこで何気なく見ていたビルが「自分自身と強烈に同期」と感じ、「すべてを絵の中に閉じ込めたい」と考えたそうです。*「」内は解説より


大竹伸朗「街、香港」 1979.10.4 他

一連の小さなスケッチにはもはや書き殴りのような線が広がっていて、大竹が各都市で体感した感興なり記憶が即興的に示されているかのようでした。一方で分厚い画肌を伴う油彩などは、色や絵具などの素材の向こうに都市の心象的なイメージが見え隠れしてました。


左:大竹伸朗「Bldg.青」 2003

ともかく大竹の筆の息遣いがダイレクトに感じられる作品ばかりで、しばらく目にしていると、筆へ憑依した都市の熱気を浴びているような錯覚に囚われるほどでした。また一様ではない作品は、時代によって変化する都市の多面的な有り様を示しているようで、まるで生き物のようにも思えました。


左:大竹伸朗「ビルと飛行機、N.Y.1」 2001.11.12〜11.16
右:大竹伸朗「ビルと飛行機、N.Y.2」 2001.12.25

何物か判然とし難い作品も少なくない中、明らかに特定の都市における事象なりを描いた作品もありました。例えば「ビルと飛行機、N.Y.1」などで、2本のビルらしき影の上を進む飛行機を暗がりの画面に捉えていました。それは紛れもなく9.11、すなわちアメリカ同時多発テロ事件であり、ワールドトレードセンターへ衝突する飛行機を彷彿させてなりませんでした。


左:大竹伸朗「ビル/赤」 2005.3.7〜2008.2.7
右:大竹伸朗「赤いビル」 2003〜2006.10.6

「ビル/赤」にも目を奪われました。血のように赤く塗られた画面には、白い四角にてビルと思しきシルエットが浮かび上がっていて、まるで燃え上がるような姿を見せていました。


中央:大竹伸朗「白壁のビル1」 2017.9.26 他

一連のビルのスケールも当然ながら一定ではなく、遠景から捉えているようであり、また街中に入り込んで、店頭からビルの中を覗き込んでいるようなイメージの作品もありました。大竹はそれこそ変幻自在な視点で都市風景を眺めているのかもしれません。


「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」会場風景

作品は平面と立体を問わず、水戸芸術館のギャラリーの空間を埋め尽くすように並んでいて、約600点に及んでいました。同館としては過去最大の出展点数でもあるそうです。


「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」会場風景

率直なところ、あまりにもの数ゆえに途方に暮れてしまった面もありましたが、時に激しく熱気を帯びた作品に圧倒されるものを感じました。


作品番号298「遠景の赤いビル」以外は全作品の撮影も可能でした。ただし生々しく、絵具の爛れたような独特の画肌の質感は、とても写真では伝わりそうもありません。


「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」会場風景

何か強く惹きつける力があったのかもしれません。気がつけば会場内を2巡、3巡していました。


「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」会場入口

10月6日まで開催されています。おすすめします。

「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」 水戸芸術館 現代美術ギャラリー@MITOGEI_Gallery
会期:2019年7月13日(土)~10月6日(日)
休館:月曜日。但し7月15日、8月12日、9月16日、9月23日(月・祝/振)は開館し、7月16日、8月13日、9月17日、9月24日(火)は休館。
時間:9:30~18:00 
 *入館は17:30まで。
料金:一般900円、団体(20名以上)700円。高校生以下、70歳以上は無料。
住所:水戸市五軒町1-6-8
交通:JR線水戸駅北口バスターミナル4~7番のりばから「泉町1丁目」下車。徒歩2分。
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2019年9月に見たい展覧会【桃源郷/バスキア/竹工芸名品展】

