ラッパと三味線

葉野ドリンキング和樹

2017年こそブレイク必至のリズムネタだぞっ

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とんねるずのタカさん、ノリさん、シゲさん

2017年08月24日 | 雑感
 とんねるずについて語るとすれば、世間の目はタカさんとノリさんに向けがちであり、それもよくわかることだが、私はシゲさん抜きには語れないと強く思う。
 シゲさんこと白石茂朝(しらいししげとも)は1961年12月21日に生を受けた。とんねるずファンか誕生日マニアしか知り得ない情報であろう、私もいま調べた。出身は練馬区南大泉。これについては3人とも地元について発言する場面が多々あるし、食わず嫌い王に大泉洋が出演するたびに「北の大泉、南の大泉」という掛け合いがなされているので、日本国民の大半が知っている一般常識であろう。シゲさんは3人の中で最も小柄だが、意外にも176センチの高身長だ。
 のちのとんねるずとなる3人の出会いは、帝京高校時代にさかのぼる。これもよく知られていることだが、タカさんは野球部、ノリさんはサッカー部、シゲさんは放送部に属していた。野球部とサッカー部はいわば友好関係を結んでおり、タカさんとノリさんはお互いにおもしろいやつだと意識を持つようになり、2人でつるむことが多くなった。高校2年9月の昼休み、いつものように2人が教室の輪の中心となり弁当を広げていたところ、2人は突如としてしゃべるのを止めて、校内放送が流れるスピーカーに耳が奪われた。夏休み前とはまったくテイストのちがう、マニアックなモノマネを中心とした独り語りが展開されていたのだ。放送部部長となったシゲさんである。
 すぐさま接触したのはタカさんである。「白石クンさー、昼休みの放送、おれらも出してくんない?」シゲさんも心中ではタカさんとノリさんのセンスを認めていた。が、折角つかんだマイクである、難色を示さないはずがない。苦渋の決断で「やだ」と即答した。これにタカさんは激昂した。「シゲアサー!」「トモだから、シゲトモ」
 なおも食い下がるタカさんに「じゃあ、毎週金曜のゲストということで」と妥協案を提示したのだが、毎週金曜に放送部に押しかけるようになってしまったので、毎週金曜のレギュラーとなったのは笑い話だ。それが功を奏して、3人の仲が深まることとなる。このころに繰り広げられたマニアックなモノマネの応酬が、「みなさんのおかげでした」の人気コーナー細かすぎて伝わらないモノマネへ発展したと私は踏んでいる。シゲさんの功績は大きい。
 お気づきの方も多いかと思われるが、シゲさんがヘタを打った時などに浴びせられるタカさんの「シゲアサー!」は帝京高校のこのエピソードから端を発している。シゲさんは一貫して「トモだから、シゲトモ」と返していたのは日本国民の大半の記憶に刻まれていることかと思うが、突然「このやりとり、30年目だぜ?」と変化をつけ、「頼むから覚えてくれよ」「頼むから」に変遷を遂げ、現在のノリさんといっしょに大声で発せられる「頼むー!」に着地したことは、歴史的資料として書き記しておこう。そしてこの「頼むー!」という至極短いフレーズは、前述の校内放送への出演を直訴したタカさんが最後の最後に言い放った言葉であり、当時の状況を覚えていたノリさんがそれに乗じたものであるということを付記す。
 シゲさんのスタンスを婉曲に物語る、私が最も関心が寄せられる逸話のひとつに、警官コントで人気を博していた当時の小柳トムこと現在のブラザー・トムが「シゲちゃんみたいな人をさがしてたんだよね」と公言してはばからなかった、というのがある。ご存じのとおりちがう相方を伴ってダ・バブルガム・ブラザーズとしてオリオリオリオーとなるわけだが、タカさんとノリさんの真顔の牽制がなければ、ヤリヤリヤリヤーもなかったかもしれない。この一件でブラザー・トムとの関係が閉ざされたというわけではなく、タカさんとノリさんの2人と同様にシゲさんに目をかけたことによりむしろ良好なものとなり、ノリさんが「いや、こういうこと、マジでやめましょうよ」とたしなめた際のモノマネをブラザー・トムがたびたび披露している。
 シゲさん死亡説は避けては通れないトピックであろう。このころはピンで地方を旅する「シゲさんぽ。」が放映され(散歩番組の先駆けとなったことは言うに及ばず)、どこに行ってもシゲさんのサイン色紙が飾られているという都市伝説まであったにも関わらず、また、「生でダラダラいかせて!!」ではジ・アルフィーとのさまざまな球技での死闘が番組の看板コーナーとなり、とんねるずに加入していなければスポーツの実況アナウンサーになりたかったシゲさんの名調子や(実際にアナウンサーを目指そうと大学へ進学し、とんねるずの活動のために中退している)、福沢朗アナとの常套句「ダブル・ジャストミート」が一世を風靡したにも関わらず、くだんの死亡説が全国に轟いたのだ。一説には「ラスタとんねるず」が終了し、ほんのわずかだが露出が減ったことによる影響が要因とされている。とんねるずとブレーンの面々はこれを逆手に取り、深夜に単発で放映された「とんねるずのおつゆ」にてシゲさんの葬式仕立てのコントを敢行した。テレビ欄では「おつゆ」としか記されていなかったため、まさかとんねるずの番組とはつゆ知らず視聴率は1%にも満たなかったのだが、この特番はお笑いファンや業界関係者の間で生ける伝説となっている。シゲさんが爆発的におもしろかったらしいのだが、録画を持っている方は私まで一報すべし。
 シゲさんがとんねるずのメンバーとして欠かせない最も大きな足跡は、シゲさんがいなければトリオとして成り立たないことである。断わりを入れておくが、単なる数合わせではこれは成り立たず、圧倒的な存在感を放つ、タカさん、ノリさん、シゲさんであるからこそトリオとしてお笑い界に燦然と君臨しているのだ。「東のとんねるず、西のダウンタウン」と謳われた同時代性も拍車をかけた。言わずと知れたダウンタウンの浜ちゃん、松ちゃん、柳ちゃんの3人も大ブレイク。少し遅れてウッチャンナンチャンギンチャンも大いにお茶の間をにぎわせ、今日までに亘るお笑いトリオ隆盛の源流を築き上げた。ダチョウ倶楽部の創始者である南部虎弾は、公には電撃ネットワーク設立のためとされているが、ほかの3人に夢を与えようと自らダチョウ倶楽部を脱退するまでに至った。「笑っていいとも」のグランド・フィナーレでは、とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャンギンチャンの3組が一堂に会し、シゲさん、柳ちゃん、ギンチャンが肩を組み合い、通が見たかったスリー・ショットがネット上で話題となり、すわ超ビッグ・トリオ結成かと機運が高まったのは記憶に新しいところ。私もぜひ見てみたい。
 シゲさんについて語るにはまだまだ字数が必要だが、今回のところはこれで最後にしよう。とんねるずのはじめてのヒット曲「一気!」をひっさげて歌謡番組に出演した際、タカさんとシゲさんがカメラを1台ずつ壊してしまい、計3000万円を弁償したエピソードにはいまでも興奮させられる。
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善人に怒声

