ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『殉教者』

2016-08-04 23:01:12 | 
『殉教者』 加賀乙彦 講談社
 キリシタン迫害が激化する江戸初期、大分でキリシタンの両親のもとに生まれたペトロ岐部カスイは、エルサレムを目指す。ある時は水夫として海を往き、またある時は駱駝曳きとして隊商に雇われ砂漠を踏破する。それはイエスの奇跡を実感するため、聖書ゆかりの土地を巡礼する旅であった。五年をかけて、ペトロ岐部はついにローマに辿り着き、イエズス会の司祭となる。そして、宣教のため、死の危険が待つ日本を目指し船に乗った。真の殉教者の生涯を描き、信仰の最奥に迫る壮大な物語。
 『ポイズンドーター・ホーリーマザー』を読んだ後では、『殉教者』は、清冽な泉のよう。ペトロ岐部カスイは、ひたすら勉強と巡礼の日々。その真っすぐで透明感に満ちた志には、心が洗われるようだ。そして、迫害をうける日本のキリシタンのために死を覚悟して日本に戻る。長い年月をかけても日本へ向かうのは、鑑真和上と重なるものがあるような気がした。すさまじい拷問を受け絶命する場面は格調高く、心に迫る。砂漠での白い太陽、ガリラヤ湖畔の花畑、モンセラート修道院を臨み悪魔の幻を見る場面は、風景と心象がだぶって印象的。
 キリスト教徒でないため、キリストに対する愛にはついていけない気がするが、私は結構好きな本である。読む人によってかなり好き嫌いが分かれる気がする本。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 驚きすぎて | トップ | 「ありがとう、オカン」再放送 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事