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今度は大丈夫?クールジャパン機構のスタートアップ支援策

2019-07-17 12:30:26 | ビジネス

定期的にチェックをしているファッション誌がある。
一つはVOUGE JAPAN、もう一つがWWD(ウーマンズ・ウェア・ディリー)だ。
VOUGEは、ご存じの通りファッション誌の中でも社会的影響力が強く、そのため掲載される広告一つを取ってみても、勉強になることが多い。
20代、30代、40代とVOUGEを読みながら、広告表現のビジュアルについて勉強もさせてもらった。

もう一つのWWDは、いわゆる業界紙と呼ばれるもので、年に2回あるパリ、ミラノ、ロンドン・ニューヨークなどのコレクションの特集は、毎号読ませていただいていた(この特集だけ、一般書店に本が並ぶ)。

そのWWDに、クールジャパン機構が新たな投資先として、アパレルテックの「シタテル」へ10億円出資という記事があった。
WWD:クールジャパン機構がアパレルテックのシタテルに10億円出資、海外進出を支援

シタテルという企業については、同じWWDに紹介記事があったので、企業としての考えやビジョンなどは面白いと試みではないか?と感じる部分も多い。
WWD:縫製工場を無料でIoT、「シタテル」のアパレル4.0構想

問題なのは、シタテルを支援しようとしているクールジャパン機構だ。
一部で報道されたように、この官民の投資機構は巨額赤字を出している。
BusinessJournal:クールジャパン機構、巨額税金投入で成果なし、累積赤字97億円…出資先からも提訴も

元々クールジャパン機構の投資先の多くが、アニメなどのエンターティメントのコンテンツであったり、伊勢丹とのコラボレーション企画での海外出店などで、巨額な赤字を生むことになったと言われているのだが、今度はアパレル事業への支援だ。

実は「シタテル」だけではなく、人工合成の蜘蛛の糸をつくることに成功したベンチャー企業「スパイバー」への50億円の資金提供をしている。
WWD:スパイパーがクールジャパン機構などから50億円を調達 タイに原料プラント

スパイパーへの投資というのも、分からない訳ではないのだが一つ考えてほしいのは、何故日本の大手繊維メーカーが支援をしていないのか?という点だ。
繊維の中でも「軽さと強度、しなやかさを併せ持つ」と言われる「蜘蛛の糸」。
人工的に作ることは不可能と言われていた繊維をつくることに成功させたことは、大きな話題となった。
大手繊維メーカーの下請けになることなく、ベンチャー企業としての活路を見出したことは、素晴らしいことだと思う。
今や日本の繊維メーカーは、ファッションで使われる布をつくる企業ではなく、自動車や飛行機のボディの一部となるような「素材」をつくるメーカーへと変貌している。
その意味でも、アパレルではなくより汎用性の高い「素材メーカー」のベンチャー企業としての成長に対する期待としての、支援なのだと思うのだが、クールジャパン機構が支援すべき事業なのだろうか?

日本のファッション産業を文化として支援していきたい、という観点からクールジャパン機構が支援をするということなのだと思うのだが、どことなく支援する対象が、違うような気がするのだ。
例えば、日本の伝統的な織物や染め物の産業などは、超が付くほど零細企業の所が多い。
そのような企業団体を支援しながら、日本の「衣装文化」を海外に情報発信する、という考えのほうが、「クールジャパン」という考えに合っているのではないだろうか?

目先の話題性に飛びついて、累積赤字をこれ以上増やすようなことにならなければよいのだが・・・。