2017年04月29日 | 雑感
 なんだよ、人のことをいっつも悪者扱いしやがって。はいはい私が悪うございました、以後気をつけまーすって、頭下げるのもほとほと疲れたんだわ。そんなにおれが悪いのかよ、そうですよね、善人からしたら考えられないことばかりでしょうね。人の好さそうな顔をして道を外したことは一切せず善行に励んで平和を祈る。ですよねえ、すばらしい人格者ですもんねえ……。ですよねえ……。じゃあ……訊くけどよ……牛乳パックをちゃんと洗って開いて乾かして分別してリサイクルに出してるのかよ! おい、全員に言ってるんだぞ! 全員に! 仕事の手を止めろ! お疲れでしょうからおれさまから休憩の差し入れだよ!
 秋山さんよ、あんた、牛乳パックを洗って開いて乾かして分別してリサイクルに出してるかい? 机の上もパソコンのデスクトップも人一倍きれいに整理してるぐらいだ、ちゃんとしてるよなあ? ん? これが年上に対する態度かって? ただの同僚じゃねえかよ、おれより仕事できねえのにえらそうなことばっか言ってよ。急に年上とか持ち出すなっての。いいから早く答えろよ、こっちは訊いてるんだからよ。え? ご想像におまかせします? 何を言葉濁してるんだよ! 濁してるってことはしてねえんだろうがよ! 牛乳パックを洗って開いて乾かして分別してリサイクルに出してるかと訊かれたら「はい」か「いいえ」しかねえだろうが!
 若菜さん、あんたはどうだ? 絵に描いたようなおしとやか、清楚が服を着て歩いてるようなもんだ、浮かぶわー。牛乳パック洗ってるとこ、目に浮かぶわー。はい? そういうことするの知りませんでした? こりゃまた想定外でした。立て続けにイエスでもノーでもないってことがあるんだなあ……ふつうにゴミにしてんじゃねえよ! 知らなかったら何したっていいのかよ! じゃあ何か? ここの芝生にレジャーシート広げてピクニックしちゃダメって知りませんでしたーってか? そういうのがいちばんタチ悪りいんだよ、このバカ女!
 根本主任はどうです? あ、牛乳は宅配のビンで飲んでいらっしゃる。牛乳はビンのほうがおいしい。ほほー、そうきましたか。ではですね、ではですよ、そのビンは、洗って回収に出してる。へ? ノーコメント? ははー、そうきましたか……ご想像におまかせすんのといっしょじゃねえかよ! 芸能人や政治家以外でノーコメントって言う人はじめて見たわ! さーて根本さん宅のビンを回収すっかー、あ、ない! 牛乳屋さんも肩透かしじゃねえかよ! 回収してないって思われたらどうしようって牛乳屋さん嘆いてるわ! 現場の人間のこと考えて牛乳飲んだことあるのかよ!
 土井さんはむかしの人だから物を大事にしてますよねえ? 古い牛乳パックから新しい牛乳パックを生み出す、それを延々と繰り返す、土井さんそういうの好きそうだもんね。そうでしょ? あん? 牛乳は飲まない? あっそ……じゃねえんだよ! こちとら飲むとしたらの話をしてんだよ! そもそも論をひけらかしてんじゃねえよ! 人を殺したことないからわかりませーん、学校でウンコしたことないからわかりませーん、じゃねえよ! いくらジジイでも想像力の翼ひろげろよ! 未来への扉あけろよ!
 松沼。してます、か……。おまえはそういうところなんだよ! いくら大学の後輩だからって擁護しねえぞ! 後輩にも好きな後輩と嫌いな後輩があるんだよ! 同じ大学だからって、そもそもおまえのこと知らねえし! あ、いまのそもそもは正統性のあるそもそもだかんな! 土井のそもそもとおれのそもそもはちげえんだよ! そしておれはおまえが大嫌いだ! そういうところがイラッとくるんだよ!
 石毛ちゃんは? え? 訊くよ? バイトの女子大生でも同じ会社の仲間として分けへだてなく接してやりてえんだよ、おれは! 何? 貴重な労働時間を奪っていいと思ってるんですかだって? ふーん、口答えかい? 社会人でもない学生の分際が? ん? 少しでもいいから社会経験を積みたいんです? 講義サボってラウンドワンでも行ってろよ。いるんだよなー、バイト経験が社会でも通用するって勘違いしてる学生さんが! はい? 大学出たらこの会社に就職したいと思ってる? うん、石毛ちゃんのその熱意、いいよ。すっごくいいよ。じゃあさ、答えてよ、牛乳パックをちゃんと洗ってー、開いてー、乾かしてー、分別してー、リサイクルに出してるかな? ん? してません? はい、ざーんねん! してるって言ったら採用だったのになー、おれが面接官だったら! 石毛ちゃん、おれが社会人代表としてこれだけは言っておく。嘘ついていい場面で正直に答えてんじゃねえよ! あと、うちの会社に入ってくれー!
 あーあ! 善人のくせに牛乳パックもろくに処分できないで……どいつもこいつもほんとダメだな!
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追憶の札幌みそラーメン

