高原千尋の暗中模索

行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しく止とゞまる事なし。

3.11 被曝による死者6500万人(3)

2011年07月12日 | 東日本大震災

4.アメリカ“ハンフォード核施設”

 アメリカが世界に先駆け核兵器を手にするために立ち上げた国家プロジェクト「マンハッタン計画」は1942年6月に発足した。科学者のリーダーであるオッペンハイマー(物理学者)の提案で研究所はニューメキシコ州のロスアラモスに置かれた。また、核兵器の原料となるプルトニウムの精製場所はワシントン州・リッチランド北西郊外のハンフォードが選ばれた。1943年に核施設の建設が開始されて、一時は5万人の人々がハンフォード・サイトで働いた。
 第二次大戦が終わる1945年8月までに、ハンフォードには3基の原子炉、3基のプルトニウム処理施設が完成している。ここで作られた原料から最初のプルトニウム型原子爆弾がロスアラモス研究所で製造され、ニューメキシコ州、アラモゴード爆撃試験場での核実験に使われた(トリニティ実験)。その後に広島と長崎で実戦使用されることになる。



 「マンハッタン計画」は、第二次大戦後、エネルギー省と名称を変えた。エネルギー省とは名ばかりで、その実態は核兵器の開発と製造にあった。ハンフォードでは冷戦の最中に、ソ連の核兵器に対抗するため、さらに施設の拡張が図られた。1963年には、9基の原子炉がコロンビア川沿いに配置され、5基の処理施設が中央高原部分に、全部で900棟のビルがあるような巨大な施設になった。
 1950年代には、核施設の風下に広がる広大な砂漠が政府プロジェクトとして開拓された。政府は第二次大戦や朝鮮戦争で闘った兵士に格安のローンで土地を分け与え、砂漠を緑化する基盤整備を行った。その結果、砂漠は緑の広大な穀倉地帯へと変貌した(下写真)。



 1987年、政府はハンフォードに関する機密書類を公開し、驚くべき事実が明らかになった。9基の原子炉が日々の操業のなかで放出していた放射線の総量がスリーマイル島事故の10,000倍に及んでいたのである。しかも、放射性物質の放出はハンフォードの風下地区に向けて“意図的”に行われていたのである。この風下地区に住む住民は27万人にのぼる。
 ハンフォードで一体何が起きたのか、起こされたのか。風下地区の住民、ジューン・ケーシーが原水爆禁止2000年世界大会において証言した“壮絶な真実”をぜひ読んでいただきたい。
 

原水爆禁止2000年世界大会
ハンフォード風下地区住民
ジューン・ケーシー

「1949年ワシントン州のハンフォード核施設での秘密放射線人体実験の犠牲者として密かにおこなわれた放射線人体実験の犠牲者として、この世界大会に招待されました。ハンフォードで製造されたプルトニウム爆弾が、長崎の上空で炸裂した言語を絶する被害と恐るべきほど多くの犠牲者をうみました。私は個人として謝罪する機会をいただいたことに感謝を申し上げるものです。55年たった今でも、日本では、潜伏していた放射線の影響で、毎年5000もの人が通常の寿命をまっとうせずして亡くなると聞いています。

(中略)

1940年代と50年代、ハンフォード核施設で操業していたジェネラル・エレクトリック社は、1,100億キューリーの放射性ヨウ素131を継続的に、秘密裏に放出しました。1986年の母の日、私は、自分が、その際被ばくしたワシントン州「風下地区住民」27万人のひとりであることを知りました。ヨウ素131には発ガン性が認められており、牛により消化されると、牛乳に高濃度で蓄積されます。

1945年には、ハンフォードから55万キューリー(1キューリーは370億ベクレル)の放射性ヨウ素が放出され、1億5千万のアメリカ国民が、一人当り40億ピコキューリー(1ピコキュリーは0.037ベクレル、40億ピコキュリーは1億4800万ベクレル)を超えるこの致死的放射物質にさらされました。これは、その結果、地域の甲状腺がん発生率を200倍に押し上げたチェルノブイリ原発の事故で放出された放射線に匹敵する量です。その後、20年にわたり大気圏実験がおこなわれましたが、米国の天然資源保護協議会(the Natural Resources Defense Council)が最近おこなった推定によれば、これは、広島型原爆4万発分に相当するといいます。

