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磯渡し

2018年07月25日 | Weblog

天井の照明が1割もついていない、昼間でも真っ暗なトンネルを抜けると・・・、そこは小さな漁港であった。
那智大社、熊野本宮と駆け足で巡った後の宿は、三重県の尾鷲まで北上した海沿いの民宿。

自分では絶対に予約しないような、駅から相当離れていて(よって、バスもいない)、畳の部屋で、そこまできれいではなく・・・という宿。
まあ、こういう機会でしか泊まれないから、貴重な体験だ。

海が目の前に広がり、やはり沖に出たくなる。フロントのお姉さんに「フェリーはどこから乗れるのか」と尋ねると、ちょっと困った様子。
このあたりでは、観光客向けのフェリーは出ていないようだ。
しかし、提示された代替案が素晴らしかった。「うちの船、乗っていく?」

どうやら翌朝、弁当を届けるとかで、それに便乗させてくれるとのこと。海と弁当がどうも直結せず、ぴんと来なかったが、実際に乗せてもらってその答えが分かった。

翌朝、「そろそろ行くか」と声をかけられ、民宿の目の前に係留されている漁船っぽい船に乗せてもらう。

エンジンが高鳴り、いざ出発。
どこから来たのか、という質問に答えつつ、こちらからも早速「これは漁船か」と聞いてみる。

正確にはちょっと違うんだよ、と船長。「俺の仕事は、磯渡し、っていうんだ。聞いたことないかもしれないね。この先も耳にすることはないかもしれない」
確かに聞いたことはない。「実際に見てみれば、分かる」

10分くらい走ると、沿岸の岩場に近づく。よくみると、釣りをしている人たちがちらほら。その岩場に近づくと、釣り人も船に近寄り、船に積んでいる荷物=弁当を受け取った。
これが、まさに磯渡しの仕事のようだ。そもそも、この釣り人を朝、岩場に届けるところからスタートしているのだろう。
その後もいくつかの岩場をまわり、弁当を次々に届ける。

簡単そうに岩場に着岸させているが、「寄せるには1年はかかる。うまくつけるにはさらに5年。自分はこの道15年」岩場周辺では波の動きが複雑で、流れが強かったりすると、すぐに左右に流されてしまうとのこと。

おそらく、夕方には釣り人を迎えに行くのだろう。朝早くから、大変な仕事であるし、一体どれくらいの収益となるのだろう。珍しい仕事とはいえ、需給バランスが非常に気になるところであった。

しかし、波しぶきを浴びながらの船は非日常的で、とても印象深いものであり、フェリーなんかより、とっても楽しい時間を過ごすことができた。
民宿の人に、感謝である。

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