2017年04月24日 | 雑感
 日曜の正午はたいがい昼休みだ。365日稼働している職場において、心臓ペースメーカーを体内に埋め込んでいる私は、担当医が金曜に外来を受け付けている関係上、毎週金曜をシフト休とさせていただいており、誰しも知っていることであろう病院という施設は平日しか開いていないこともあり、同じぶっ倒れるなら平日のほうが好都合なので、週休2日の残りが土日になることは少ない。幸いにも年4回の通院以外で病院を訪れたためしがないし、平日の休みにピンポイントにダウンしたところで、心臓をやっているステロイド服用者の場合、それが1日で済むものなのか自分でもわからないが。
 札幌の都心部のビルにオフィスを構え、昼休みに外食でもとなると、軒並みその近辺に足を運ぶこととなる。札幌の顔であり代表的な地域だ、飲食店もひしめいているというものだ。人の往来が激しいあおりで、当然のこととして昼メシ時は混雑を極め、店によっては列をなす。しかし、土日となると、意外にもすんなり入れてしまうこともある。観光客や買物客よりも、平日の働く人間のほうが多いということか。
 私は行列に並んでまでメシは食いたくないタチである。隣の席と肩寄せ合って食べるのもイヤだ。いい歳ぶっこいて人見知りがなせる業とでもいえようか、人混みは避けたいのだ。
 都心部の外れにラーメン屋があるのは知っていた。会社から歩いて10分ほどのところだ。口の中は仕事中ずっと考えていたあったかいそばとミニ天丼のセットに決まりかけていたのだが、ふと、日曜だから空いているだろうと、そのラーメン屋にはじめて入ることにした。
 少なからず緊張しつつ引き戸のドアを開けると、客でごった返している光景が目に飛び込んだ。条件反射的に踵を返そうとしたが、カウンター席の端っこがぽっかりと空いており、私を見咎めた女性店員に促され、みそラーメンを注文した。隣の席がひとつ空いていたことは、私としてはセーフの判定だった。
 メニューを見ずに注文したのだが、改めてみそラーメンの価格を目で追うと、800円とあった。
 悪い予感がした。
 それぞれのテーブル席から交わされる陽気な会話に、私から落ち着きが失われる。そわそわと店内を見やると、壁一面に各界著名人のサイン色紙が貼り出されていた。さすが有名店だ、日曜をもろともしない。注文の品を待っている数分間のうちに12名もの団体客まで来店する繁盛ぶりだ。
 私もサイン色紙を求められるようになったなら「まいうー」や「ういっしゅ☆」「ギョギョ!」のような決めゼリフがほしいところだなと黙考していると、おまちどおさまでしたと私のみそラーメンが運ばれてきた。
 なるほど、こういうやつか……。

