はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part117 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第16譜

2019年04月27日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第16譜 指始図≫ 5九金まで

 指し手  ▲6六角


    [鏡鏡鏡鏡] 

   岩手軽便鉄道の一月

ぴかぴかぴかぴか田圃の雪がひかってくる
河岸の樹がみなまっ白に凍ってゐる
うしろは河がうららかな火や氷を載せて
ぼんやり南へすべってゐる
よう くるみの木 ジュグランダー 鏡を吊し
よう かはやなぎ サリックスランダー 鏡を吊し
はんのき アルヌスランダー ≪鏡鏡鏡鏡≫をつるし
からまつ ラリクスランダー 鏡をつるし
グランド電柱 フサランダー 鏡をつるし
さはぐるみ ジュグランダー 鏡を吊し
桑の木 モルスランダー   鏡を……
ははは 汽車こっちがたうとうなゝめに列をよこぎったので
桑の氷華はふさふさ風にひかって落ちる
                      (宮沢賢治『春と修羅 第二集』より)


 この宮沢賢治の詩は、1926年(大正15年)1月に記されたもの。
 この「岩手軽便鉄道の一月」の詩が、『春と修羅 第二集』として世に出す予定だった詩集の最後尾の詩になっている。
 岩手軽便鉄道の列車の車窓から見た木々の氷華(ひょうか)がキラキラしてとても面白かったのだろう、それを「鏡」として表現している。
 宮沢賢治は、有名な『やまなし』や『銀河鉄道の夜』でもわかるように、“光”の見え方が常人よりとても繊細な人だったようだ。
 ≪鏡鏡鏡鏡≫の部分は、原稿では、実際には存在しない、「鏡」の字を4つ2×2の配置に重ねて置いた漢字として表記されているらしい。
 しかしなぜ、「はんのき」だけが ≪鏡鏡鏡鏡≫ なのだろう。特別に「はんのき」の氷華がゴージャスに輝いていたのかもしれない。



<第16譜 やはり、勝ちがあったんだ!!>


≪5九金図≫
   <1>2五香 → 後手良し
   <2>4一角 → 後手良し
   <3>6六角
   <4>8六玉
   <5>8五玉

 我々終盤探検隊は、「ここで何か勝ちがある」と感じて、<1>2五香と<2>4一角とを読んだが、結局、「勝ちはない」と判断した。その読み筋の内容を前譜では紹介した。

 そして、我々は、<3>6六角 を選択したのであった。
 これは「激指14」が、この場面での第1候補手として示していた手であった。(評価値 -370)


≪最終一番勝負 第16譜 指了図≫ 6六角まで

 この続きは、次譜で。



 さて、今回の第16譜では、以下、上の≪5九金図≫から、<4>8六玉 および、<5>8五玉 の2つの手について、先手に勝ち筋があるかどうかの確認をした結果を書いていこうと思う。
 ただし、今回記す調査は、≪亜空間一番勝負≫の勝負中ではなく、対戦後に最新ソフトを使用して調べたものである。


 <4>8六玉

変化8六玉基本図
 この <4>8六玉 (図)の手は、ソフト群がよく推してくる手で、「激指14」ではこの手も(<3>6六角と同じ評価値-370で)第1候補手としている。
 しかし、我々としては気乗りのしない変化で、実戦――≪亜空間最終一番勝負≫――では、ほとんどこれを考えなかった。(気乗りがしないというのは、我々の相棒である「激指」をもってしても、手が広くてよいのかわるいのか、その手の先の見通しが立たないからである)

 <4>8六玉 の意味は、7六玉のままだと後手に7五金を打たれて7七玉と下がらされるのが嫌なので、それをあらかじめかわしたという意味で、ここで7五金なら9五玉で、先手がいきなり大優勢になる。
 先手の手番なら、6六角、5五銀引、9三角成として、次に9五玉からの“入玉”を狙う。