(中略)

最近、ハンフォード付近の住民にたいし、そのすべてが医療記録により証明されている広範な疾病にかんする健康調査がおこなわれました。その結果、乳ガンと肺ガンの発生率が3倍、甲状腺と白血病が10倍に増加していることが判りました。「ハンフォード死の一マイル(the Hanford Death Mile)」と呼ばれる地域では、ここに暮らす世帯の100%で、ガン、心臓疾患、先天性異常のいずれかが見られました。私が450人のハンフォード風下地区住民におこなった健康調査では、回答したうちの40%の人に、遺伝上の障害をもつ子どもがいました。全国的には、1945年から1965年のあいだ、低体重児の出生率が40%増加しています。

私の浴びた放射線の中でもっとも深刻な影響をおよぼしたのは、「グリーン・ラン」として知られる計画的な秘密実験によるものです。この実験は、1949年12月2日にジェネラル・エレクトリック社の原子核工学部がおこなったもので、放射性ヨウ素1万1千キューリーとキセノン2万キューリーが意図的に大気中に放出されました。これは、当時の放射線許容量の1万1千倍でした。しかも当時の許容量は今日の20倍という高さでした。当時私は、ハンフォード核施設から50マイル(約80キロメートル)風下にあるホイットマン大学の学生でした。

(中略)

疾病対策センターの調査では、1940年代から50年代のあいだ、ワシントン州風下地区に暮らす3万の子どもたちは、チェルノブイリから3マイル(約5キロメートル)の地点に住んでいたソ連の人びとの20倍の放射性ヨウ素を浴びていたことが明らかになっています。これは、風が吹いた方向と、ソ連で地域住民にたいしてとられた保護措置の違いによるものです。

ワシントン州保健局の放射線専門家であるアレン・W・コンクリン氏によると、世界でも知られている中で、ワシントン、オレゴン、アイダホに住んでいた私たちほど、長期にわたりそれほど大量の放射線に被ばくした民間人集団はいない、ということです。なかには、3万6千回のエックス線写真に相当する3千ラド(30,000ミリシーベルト)もの放射線を浴びた子どももいました(1990年7月13日付フロリダ州『セントピーターズバーグタイムズ』)。

政府文書によれば、ハンフォードで放射性同位体が放出されたのは、放射線戦争の潜在的影響力を評定するためであり、なかには、地元住民にたいする破壊力と影響を見るためだったと考える人もいます。カーティス・ルメイ将軍が率いた放射線戦争実験秘密計画は、供給用の水と牛乳を汚染する目的で、放射性分裂物質を放出できるもので、ハンフォードにおいて1954年までおこなわれました。ワシントンの住民の多くは、1949年の実験が、この放射線戦争計画の一環であったと考えています。ぞっとするのは、現在の環境法のもとでは、おなじ秘密実験がいまでも可能なことです。

被ばくした結果、私は、重度の甲状腺機能低下、流産、死産、乳腺腫瘤摘出、皮膚ガン、慢性変性脊椎、ガン性になりうる甲状腺結節、永久脱毛という影響を受けています。食道にも問題があります。食べ物が飲み込みづらく、腫瘍摘出のため内視鏡手術を2度受けました。脊椎は絶え間なく痛み、まるで、電気のこぎりで拷問にかけられているようにさえ感じます。肩は、バーベキューの熱い炭につかまれているように感じます。

1997年の8月、もとの場所に延性ガン腫ができました。これは、非常に攻撃的になりうる種類の乳がんで、2度手術が必要でした。2回目のとき一部乳房を切除しました。毎年、17万5千人の女性が、転移性質の乳がんの診断を受けています
。最近受けた乳房レントゲン写真により、ガンが再発しているかもしれず、生体組織検査が必要なことが判りました。モルモン教徒の作家であり自然主義者のテリー・テンペスト・ウィリアムは、胸がつぶれるような詩のなかで、こう書きました。「私たちは、乳房をひとつしかもたない女性の一族を形成するまでになった」。