 ここから先はその店に対してではなく、あまねく札幌みそラーメンについて述べていきたい。
 駆け足に結論として私が提唱したいことは「800円以上の札幌みそラーメンたいがいそうでもない説」である。端的にまずいわけではないが、食べている最中にいろんなことを考えてしまい、かつ、店を出てから「いまの時間は何だったんだろう?」と大いに物足りなさを感じてしまう昨今の札幌みそラーメンのことを指す。
 掲題にもあるように、先ほどからわざわざ「札幌みそラーメン」と記しているのは、これがほかの地域のみそラーメンであれば私は何も言うまい、まあそういうやつなのねで済む。札幌で生まれ札幌で育ち、札幌で暮らしている私は、全国に知られている札幌みそラーメンをネイティヴとして食してきているのである。だから、少しは物申したいこともあり、がっかりしたくない気持ちもある。逆説的に、私の理想の札幌みそラーメンが浮かび上がってくることになるだろう。
 まずは価格設定だ。800円は高い。そして、これが重要なことだが、たいがいそうでもない。その詳細は後述するが、税込み756円であれば納得。それより安ければ尚よし。しょうゆやしおはみそより安い店もあるが、一律でいいじゃないかと私は言いたい。なんか、しゃらくさい。
 もやしを中心とした炒め野菜を入れるべし。これが入っていない800円以上の札幌みそラーメンに最も失望してしまう。もやしどっさり、たまねぎや白菜が少々、これに挽き肉が加勢していれば言うことなし。炒めではなく茹で野菜であっても入っていないよりはいい、ゆるす。ラーメンと対峙する中盤から終盤にかけて、もやしと麺を食べ進める割合を考えさせてほしい。800円以上でも、もやしが入っていれば私はそうガタガタ言わない。
 チャーシューに重きを置かない。これは私の好みでもあるのだが、さほどチャーシューの必要性やありがたみを感じないことも起因するが、それに限らずとも何もべつに豚バラをトロトロにまでしていただかなくてもいい。その時間と費用があるのなら、もやしを入れてくれ。チャーシューはそんなに肩肘張らず、豚ロースの筋張った木みてえな固い灰色のチャーシューでけっこう。2枚も3枚もいらない。だったら、もやしくれ。
 メンマについてはそれぞれでいい。割り箸みたいのでもいい。
 ねぎは白髪に気取ってくれなくていい。単なる小口切りでいい。ねぎの白い部分を繊細にカットして彩りを飾るのなら、同じ白い長さの、くどいようだがせーの、もやしほしい。
 800円以上の札幌みそラーメンの具は、チャーシュー、メンマ、ねぎの3つであるところが多い。なぜこれだけなのに800円もするのか。私は何もむずかしいことは言っていないつもりだ、700円台のラーメンにできて800円以上のラーメンにできないことがあるだろうか、さんざん書き散らしたもやしを中心とした野菜を入れてほしいし、キクラゲや茎ワカメのようなアクセントも絶対必要な選手だ。それらの具材を取り揃えて800円であれば、また来ようかなと判断するに値する俎上にやっとこさ乗っかるし、しょうゆはどうなのかなとスケベ心が芽生えるというものだ。
 お好みで薬味を溶かしてご賞味ください。のりやレンゲに乗ったショウガや辛いのがスープに浸かっちゃってお好みに調節できねえ。薬味は卓上のニンニクや一味で自分でどうにかする。ショウガや辛いのを推奨するなら、それを加えた上で調理して提供し、その味で勝負できないか。どうしても客のお好みにおもねりたいのであれば、別皿に盛ってくれないか。
 筆文字でコンセプトを一筆啓上、ウチはヨソとはちがうから。いやいや、筆文字ラーメンとしてカテゴライズできますよ。
 魚介スープがどうの特注麺がどうの。そんなにどうのどうの言わずに黙っておいしいのつくってよ。
 期間限定ラーメンをどうぞ。ラーメンったらみそラーメンを食いに来てんの。既存の札幌みそラーメンを見直してよ。
 ……単なる毒づきと化してしまったので、肝心の麺とスープについて記したい。
 角張っていたり太すぎるのは、スープが絡まず麺の味しかしない。麺はやはり中太ちぢれのたまご麺だ。かんすいなのかたまごなのか、食したあとに出るおしっこが黄色くなるスタンダードな札幌の麺でいい。700円台の店の、日によってかつくる人によってか、麺がほどよく固かったり許容範囲内スレスレにやわかったりするのも味なんだよなあ。
 いつから豚骨で白濁するようになったのか。スープは透き通っていて黄金色で、甘さの中にニンニクが利いてるの。出汁がどうのなんて知らなくていい。味のためなら化学調味料もいとわない、はなからラーメンが体にいいものだとは思ってないから。油の膜で湯気が一切立ってない、雑誌やテレヴィにおける演出の湯気というシズル感がないのがシズル感。ツヤツヤ輝いているスープに見惚れる。レンゲですくえば白ごま数粒。すべて飲み干せなくていい、麺にスープの味を伝えればそれでいい。それでも水で口を直したあとに、ついついレンゲに手を伸ばしちゃうその余韻よ。