暑かった8月が過ぎたものの、残暑も厳しい日が続きます。いかがお過ごしでしょうか。

いよいよ秋の展覧会シーズンも開幕です。気になる展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「マイセン動物園展」 パナソニック汐留美術館(~9/23)
・「日本のよろい」 東京国立博物館(~9/23)
・「1933年の室内装飾 朝香宮邸をめぐる建築素材と人びと」 東京都庭園美術館(~9/23)
・「嶋田忠 野生の瞬間 華麗なる鳥の世界」 東京都写真美術館(~9/23)
・「みんなのレオ・レオーニ展」 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(~9/29)
・「奥の細道330年 芭蕉」 出光美術館(~9/29)
・「生誕250年記念 歌川豊国―写楽を超えた男」 太田記念美術館(9/3~9/29)
・「しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像 1970年代から現在へ」 東京都写真美術館(~10/14)
・「引込線/放射線」第19北斗ビル(9/8~10/14)
・「没後90年記念 岸田劉生展」 東京ステーションギャラリー(~10/20)
・「ミュシャと日本、日本とオルリク」 千葉市美術館(9/7~10/20)
・「慰霊のエンジニアリング」 TODA BUILDING(9/14〜10/20)
・「大観・春草・玉堂・龍子―日本画のパイオニア」 山種美術館(~10/27)
・「新創開館10周年記念 美しきいのち 日本・東洋の花鳥表現」 根津美術館(9/7~11/4)
・「北斎没後170年記念 茂木本家美術館の北斎名品展」 すみだ北斎美術館(9/10~11/4)
・「士 サムライ―天下太平を支えた人びと」 江戸東京博物館(9/14~11/4)
・「DECODE/出来事と記録―ポスト工業化社会の美術」 埼玉県立近代美術館(9/14~11/4)
・「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部―美濃の茶陶」 サントリー美術館(9/4~11/10)
・「チェコ・デザイン 100年の旅」 世田谷美術館(9/14~11/10)
・「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」 国立新美術館(~11/11)
・「桃源郷展」 大倉集古館(9/12~11/17)
・「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」 森アーツセンターギャラリー(9/21~11/17)
・「不思議の国のアリス展」 そごう美術館(9/21~11/17)
・「おかえり 『美しき明治』」 府中市美術館(9/14~12/1)
・「茶の湯の名碗 高麗茶碗」 三井記念美術館(9/14~12/1)
・「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション―メトロポリタン美術館所蔵」 東京国立近代美術館工芸館(9/13~12/8)
・「描く、そして現れる―画家が彫刻を作るとき」 DIC川村記念美術館(9/14~12/8)
・「コートールド美術館展 魅惑の印象派」 東京都美術館(9/10~12/15)
・「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」 横浜美術館(9/21~2020/1/13)

ギャラリー

・「小早川秋聲展」 加島美術(~9/16)
・「竹中大工道具館企画展 木工藝 清雅を標に―人間国宝 須田賢司の仕事」 ギャラリーA4(~9/20)
・「第13回 shiseido art egg 遠藤薫展」 資生堂ギャラリー(~9/22)
・「青柳龍太|sign」 ギャラリー小柳(~9/27)
・「二つの魂の神話 ヴァサンタ ヨガナンタン写真展」 シャネル・ネクサス・ホール(9/3~9/29)
・「珠洲焼 – 中世日本海・黒のやきものグラフィック」 渋谷ヒカリエ8F(9/18~9/29)
・「栗林隆展」 アートフロントギャラリー(9/6~9月末)
・「有山達也展 音のかたち」 クリエイションギャラリーG8(~10/05)
・「シュテファン・バルケンホール」 小山登美夫ギャラリー(9/7~10/5)
・「利部志穂 マントルプルーム ― イザナミ、ペレの怒り。」 KAYOKOYUKI(9/7~10/6)
・「Sculptural Type コントラプンクト」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(~10/12)
・「法貴信也展」 タカ・イシイギャラリー東京(9/14~10/12)
・「戸谷成雄 視線体」 シュウゴアーツ(9/21~10/19)
・「αMプロジェクト2019 東京計画2019 vol.3 vol.4 ミルク倉庫+ココナッツ」 ギャラリーαM(9/28~11/9)
・「椅子の神様 宮本茂紀の仕事」 LIXILギャラリー(9/5~11/23)
・「アーキテクテン・デ・ヴィルダー・ヴィンク・タユー展」 TOTOギャラリー・間(9/13~11/24)

まずはリニューアルオープンの情報です。2014年4月より増改築工事のため休館していた大倉集古館が、約5年間に及んだ工事を終え、この9月12日に再開館します。



「桃源郷展」@大倉集古館(9/12~11/17)

それを記念して行われるのが「桃源郷展」で、新収蔵品の呉春の「武陵桃源図屏風」がお披露目される他、蕪村や周辺の画家が描いた桃源郷の世界を紹介します。また国宝「普賢菩薩騎象像」や横山大観の「夜桜」など、同館のコレクションもあわせて公開されます。


