晴れときどきブログ。

趣味(料理、本、マンガ、ゲーム、絵描き etc.)全開で日常をつづります。

【小説】5年3組リョウタ組(石田 衣良)

2009年08月24日 | 
石田 衣良
Amazonランキング:103736位
Amazonおすすめ度:



イマドキの小学校教師を描く、青春小説。

--------------------------------------------------

<あらすじ>

東京の北東に位置する清崎市、
その県庁所在地に位置する希望の丘小学校(旧・清崎市立第一小学校)の
教師として働く中道良太(リョウタ)は、
この春から5年3組の担任を務めている。

徹底した学年主義と、その中で繰り広げられるクラス競争の色が根強い
希望の丘小学校に赴任して以来、
リョウタの受け持つクラスは常に最下位を争っていて
陰では「バカのリョウタ組」と呼ばれている。

今年こそは汚名を挽回しようとひそかに誓うリョウタだが
彼と子どもたち、そして教師たちの身に
現代の教育がはらむ問題が否応なしに降りかかる。

--------------------------------------------------

学級崩壊、教師間のイジメ、子どもの犯罪、過当な成績競争。

一つひとつは非常に深刻な問題です。
しかし、現代社会に生きる子どもたちと先生方にとっては
いつ巻き込まれるかもわからない身近な問題だったりします。

一方、現代の教師は、とにかく忙しいといいます。

授業の準備は当然のこと、
それ以外の書類作成等の雑事、
児童生徒の生活指導(それが家庭問題に起因することであっても)など
朝から夜まで仕事が山積みだそうです。
教師になった友人たちは、口をそろえて「忙しい」と語ります。

主人公のリョウタは
何となく教師になってしまったイマドキの若者です。
金八先生のように熱血ではないものの、
かと言って責任感がないというわけではなく、
自らの教師という職業に誇りをもっています。
しかしながら、仕事の他にも
恋もしたいしいろいろなことがしたい、ごく普通の人です。

教師として働いている人の多くは、
このような普通の人なんじゃないかと思います。

そんな普通の人にとって、現代の教育が抱える問題は
大きすぎて時にはめまいがするほどではないかと想像できます。

そんな解決が困難な問題と向き合う
小学校教師たちとその教え子たちがこの物語の登場人物です。

リョウタのよきライバルであるクールな染谷先生
(主人公とものすごくよい距離感を保ってくれる
 空気の読めるっぷりは思わずファンになってしまったほどの好人物)、
先輩で魅力的な女性教師の山岸先生など、
教師陣もそして子どもたちも皆一様に生き生きと描かれています。
ともすれば暗くなりがちな大きな教育問題をテーマにしながら
大きく気持ちが沈むようなこともなく読み進められるのは、
これらの登場人物たちのお陰でしょう。

オチは何となく途中から読めていましたが
リョウタ先生らしい、いい終わり方だと思いました。

十年前、二十年前に流行った熱血教師物語とはちょっと違う、
普通の若年先生が普通に悩み、普通に生きる姿は
新鮮でもあり、共感できる部分が多いです。

・・・と全体的にとても好きな小説だったのですが、
たった一つ、イライラしたのは、
山岸先生のリョウタ先生に対する態度。
中途半端なことはするなよ!(怒)
私もリョウタ先生と同じく、山岸先生の行動は理解不能でした。

--------------------------------------------------
今の先生はほんっっっとうに大変だよ度:★★★★★