源氏物語と共に

源氏物語関連

横笛

2008-01-25 08:54:42 | 音楽

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『笛竹にふきよる風のことならば、末の世ながきねに伝へなむ』


    思ふかた異(こと)に侍りき            (横笛)


夕霧が柏木の未亡人落葉宮から遺品の横笛を渡され家にもどると、
夢に柏木が現れ、その笛は夕霧にではなく違う所・自分の子供に伝えたいという。


夕霧は、柏木が亡くなる前に見舞った折り、
しきりに光源氏にとりなしてほしいといった事から、
柏木と光源氏の間に何かあった事を感じていたが、もしかして・・と思う。


光源氏の所に行って明石女御の皇子達と一緒にいる薫をあらためてじっくり見ると、
やはり目元のあたりが柏木に似ていると思った。


この夢の話を光源氏にすると、光源氏はその笛を預かるという。
しかもその様子はこちらも遠慮するような感じだったので、
内容が内容だけに、強くも聞けずそのまま源氏も上手に話を切り上げてしまった。


横笛というキーワードを使って薫の出生の秘密を示しているのはご承知の通りである。


しかも後に宇治十帖で、宇治の八宮に、
対岸の川岸から聞こえてくる薫の笛の音を、
昔に聞いた六条院(光源氏)の笛の音ではなく、
故到仕のおとど(頭中将)一族の音に似ているといわせている。


『笛をいとをかしうも吹きとほしたなるかな。たれならむ。
昔の、六条の院の御笛の音聞きしは、
いとをかしげに愛敬づきたる音にこそ吹き給ひしか。
これは澄みのぼりてことごとしき気の添ひたるは、
故到仕のおとどの御族の音にこそ、似たなれ などひとりごちおはす 』(橋姫)


音でその一族を表す手法は薫の和琴にも表わされている。


玉鬘は故到仕のおとど(頭の中将)に琴の音が似ているという薫に和琴をすすめるが、
むしろ、姿形も不思議に兄故大納言(柏木)に大変似ていて、
和琴の音もまさしく柏木の音だと思うのである。


『故到仕のおとどに御つまおとになむ、かよひ給へると、聞きわたるを、
まめやかにゆかしうなむ・・略・・
おほかたこの君は、あやしう故大納言の御ありさまに、いとようおぼえ、
琴のねなど、ただそれとこそおぼえつれと泣き給ふも古めい給ふしるしの、
涙もろさにや』(竹河)


なかなか趣が深い。


姿形だけでなく、音楽の音色も似ているというあたりは
非常に式部が音楽観賞に優れていた所を感じさせ、
また薫の出生の秘密を表わす間接的な手法といってもよいだろう。


ちなみに、源氏物語図典によると、笛は管弦器の総称。
横笛・高麗笛・笙・神楽笛・ひちりき・尺八などがある。
雅楽の「三菅」は笙・ひちりき・横笛をいう。
主に高麗笛は催馬楽に使用。普通に笛というのは横笛。
「笛竹」は歌語。


「源氏物語六条院の生活」青幻舎によると、
横笛はおうてきともいい、
雅楽の横笛には、神楽(かぐら)笛・龍笛(りゅうてき)・高麗笛(こまぶえ)の三種があるが、
とくに唐楽に用いる龍笛を横笛(おうてき)というそうだ。
指穴は7孔。<葉二つ><小枝><か亭>という名器が伝えられた。


ひちりきは洋楽器のオーボエと同様にダブルリードの楽器で、
横笛と同様に旋律を演奏する。表7孔、裏に2孔ある縦笛。
音域は狭いが吹き方により音高を変える事ができるそうだ。


笙は吹き口がついた頭に17本の長短の竹管を立て
銀の帯で束ねた楽器。息をフィ着込み。小穴を押さえる事で同時に複数の竹管の
音を鳴らす。吹いても吸っても音が出る。
朗詠・催馬楽の時は単音だが、楽曲の時は
篳篥や横笛の旋律に対して、和音を演奏との事。


画像は「源氏物語六条院の生活」より


最近は東儀秀樹氏の雅楽演奏が有名。
http://www.universal-music.co.jp/classics/artist/hideki_togi/profile.html


バンコクでの演奏