増改築に際しては建物の外観に手をつけず、新たに地下階を増築して収蔵庫機能などを移転させたそうです。そしてリニューアルを祝うに相応しく、桃は古くからお目出度い存在として尊ばれたモチーフでもあります。以前とは異なった環境で、お馴染みの名品を楽しめるのかもしれません。

続いて現代美術です。1960年、ニューヨークに生まれたアーティスト、ジャン=ミシェル・バスキアの日本初の大規模な回顧展が、森アーツセンターギャラリーで開催されます。



「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」@森アーツセンターギャラリー(9/21~11/17)

1980年代のアメリカのアートシーンで活動し、1988年に27歳で薬物の過剰摂取で死去したバスキアは、約10年間あまりの間に2000点を超すドローイングや1000点以上の絵画を描き、同時代のみならず、今日へ至るアートやファッションなどにも大きな影響を与えました。

そしてバスキアは日本の世相を反映したモチーフなどの作品も制作し、度々来日しては複数回の個展やグループ展を開催しました。今回のバスキア展では、絵画やドローイング、それに立体など約130点が公開される上、日本とも関わりのある作品も出展されます。


近年、何かと日本でも知名度の高いバスキアですが、実際に作品をまとめて見られる機会は殆どありませんでした。現在、森美術館での塩田千春展も人気を博していますが、同様にバスキア展も話題を集めるのではないでしょうか。9月末より10月にかけての六本木ヒルズは、2つの大規模な現代美術展で大いに賑わいそうです。

最後は竹工芸です。東京国立近代美術館工芸館にて「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」が行われます。



「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション―メトロポリタン美術館所蔵」@東京国立近代美術館工芸館(9/13~12/8)

アメリカの美術コレクター、アビー夫妻は、日本の近現代の竹工芸品を蒐集し、有数のコレクションを築き上げました。そのコレクションが里帰りするのが今回の展覧会で、約75点の竹工芸とともに、工芸館所蔵の近代工芸の作品があわせて展示されます。


なお本展は、2017年から翌年にメトロポリタン美術館でも開催され、47万名以上を動員するなどして注目を浴びました。いわゆる国際巡回展(国内では先行して大分県立美術館でも開催。)でもありますが、このところ関心も高まっている竹工芸を愛でる良い機会となりそうです。



夏休み中は特に遠出も出来ませんでしたが、近場ながらも水戸芸術館の「大竹伸朗 ビル景」、そしてポーラ美術館の「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」、それに小田原にある杉本博司の手がけた「江の浦測候所」などを鑑賞、ないし見学してきました。追ってブログでもまとめたいと思います。

それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
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「あそびのじかん」 東京都現代美術館

東京都現代美術館
「あそびのじかん」 
2019/7/20~10/20



東京都美術館で開催中の「あそびのじかん」を見てきました。

時に好奇心や創造性を喚起させる様々な遊びは、子どもと大人を問わず、多くの人々を夢中にさせてきました。

その遊びをテーマした展覧会が「あそびのじかん」で、6組の現代美術家らが参加型のインスタレーションを中心にした作品を発表していました。


開発好明「受験の壁」 2019年

開発好明が展示室内に巨大な壁を築き上げました。「受験の壁」なる作品で、古びたタンスを積み上げた、高さ8メートルのクライミングウォールでした。


開発好明「受験の壁」 2019年

一見するところ壁を超えなくては先に進めないようにも思えましたが、実際は1段目のみ手をかけることも可能で、右手には向こうへ抜けるための出口もありました。


開発好明「受験の壁」 2019年

開発は受験戦争で受験生の背負うプレッシャーを壁に表現していて、それぞれの背負う「家」の象徴を示すため、タンスを用いていました。さらに出口の先には何やら迷路のような空間が広がっていて、扉には「行き詰まった時、人生を振り返るのも良い。」なるテキストも記されていました。プレッシャーに置かれた状況下こそ、むしろ立ち止まって自らを省みることが必要なのかもしれません。


野村和弘「笑う祭壇」 2014/2019年

ひっきりなしにカラカラと鳴る音が聞こえてきました。それが野村和弘の「笑う祭壇」で、ボタンを小さな台座に乗せるゲームのような作品でした。そして会場では多くの人がボタンを手にしながら、台座を目がけ、線の外から何度も投げ入れる姿が見られました。