 それが好きな人もいればそうでもない人もいる。私の舌の記憶にない札幌みそラーメンが増えてきたということだ。気軽に出前を頼めたり、町の中華屋さんの進化が止まったような札幌みそラーメンで、私はいい。札幌みそラーメンにも「昔風」という肩書がつくものが現れるとすれば、私はそれに飛びつきたい。昔風に800円はないだろう。
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落語スポーツ新聞

2017年04月11日 | 雑感
 男というものはスポーツ新聞が好きでして、休日の朝にじっくりと目を通すなんてのは至福の時間でありますな。珍妙な名前をつけられた競走馬を見つけてはうれしくなっちゃったり、やれ不祥事だスキャンダルだエッチな記事だ実にけしからん、で、何だってと読み返しちゃったりしてね。とかくスポーツ新聞の一面は野球でございますな。シーズン中であればいざ知らず、年がら年中プロ野球が一面に載るわけであります。でっかい太字でバーンと葉野と書かれたりして、四ツ折の状態のままだったらそれがもう葉野選手の持ち物なんじゃないかっていう具合であります。で、何かなーと開いてみれば、有馬記念の予想だっていうね。どっちがどっちなんだかっていう有様ですな。
 シーズン中はめくってもめくっても野球野球。少なくとも5面まではプロ野球。夏真っ盛りになりますと7面まで高校野球。よっぽど野球が好きなんでしょうな。小見出しに「三冠王を確実にさせた日本ハムの葉野和樹内野手(21)は」と書かれている。あー、(21)ってのは年齢ですな。高卒3年目のフレッシュな選手でありますな。で、くわしいことが小さい文字で書かれているわけだが、これがどうも様子がおかしい。葉野選手の呼ばれ方がどんどん変わってくる。最初のほうこそ「葉野は」と紹介されているが、読み進めていくうちに「大砲は」「スラッガーは」と代名詞に置き換えられていく。しまいには「21歳は」なんて年齢だけで葉野選手を表すってんだから、これはもう16歳の松本伊代ちゃんもビックリしますわな。
 ピッチャーになるとこんな感じ。
 史上初のルーキーによる完全試合を達成した日本ハムの葉野和樹投手(19)は、一夜明けた11日、軽めのランニングで汗を流した。報道陣の前に姿を現した葉野は「(祝福の)メールの数がハンパなかったっす」とペロリ。9日の中継ぎ登板から中1日で投げきった鉄腕は、疲れを微塵も感じさせない。今オフでの結婚を控えている変則左腕は「家族もできますし、プロでやっていくんだという気持ちがより一層高まりました」と闘志を燃やした。次の目標を聞かれると若きエースは「2試合連続(完全試合)かな」とニヤリ。一気にスターダムにのし上がった19歳は、日本国民の目を釘づけてやまない。
 選手のポジションや特色によって様々な代名詞に置き換えられる。足の速い選手なら「韋駄天は」、ガッツあふれるムードメイカーであれば「元気印は」、ヒットをいっぱい打ちますよ「安打製造機は」、勤続年数だけで「ベテランは」「ルーキーは」、キャッチャーマスクの下がイカツイおじさんでも「女房役は」、監督だって負けちゃいられない「指揮官は」てな具合に、名前がどっか行っちゃうわけであります。