(中略)

ホイットマン大学時代の友人には、手のない子どもが生れました。いったいあと何人このような子どもが生れなくてはならないのでしょう。ハンフォード付近で育ったという、スポーカンからきた母親の11歳になる目が細長く切れていた娘のような子があと何人生れなくてはならないのでしょう。忌まわしいハンフォード死の一マイルで生れた目、頭、おしり、指のない子どもがあと何人生れなくてならないのでしょう。父の秘書を務めた女性の5歳の娘は、白血病により脚を切断しなくてはなりませんでした。あと何人の小さい子どもたちがこのような苦しみを受けなくてはならないのでしょう

核兵器廃絶の運動にたいする献身をあらたにするにあたり、こうした放射線犠牲者を想い起こそうではありませんか。大きすぎる頭をもって生れた赤ん坊、生まれつき脚の先にひざがくっついている女性、額のまん中に丸い目をひとつ持つ巨人キュクプロスのような赤ん坊、腕がない若い絵描き。彼に出会ったとき、彼は口を使って絵を描いていました

冷戦が終わった後ですら、世界は3万近くの核兵器の存在に苦しんでいます。(潜水艦を基地とする米国のトライデント核兵器システム(史上もっとも金がかかり、破壊的である)は、あわせて広島型原爆の8万5240発相当の破壊力をもつ弾頭を装着したミサイルを積んでいます。「トライデント反対ネットワーク」のマイケル・スプロングは、「核兵器は、その犠牲者に打撃を食らわそうと待ち構えている移動式『死の収容所』である」と述べています。

第二世代の核兵器と、その設計と実験に費やされる何十億ドルもの費用が、生殖不能と32種類の放射性ガンが愛する家族と友人を不具にし殺しつづける地球を、永遠に放射線に汚染された地としているのです。この大会が、命のはかなさと母なる地球を守る必要性を認識する場所となることを願っています。私たちの住みかは地球のほかないのです。私たちハンフォードのヒバクシャは、私たちの傷跡から思いやりと英知が生れることを願います。核の蛮行は、ナチスによる死の収容所と同じ凶悪行為で『音をたてないホロコースト』
なのです。」(原水協ホームページより)


 1945年にハンフォードから放出された放射性ヨウ素は55万キューリー(1キューリーは370億ベクレル)に達し、これは、地域の甲状腺がん発生率を200倍に押し上げたチェルノブイリ原発の事故で放出された放射線に匹敵するという。さらに1949年12月には、放射性ヨウ素1万1千キューリーとキセノン2万キューリーが意図的に大気中に放出さている。放出された放射性物質はそれらだけではなくストロンチウム90など様々な核種におよんでいることが政府公開文書から明らかになっている。
 ハンフォードで起きたことはチェルノブイリでも再現された。同じ人間である以上、同じことが福島原発事故においても再現されることになる。

 放射線で一度傷ついたDNAがもたらす遺伝子的影響の深刻さがハンフォードでは見てとれる。特に多発した流産、死産、奇形児などは旧ソ連の核実験場セミパラチンスク、中国の核実験場ロプノールの悲劇と共通する。また、こうした悲劇が意図的に行われた“人体実験”であったという点においても共通する。核兵器使用の真の狙いが爆発による攻撃目標の破壊はもとより、被曝、特に内部被曝による子孫を含めた攻撃対象民族の“根絶やし”にあることは明らかである。その核兵器保有大国が目くらましのプロパガンダとして推進した“核の平和利用”ほど空々しいものはない。原発を含め“核”ほど命の対極に位置するものはないだろう。 『音をたてないホロコースト』、それこそ“核”の本質である。

 蛇足になるが、ハンフォードの悲劇は対岸の火事ではない。風下地区はアメリカ有数の穀倉地帯である。ここで生産される作物のほとんどが輸出されている。りんご、じゃがいも、小麦、コーン、牧草、蕎麦麦などで、その大部分を買っているのはファーストフード産業と日本の商社である。日本はアメリカにとってまさに良き“トモダチ”なのである。


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