野村和弘「笑う祭壇」 2014/2019年

とはいえ、台座はあまりにも小さく、稀に当たって音を立てるものの、繰り返してもうまく乗せることが叶いません。(ボタンは1人小皿2杯分まで)いつの間にか躍起になって投げ込んでしまいましたが、ふと我に返って台座の下に広がる色とりどりのボタンを見やると、さも点描による抽象画のようにも思えました。


ハンバーグ隊「今までの行動や信頼性が一言の言葉で揺らぐなら、人のために何かをすることは∞でしかない」 2019年

私が思いがけないほどに引かれたのが、SNS上のグループチャットで活動し、13人のメンバーで構成されたハンバーグ隊のインスタレーションでした。ちょうど暗室の展示室の壁面に、三原色の映像が映されていて、時折、色が揺れ動いては、他の色と混じりっていました。またその動く様は奇妙なほどリズミカルで、しばらく眺めていると、思わずステップを踏んでは踊りたくなるほどでした。


ハンバーグ隊「今までの行動や信頼性が一言の言葉で揺らぐなら、人のために何かをすることは∞でしかない」 2019年

そして映像の反対にあるプロジェクターを見やると、実に意外なシステムで三原色が投影されていることが分かりました。というのも3つに重なったプロジェクターは、電動の乗馬フィットネス機器の上に置かれていて、ランダムに作動することで、映像が揺れ動いていたからでした。


タノタイガ「タノニマス」 2007年(2019年再制作)

一際、大勢の観客を集めていたのが、タノタイガによるお面のインスタレーション「タノニマス」でした。展示室内には床から天井へ至るまで無数のお面で彩られていて、多くはカラフルにデコレーションされていました。


タノタイガ「タノニマス」 2007年(2019年再制作)

実のところお面は作家の顔から型を取っていて、全て同じものでした。しかし会期中、観客がワークショップでお面にデコレーションをしていて、それらも同じように飾られていたわけでした。


タノタイガ「タノニマス」 2007年(2019年再制作)

ワークショップは事前の整理券制で、私が出向いた時は既に受付を終えていました。とは言え、展示室内では大人と子どもを問わず、文房具などを手に楽しそうにデコレーションをする姿を目の当たりに出来ました。同じ形のお面でありながら、デコレーション次第で無数に異なった表情を見せているのも面白いところかもしれません。


TOLTA「ポジティブな呪いのつみき」 2016年〜2019年

「言葉」の関わりをテーマに作品を発表している、TOLTAの展示も多くの観客の注目を集めていました。「ポジティブな呪いのつみき」では、複数の言葉が書かれたつみきがたくさん置かれていて、自由に組み合わては、思い思いの文章を作ることが出来ました。


TOLTA「ポジティブな呪いのつみき」 2016年〜2019年

ただ文章の組み合わせは、必ずしも全てに脈絡があるわけでなく、ポジティブな言葉ながらもシュールで、不穏な雰囲気を醸し出していました。



ラストは「みんなとアイディアを共有しよう」と題し、好きな遊びを紙に記入し、自由に壁にかけられるコーナーもあり、来場者同士で様々な遊び方を共有することも出来ました。多くの遊びの書かれた紙を前にした時、もはや遊びは人によって無限にあるとさえ思えました。


うしお「不如意の儀」 2019年

参加型の作品が多いため、動きやすい服装、あるいは靴がマストと言えるかもしれません。見るだけでなく、手足を動かし、そして作品について頭で考えては、まさに全身で遊ぶことの楽しさを感じられるような展覧会でした。

夏休み期間中(7/26~8/30)の金曜日は、サマーナイトミュージアムとして21時まで開館し、入館料が割引になります。 *学生は無料(要証明書)。一般・65歳以上は団体料金。


文谷有佳里 公開ドローイング作品

私もサマーナイトミュージアムを利用し、金曜の夕方以降に観覧してきましたが、場内は比較的余裕がありました。しかし先にも触れたようにタノニマスのワークショップの整理券の受付は既に終了していました。ワークショップに参加を希望する方は、早い時間に出かけた方が良いかもしれません。


毛利悠子「1/0」 2011年〜2016年

引き続きコレクション展の「MOTコレクションただいま/はじめまして」も見てきました。リニューアルオープン時の第1期とは一部の内容が入れ替わり、新たに小林正人、松本陽子、毛利悠子の3作家が展示に加わっていました。