 ここで後手がどう指してくるか。それが問題だ。

 後手 「7四歩」 なら、6六角、5五銀引、9三角成、7五銀、9五玉として、“入玉”作戦はおおむね成功。
 だからそれを指させない意味で、「8六玉基本図」で 「8四金」 が有力手だが、その手には7三歩成が効果的。以下、7五銀、9六玉、9四歩、7七角、4四歩、8五香と進むと先手良し。

 だからその途中、9四歩に代えて、6七とが考えられる手だが、それには8三と(次の図)

変化8六玉図01
 これで先手が良い。 8三同金には、6一角と打って攻防に利かす。

 「8六玉基本図」では、他の手でもだいたい先手良しになるが、立ちはだかるのが、「8四歩」である。

変化8六玉図02 
 <4>8六玉 には、後手「8四歩」(図)。 この手がここでの後手の最善手と思われる。
 このままでは次に後手9四桂がある。(8五金もある)

 だから先手9五金が考えられるが(9四桂には9六玉とするつもり)、それには8三桂が後手の好手で、先手が悪い。

 ここで「4一角~3三香」ではどうなのだろう。
 4一角、3二歩、3三香に、そこで9四桂がある。
 以下7七玉、3三銀、同歩成、同桂、5二角成、7五香(次の図)

変化8六玉図03
 これで先手が負け。後手7五香(図)に、7六に打つ適した合駒がないので8八玉と逃げるが、7六桂で詰まされる。
 この場合は「4一角~3三香」は勝てなかった。後手には9四桂と打つ手があって、「金」を手持ちに温存できたまま先手玉を7七に追い込めたのが勝因になっている。
 
変化8六玉図04
 なので、後手の「8四歩」に対して、ここは先手は「6六角」(図)と打つのが最善か。

 ここで後手の手として、3つの手が選択肢としてある。
 △5五銀引△4四歩△4四銀の3つであるが、最も良さそうにみえる△5五銀引が、この場合は悪い手になって、先手良しになる。

 △5五銀引、「8四角、9四金、8二飛」と進んで、次の図。

変化8六玉図05
 この「8二飛」(図)は、次に5二飛成を狙っている。5二同歩は後手玉詰み。(8四金、同飛成は先手良し)
 ここで後手に、(8五歩、9六玉として)“7二桂”という手がある。しかしその手には、この場合は、同飛成と取って、8四金に、5二飛成で―――(次の図)

変化8六玉図06
 先手が勝ちとなる。

 ところが、先の△5五銀引に代えて、△4四歩ならば、結果が逆になる。その場合は、5二飛成を同歩と取られ、後手玉が4四歩と突いてある効果で、後手玉がひろくなっていて詰まないから、後手勝ちになるのである。

変化8六玉図07
 そういうわけで、先手の「6六角」には、この場合は△4四歩(図)が正解だったのである。
 図以下、「8四角、9四金、9五金」(次の図)

変化8六玉図08
 「9四金」に、8二飛では上に述べた理由で“7二桂”で後手良しなので、「9五金」(図)とするのが最善手。
 以下は、「9五同金、同角、8三桂」と進む(次の図)

変化8六玉図09
 以下、「9三竜、9五桂、同玉、6六角」(次の図)

変化8六玉図10
 「互角」に近いが、先手がやや苦しいとみられる展開。(「激指14」評価値は-253)

 このような調査結果から、<4>8六玉 は、8四歩で後手良し が結論となった。

(ところがその結論がくつがえる。それについてはまた後で)



 <5>8五玉

 この手は、「激指14」が第4位の候補手として挙げている手(評価値-611)

変化8五玉基本図
 <5>8五玉 (図)。
 ここで先手の手番なら、6六角として、以下5五銀引、9三角成で、先手玉の“入玉”が確定して、先手良しとなる。
 後手はそれを防ぐために、ここでは 9四金 または 8四金 と、金を打つことになる。

変化8五玉図01
 9四金 は「激指14」がここでの後手最善手として推す手(なんと評価値-832もある)だったが、その先を調査してみると、これには8六玉、6七と、4一角、3二歩、3三香として―――(次の図)

