害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

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ケブカアメイロアリはもう普通種

2009-04-03 23:59:00 | 自然観察

アリについての電話相談がそろそろ多くなる時期になってきた。今週はケブカアメイロアリ Paratrechina amia の問い合わせがあった。
初めて西宮市の埋立地でみかけてから、もう10年になるが、いつの間にやらすっかり普通種になってしまった感がある。すでに阪神の湾岸地域だけでなく、京都府相楽郡精華町の造成地などでもみられるようになっている。外来種独特の分布拡大パターンなので、関空なんかだと当然の如くたくさんいる。
台湾とか南西諸島では自然分布で、本州の分布に関しては人為的な分布拡大だろうと考えられている。
働きアリには、長い触角、黒くて荒い剛毛がパラパラと体表にある。ちょっと腹部を上向き気味にそらして歩き回る独特の姿。他のアリ類から、区別するのは簡単。などといいながら、1999年ごろの私は、ヒゲナガアメイロアリだと思い込んでいた。アリを調べるときには日本産アリ類データベースのお世話になるのだが、当時のアメイロアリ属解説の中にケブカは含まれてなかったのだ。なんかチョット違うけど一番似てるからエエんとちゃうかというノリ。
ところがその後、データベースに掲載種が増加して、ケブカであることが判明。このときから他人の大阪府下の分布記録も、ヒゲナガについてはケブカじゃねの?などと変に疑うようになってしまい、自分が間違えたからって了見が狭いことである。
私自身は那覇にいく用事があったとき、真のヒゲナガや沖縄産のケブカを採集できたので、両者はなんとか区別がつくようになった。

でも少し疑問は残る。阪神ケブカ群は、沖縄ケブカ群と比べるとものすごく微妙だが色が黒っぽいような気がする。かといって一匹ずつみてると同じ個体群内でも色の個体差があるので明確な区別は付かない。
海外のアリ関係のサイトに掲載されているParatrechina bourbonica に、阪神ケブカは似てるので、ドコがドー違うのか知りたくなった。調べてみると、amiaは最初bourbonicaの台湾産の変種扱いだったが、頭幅や生殖器の形態などの差で別種に昇格されたコト、この「変種」というのは他にもイロイロいてややこしいコトなどが分かった。
他の国では変種なんてのを無視して一律bourbonicaって扱いなんだろうか?

「SuperOrganism*」というアリ研究のフォーラムに、James C. Trager著のamiaに関係する古めの重要文献が、著者自身より加筆修正つきでアップされていたので、ダウンロードしてみた。一部分しか読んでないがアメイロアリ属の分類のムズかしさは計り知れないなという感想である。
日本産リストから、bourbonicaは誤同定ということで除外されているが、amiaとの区別は難儀そうなので、
やっぱり両種とも侵入してましたなんてことにならないよう祈るばかりである。

http://formicidae.darkbb.com/forum.htm


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