小林正人「この星へ#2」 2009年

現代美術館の醍醐味の1つには充実したコレクション展にもあります。あわせてお見逃しなきようにおすすめします。


夏休みから秋に向けてのロングランの展覧会です。10月20日まで開催されています。

「あそびのじかん」 東京都現代美術館@MOT_art_museum
会期:2019年7月20日(土)~10月20日(日)
休館:月曜日。但し8月12日、9月16、23日、10月14日は開館し、8月13日、9月17、24日、10月15日は休館。
時間:10:00~18:00
 *7月26日、8月2、9、16、23、30日の金曜日は21時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200(960)円、大学・専門学校生・65歳以上850(680)円、中高生600(480)円、小学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *MOTコレクションも観覧可。
 *7月26日(金)~8月30日(金)の毎金曜日17時~21時はサマーナイトミュージアム割引あり。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分。都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
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「中村弘峰 SUMMER SPIRITS」 ポーラミュージアムアネックス

ポーラミュージアムアネックス
「中村弘峰 SUMMER SPIRITS」
2019/8/8~9/1



ポーラミュージアムアネックスで開催中の「中村弘峰 SUMMER SPIRITS」を見てきました。

104年続く博多人形師の4代目として福岡に生まれた中村弘峰は、東京藝術大学大学院で彫刻を学んだ後、従来の概念に留まらない創作人形を作り続けては、人気を博してきました。


「黄金時代 波千鳥」 2019年

入口正面、右手で振りかぶっては、力強くボールを投げ込むピッチャーの姿が目に飛び込んできました。それが「黄金時代 波千鳥」なる作品で、東北楽天ゴールデンイーグルスの18番のユニフォームを身に付けていました。その番号からすれば、現在、MLBのヤンキースで活躍中の田中選手の楽天時代をイメージした人形なのかもしれません。


「黄金時代 波千鳥」 2019年

中村は、「江戸時代の人形師が、現代にタイムスリップしたらどうなるか。」という視点で制作していて、鮮やかな色彩による伝統的な文様を取り込みながら、主にスポーツ選手などの現代の人物を古典的な人形に表現してきました。


「不動如山」 2018年

その投手の先には、まるで狙い球を読みきったかのようにバットを得意げに構えるバッターに、真剣な眼差しでボールを受け取ろうとするキャッチャーもいて、野球における投打の攻防の緊迫したシーンが演出されていました。細かな彩色はもとより、丸みを帯びた身体の表現、さらには生々しい顔の表情なども魅力的と言えるかもしれません。


「この矢はずさせ給うな」 2019年

「この矢はずさせ給うな」なる作品は、中村が今年4月に生まれた次男のために作った端午の節句の人形で、平家物語の弓の名手、那須与一にあやかり、弓を大きく引いては的を狙うアーチェリー選手に表現しました。

やや眉間に皺を寄せ、口元を引いては弓を引く姿は真剣そのものでしたが、よく見ると頬には笑くぼも象られていて、ユーモラスな雰囲気も感じられました。


「Para Heroes:立石 アルファ 裕一」 2018年

「Para Heroes:立石 アルファ 裕一」は、現役のパラ卓球のナショナルチームに所属する立石選手をモデルとした作品で、江戸時代の京都で子どもの健康を願って作られたという「御所人形」のスタイルを反映させていました。ラケットを持ち、体を捻らせて構える姿は、まさに一瞬の動きを捉えていて、大変に緊張感があるのではないでしょうか。


「日はまた昇る Platinum」 2019年

さらに競馬のジョッキーやアメフト選手、ゴルファーなどの人形の他、靴や小さな動物を象った作品なども目を引きました。先の野球やアーチェリーなど、空間全体でスポーツを意識させる構成も面白いかもしれません。


「優駿サマースピリッツ」 2019年

昔の桃太郎などのヒーローを現代に置き換えると、スポーツ選手にあると考えた中村は、数年前よりアスリートをモチーフとした作品を作ってきました。いずれも力作揃いで、古典人形と現代のアスリートの意外な邂逅に見入りました。


9月1日まで開催されています。

「中村弘峰 SUMMER SPIRITS」 ポーラミュージアムアネックス@POLA_ANNEX
会期:2019年8月8日(木)~9月1日(日)
休館:会期中無休
料金:無料
時間:11:00~20:00 *入場は閉館の30分前まで
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
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