変化8五玉図02
 これで先手優勢になるとわかった。(どうも「激指」にはこの3三香の手がほとんど見えていないように思える)

 <5>8五玉には、8四金 がおそらくはベストの手。
 対して、先手「9六玉」(次の図)

変化8五玉図03(9六玉図)
 「激指14」の評価値はこの図では[-195]で、推奨手は(A)6七と
 他にここでは、(B)9四歩 が有力手と思われる。

 先に(B)9四歩(図)から見ていこう。
 (B)9四歩 には、先手は「7七角」と打つ。
 後手は4四歩5五銀引が有力手。

変化8五玉図04
 4四歩(図)に、「3三歩成」とする。これを同銀は、9二飛と打って、この変化は先手良し。
 よって、「3三同玉」だが、先手は3六飛(次の図)

変化8五玉図05
 3四歩(代えて3四桂は3五歩がある)、4六飛、5八金(次に6七とをねらう)、1一角、2二桂、4一銀、6七と、8五香、7五金、8六角(次の図)

変化8五玉図07
 これは先手が良い。

変化8五玉図08
 「7七角」に、後手5五銀引(図)の場合。
 やはりここでも、「3三歩成」とする(次の図)

変化8五玉図09
 これを“同玉”は、1一角、2二桂、3七桂(詰めろ)、4四歩、8五香(次の図)

変化8五玉図10
 先手が良い。

 ゆえに、“3三同銀”が本筋となる。 その手には「9二飛」とする(図)

変化8五玉図11
 以下、〔あ〕6二歩に、8五香、6六銀、8四香、7七銀不成、8三香成、6七角、8五角(次の図)

変化8五玉図12
 こうなると、これも先手優勢。


変化8五玉図13
 戻って、先手「9二飛」に、〔い〕7四金(図)という手がある。(8四桂以下の先手玉への詰めろ) 対して5二飛成で勝てればよいがそれは3二歩で、これは後手優勢。

 図では、「9四飛成」が正着で、以下、7五銀、8六香が想定手順(次の図)

変化8五玉図14
 これも先手が良い。 図で6六銀左には8八角と引いておく(5九角でも先手良し)

変化8五玉図15
 もう一度「9二飛」と打ったところに戻って、そこで後手〔う〕9三桂(図)としてきた場合。これも先手玉への“詰めろ”なので、「同飛成」と取る。つまり後手はこの桂を犠打として一手を稼いできたわけだ。
 以下、6六銀、5九角、6八歩(次の図)

変化8五玉図16
 6八歩(図)で、角の利きを止めて、先手玉にまた“詰めろ”(9五金)がかかっている。
 先手は8四竜と、竜と金とを差し違えてその“詰めろ”を解除。
 8四同歩、9四竜、8二桂、3四歩(次の図)

変化8五玉図17
 先手玉はこの瞬間、ゼット(絶対に詰まない状態)になっていて、攻めるチャンスだ。
 3四歩(図)に、同銀なら、3三歩、3一歩、2六桂と攻めていって調子が良い。

 3四歩に、後手が4二銀と引く場合を以下に見ていくが、予想手順は、1五桂、5五飛、9五金、9四桂、2四香(次の図)

変化8五玉図18
 先手優勢である。


変化8五玉図03(9六玉図)(再掲)
 以上の通り、(B)9四歩 は7七角と打って、3三歩成の筋で先手が良いという結果が出た。
 (A)6七と がもう一つの後手有力手である。

 それ以外の手――たとえば(C)5五銀引(D)7四歩 は、「4一角、3二歩、3三香」と攻めていって先手が良い。
 また(E)7五銀 なら、後手に香車が入ったときに詰まされる形なので、いったん8六歩と受けておき、以下9四歩に、そこでやっぱり「4一角、3二歩、3三香」(次の図)