「ったく、うらやましいもんだぜ。容姿端麗で背も高い。街を歩けば女が振り向く。あんな視線を浴びたのは人生初だぜ、おこぼれの視線だけど」
「そうっすか? そんなに見られてましたかねえ。自意識過剰じゃないっすか?」
「おいらが意識してどうすんだっての。カッコいい男ってのはほんとにいるもんなんだねえ。名前までカッコいい。虎が舞う竜と書いてロードときたもんだ。キラキラネームってやつかい?」
「何でもないことがしあわせだったと思うってやつですよ、田吾作さん」
「さんづけはやめろっての。同期入社のよしみだろ。タゴちゃんでいいよ、タゴちゃんで。同期になったからにゃあ仲良くしてえからサ」
「同期ったって新卒と中途採用でしょ。おいくつでしたっけ?」
「今年でサンパチだな」
「ボクと15もちがうじゃないですか」
「いいじゃねえか、おいらは気にしてねえからよ」
「ボクが気にしてるんですよ」
「何でもいいから早く頼もうぜ。すいませーん、おいらビール。いや、新人研修が終わったお祝いだ、大ジョッキーをたっぷり大盛りで! イケメンは?」
「カルーアミルク」
「軽~く乳をしぼってね。カル~クミルク。とりあえずそれで、うん。食いもんはあとで、うん。カーッ、ほんとにいるもんなんだねえ、カルーアミルクを頼む野郎ってのが。悪りいね、シャレたバーじゃなくって。でもま、こういう居酒屋の小上がりでおやじ呑みってのも社会経験ってやつよ。せめてものおいらからの研修だ。おいらもまったく未経験の職種だからよ、仕事のいろはにを教えてやれねえからサ」
「『いろは』がわからなかったら『に』もわからんでしょうね」
「食いもん選ぼうぜ」
「腹減りましたね」
「クックック。ここの店、メニューが『目に言う』になってるよ。おいらは好きだぜ、こういうの。さ、目にもの言わせてもらおうか。うわ! いっぱいあるよ。おいおい、まるで世界中から集めた美女たちが手招きしてるようだぜ。うー、迷うけどおいらやっぱこれ好きだなー、ホヤの塩辛! プレイボーイは?」
「ボクっすか?」
「ほかに誰がいんだよ」
「プレイボーイと言われても……えーと、鶏の唐揚げ、ポテトフライ、カシラ、ハツ、タン、月見つくね、枝豆、牛スジ煮、チヂミ、サーモンカルパッチョ、炙り〆鯖、ホタテバター焼き、シーザーサラダ、高菜チャーハン、あと春の山菜天ぷら」
「プレイボーイじゃねえかよ、やたらツバつけちゃって。春の山菜天ぷらってどこにあんだよ」
「そこの黒板目に言うに」
「こんなとこまでちょっかい出してんのか! 油断も隙もあったもんじゃねえや」
「そうっすかねー」
「お、呑みもんが来たぜ! 通しはキンピラだ。ん、フードの注文? フードだってかい、ハイカラったらないね。おいらのフードはホヤの塩辛だい」
「ボクは鶏の唐揚げ、ポテトフライ、カシラ、ハツ、タンを塩で2本ずつ、月見つくねも2本、それから……」
「ひとまずそれで! ビールがぬるくなっちまうぜ。ささ、カンパイだ。はい、新人研修おつかれさーん! ング、ング、ング……ピャー! うまいんだなこれが! ンゴフッ」
「落語みたいな呑みっぷりですね。ピャーって」
「しっかしあれだな、ガン見してたぜ、いまの店員のオネーチャン」
「何をっすか?」
「見てたんだよ若葉マークのバイトがよ、ヤリチンのことをよ」
「誰がヤリチンっすか! まだ何もしてないでしょうに」
「『まだ』って言ってるじゃんかよ」
「言葉のアヤっすよ。意味深な発言っすよ」
「意味チンはジョノカいんのかい?」
「チンはやめてくださいよ。こう見えて彼女一筋なんですよ」
「どこの金星よ?」
「大学の同期です。彼女はアパレル関係に就職しました」
「アバズレ? 水商売の女はやめておけ、な」
「アパレルっすよ! 洋服とか、ファッション関係の」
「おっと失礼。服か。さぞやスタイルいいんだろうな。こうさ、これもんでさ、ボン、キュッ、ストン」
「何か落ちましたよ」
「でもよ、どうなんだよ。やたら近寄ってきただろ、総務の小っこいのがよ。にしても、どうして総務の女ってどの会社でも小っこいのばっかなんだろな。あ、これ、総務の女あるあるな。覚えといたほうがいいぞ、だからってべつに何もねえけどな」
「我々が新人でいろいろ手続きがあったからじゃないっすかね、ほんとに用あるのかなって時もあったけど」
「ちびっこなりに色目使ってたんだよ。イケんじゃないの? 前途洋々の人材だ、オフィス・ラヴのひとつやふたつもオツなもんだぜ」
「したことあるんすか?」
「優等生の大卒キラキラルーキーは知らねえだうけど、ホトケのタゴちゃんだねって言われるようになるんだぜ、これから。縁あって集まった仲間は大切にしてえし、こう見えて仕事に一所懸命な真面目マンだからよ、おいらは」
「ホトケの真面目マンっすか。下ネタしか言ってない人が」
「社長だっておいらのこと一目置いてんのよ、実は。会社の救世主としてがんばってほしいんだとよ。救世主だぜ?」
「ホトケなのかキリストなのか、どっちかにしてもらえませんかね」
「あんな薄い目でおいらのことよくぞ見抜いたよね。まー、そう言われちゃあ、ね。キツネのために一肌脱いでやろうかなってなるわな」
「キツネ?」
「目ぇ薄いからよ。コケシでもいいぜ。薄い目で置きもんみてえにぼーっと座ってっからよ。いや待てよ、ツルちゃんでもいいな。ツルンツルンだもんな、頭も顔も。てえことはツルギツネかツルゴケシか。ハハ、濁っちゃうんだな、キツネもコケシも。使い込んでるかもしんねえぜ、会社の金をよ。手あたり次第に手ぇ出してたりしてな、会社の女にな。総務の小学生の取り合いだ。濁ってるどころじゃねえ、真っ黒だぜ、真っ黒。クロツルギツネにクロツルゴケシだ」
「田所田吾作」
「お、いきなりフルネームで呼び捨てたあ、同期としてその気になったかい?」
「ボク、三船って苗字なんですよ。社長は何でしたっけ?」
「社長の苗字? 何だよ、藪から棒に。えーと、何てったっけな、たしか、み、み、三船……あっ!」

