「ホームページを見た。不妊については特に記載が無いが、それについて相談や治療は可能か? 」
と、問い合わせを頂いたり、
「じつは不妊治療をしている。鍼灸治療も効果的だと聞いたがどうか?」
と、来院時に相談されたりすることがあります。
これは非常にデリケートな問題で、お話を伺うにも結構気を遣うもの。
さらに難しいのは、こちらのお伝えしたいことがその方に届く場合ばかりではないということでしょうか。
鍼灸でできることは案外限られていて、からだの調子を整えること、元気でいようとするからだの働きを助けることぐらいなものです。
不妊の悩みでおいでになる方についても、お話を伺いながら、体の調子を整える目的で鍼を打ち、お灸をすえることがメインになります。これさえすれば、という特効穴があるわけでもなく、何回治療すれば、という目安もありません。
不妊治療のある段階で、母体側の状態が非常に重要であろうことは十分理解できます。
ですが、短絡的にいきなり、
「いよいよお腹に受精卵を戻すところなので内膜の状態を良くしておきたい。」
「近々凍結保存してある最後の一個を子宮に戻すのでそれまでお腹を温めておきたい。」
などと言われても、一度や二度の鍼灸治療では難しいでしょう。
ところてんを押し出すのとは訳が違います。本当なら卵を取り出すよりずっと前から鍼灸治療を受けていただきたいと思います。
科学的にあらずと一蹴されかねない言い方ではありますが、「からだ全体の巡りを整える」視点が欠けてはいないか、よく考えるのも大切です。