私が小学校低学年の頃まで、節分の夜は家族揃って豆まきをしていた。
豆まきに使うのは落花生で、鬼の役はいなかった。
マスを持った父親が家のあちらこちらに落花生をまいて歩き、その他の家族は「鬼はー外ー、福はー内ー」と声を合わせる。
マスが空になると、今度はいたるところに散っている落花生を拾って歩く作業に移る。
集めた落花生をこたつの上に広げて母親が言う。
「豆は年の数だけ食べるんだよ」
当然のことだが、私の担当落花生は数個のみ。
「早く大きくなって10個以上食べられるようになるんだ」
と思いながら、一粒ずつ大事に大事に時間をかけて食べた。
10個以上食べられる年の頃には豆まき自体が消滅し、私の落花生に対する情熱もどこかに行ってしまった。
大人になった今は50個以上食べられる計算になるが、チャレンジ精神がいまいち定まらないのである