 苦いビールの泡といっしょに名前が消えた。
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アオダモ植樹のセレモニーを執り行う際の注意事項

2017年03月21日 | 雑感
 球春遠からじ! 春分の日をつつがなくすごしたら、プロ野球開幕まであとわずか。今年は第4回WBCが行われており、野球熱が例年より早く高まっている紳士淑女も多いことだろう。そこで今回は、オールスター戦、日本シリーズなどの試合開始前に粛々と執り行われるアオダモ植樹のセレモニーについてレクチャーしたい。夏のオールスター戦や秋の日本シリーズのことなのに何を急にと思われるかもしれないが、人生はどう転ぶかわからない。夢はでっかくプロ野球選手を目指している学生諸君、NPB日本プロ野球機構の職員ひいては理事にならないとも限らない就活中の学生諸君、いや! そこの気を抜いている奥様もいつアオダモ植樹のセレモニーに関わるかもしれないのだから、いまのうちに学習しておかない手はないのです。それが人生の相場というものなのだから仕方がないのです。
 かくいう筆者も、プロ野球とは無縁の生活を送っている。テレヴィの前で観る専門であり、プロ野球側からの関わりは一切ナッシング。アオダモ植樹のセレモニーを球場で実際に目の当たりにした機会はないし、テレヴィのダイジェストで数秒お目にかかった程度なので、これからレクチャーすることは全部想像であることはお断りしたい。だが、やる。

◇アオダモ植樹のセレモニーとは

 まずはじめに、そもそもアオダモ植樹のセレモニーってなあにと思っているボーイズ&ガールズも多数いらっしゃることだろう。そうあわてなさんな。たっぷり教えてあげますよ、想像だけど。
 アオダモとはバットの原材料となる木のことである。アオダモのほかにもメープルやホワイトアッシュという種類の木もバットの原材料に使われる。馬鹿にしないでほしい、木製バットの種類は知識としてばっちし頭に入っている。では、なぜメープルやホワイトアッシュの植樹セレモニーはないのに、アオダモだけはあるのかだ。それはたぶん、ほかに比べて生育が遅いとか自然界で本数が少ないからなんじゃないかなー。
 そのアオダモの苗木を植える会が、前述したとおりイヴェント性の高い試合の前に行われるのだ。

◇用意するもの

 地球は何もない宇宙からビッグバンが起こって誕生したわけだが、アオダモ植樹のセレモニーは何もないところからは何もはじめられない。日本プロ野球機構の職員になった際、何を用意すればよいかいまから考えておきたい。
・アオダモの苗木が入った鉢
 本日の主役。造園店か野球用品のメーカーに発注すれば届くような気がする。
・園芸用の土が入ったバケツ
 苗木に土を盛る、当世風にいえば盛り土するのだから必須。これも造園店か野球用品のメーカーについでに発注すれば届くような気がする。
・シャベル
 盛り土用。大地に植えるわけではないので、スコップではなくハンディーなシャベルでよい。このぐらいなら自分でホームセンターに走ってもよいのでは。
・水が入ったじょうろ
 植物も人間と同じく水が必要。じょうろであれば球場のどこかにあるのでは。ちょっと考えればわかることだが、ラッキィ池田のじょうろは×。

・それらを置く台
 書きそびれていたが、上記のものは3個ずつ用意しなくてはならない。両軍の選手各1名あるいは主催チームの選手2名と、後述するがお偉方のおじさんの計3名によって植樹されるのだ。それ相応の幅のある台を用意されたし。さっきからだけどこれも想像だが、ロッカーにある折りたたみテーブルに白い布でも覆えば見栄えするかと思う。選手ロッカーか審判ロッカーかは各自の判断で。

◇諸々の配置

 目立ってかつ違和感なく想像の場所に配したい。
・置き台
 どこに置いてもかまわないわけではない。ベンチ前やバックネット際など捕ったか捕ってないかわからないファールフライの位置に置いても誰も見えやしないのだ。かといって、いちばん注目が集まる場所はピッチャーマウンドではあるのだが、坂になっていて足場が不安定すぎる。では、バッターボックスではとなると、せっかく線を引いたのにまた線を引き直さねばならない。最適な場所はピッチャーマウンドとバッターボックスの間であることは、ちょっと考えればわかることだ。マウンドのプレートからホームベースまで18.44メートル、その間となると9.22メートルだ。元野球部をナメるなよ、プレートからホームの距離なんざ基礎中の基礎知識だよ。うん、念のため調べたけど。
・選手2名
 置き台の後ろに立ってもらおう。後ろといってもセカンドベースや外野のセンターの位置ではない。その選手が独特な距離感を持っている人間であれば、ほどよいところに呼び戻そう。
・お偉方のおじさん
 選手2名の間にスーツを着たおじさんがいる。きっと偉い人だ。素性はわからないが、その日いちばん偉い人にご参加願おう。
・マスコットガール
 選手やおじさんにとって一生に一度あるかどうかわからない、このセレモニーの現場を誘導する大事な役目だ。盛り土したり水をやったりのサポートに甲斐甲斐しく動いてもらおう。独特な距離感を持っている選手を呼び戻すのもこの人の役目だ。

◇ふさわしい表情

 将来どの立場でセレモニーに列席するか心構えをしてほしい。
・選手
 生命を宿すのだから神妙な面持ちでアオダモへの感謝を表しつつ、未来の野球界への希望をスポーツマンらしく明るくさわやかに振る舞おう。その段取りにいちいち「え? え?」とキョトン顔はしないこと。
・お偉方のおじさん
 何かの発展に尽力をなされたダイナミックさをアオダモにも注ぎ込むような大らかさで。まあ、いつもどおりでお願いします。こういう舞台は慣れてるでしょうし。
・マスコットガール
 きみが笑えば解決することばかりさ(星野源)。

◇式次第

 結局、アオダモ植樹のセレモニーって何をするのか知っておくのが最重要ポイントである。いままでのことは忘れてもらってもよいが、恥を掻かないためにもこれだけはおさえておきたい。
・シャベルで盛り土する
・じょうろで水をやる
・一礼する
マスコットガールの誘導とウグイス嬢のアナウンスに沿ってやる


 以上が私からのアオダモ植樹のセレモニーのレクチャーだ。ここでわかっておいてよかったと思っていただければ幸いである。年に2度ぐらいしかないほんの数分間のことだが、みなさんの将来に大いに役立ててもらいたい。
 アオダモ植樹のセレモニーが粛々と執り行われれば、次は始球式と移るのだが、それはまたべつの機会にでも……。
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