変化8五玉図19
 という、後手4二銀型に対するおなじみのアタックで、先手が勝てる。
 (といっても我々が「4一角~3三香」が有効と知ったのは後日のことだったのだが)


変化8五玉図20
 ということで、(A)6七と(図)を調べていく。これを破れば、この作戦は「先手良し」が確定と言っていい。  
 この場合、例の「4一角、3二歩、3三香」だと、後手は「香」を手にするので、9四香と打たれて先手玉が詰まされて負けになる。
 そして、先手7七角の手も消しているので、次に9四歩とされると受けに窮する。だからここで先手8五香(8六香)が考えられるが、それには9四金が好手で、以下8三香成も、8四桂、同成香、同金で、後手が良い。(以下9三竜には9四香がある)

 ということで、先手が苦しく見えるこの図だが、好転させる“一手”があった(次の図)

変化8五玉図21
 「4一角、3二歩」を入れた後、「 2五飛 」(図)と打つ手である。(単に2五飛でもよい)

 対する後手の指し手が問題だ。
 ここで〔は〕9四歩、〔ひ〕7五銀、〔ふ〕6五桂、〔へ〕3一桂が考えられる後手の候補手。
 (さらに〔ほ〕6五歩がありその調査結果は末尾の[追記]にて)

 〔は〕9四歩と〔ひ〕7五銀には、「3三香」と打ちこんでいって、先手が勝ちになる。

変化8五玉図22
 まず〔は〕9四歩の場合から。
 「 2五飛 」が先手玉を守っている、後手9五金には同飛で先手良し。そして香車を渡しても、9五香には8六玉と逃げてまだ詰まない。

 さて、後手はこの「3三香」をどうするか。取るか、あるいは3一銀として受けるか。
 3三同桂は、2一金、同玉、2三飛成で詰むので選べない。
 3三同銀は、同歩成、同玉、3四歩、同玉(4二玉は5二角成以下詰む)、4五銀、3三玉、3四金、4二玉、3二角成(次の図)

変化8五玉図23
 3二同玉に、2三飛成、4二玉、3三角、4一玉、5一角成、同金、4三竜以下の詰み。

変化8五玉図24
 なので後手3一銀(図)と引いて受けた場合。
 これには、3二香成、同銀、5二角成とする。これを5二同歩とはできないので、後手は7五桂と打つ。先手の「 2五飛 」の横利きを止めて、先手玉に詰めろ(9五金の一手詰)がかかった。
 しかし後手玉を詰めれば先手の勝ちがはっきりする。
 3一角、同玉、5一竜、2二玉、3三金、同桂(同銀なら3二金以下)、2一金(次の図)

変化8五玉図25
 2一同銀、同竜、同玉、2三飛成、2二合、4三馬、1一玉、2二竜、同玉、3三歩成以下、“詰み”。
 「 2五飛 」と「9一竜」2枚の飛車が働いて、即詰みに打ち取った。

変化8五玉図26
 〔は〕9四歩に代えて〔ひ〕7五銀の場合。図は、先手「3三香」に、3一銀と引いたところ。
 先ほどと同じように、3二香成、同銀、5二角成だと、この場合は9五香で先手玉が“一手詰め”で負けになる。
 なのでこの場合は、単に5二角成が正解である。後手玉は、次に3二香成以下、“詰めろ”。
 対して後手は4二銀引としたが―――(次の図)

変化8五玉図27
 この手に代えて、後手は3三歩と指したい(香を入手したい)ところだったが、それは3二金、同銀、3一角、同玉、5三馬以下、後手玉に詰みがあった。
 ということで4二銀引と指したのだが、これは受けになっていなかった。同馬と取って、同銀に、3二香成、同玉、3三金(次の図)

変化8五玉図28
 変化はいろいろあるが、これで後手玉は詰んでいる。この詰み筋も、「2五飛」と「9一竜」と2つの飛車を目いっぱい働かせての詰み筋である。

変化8五玉図29
 〔ふ〕6五桂(図)は、先手の「3三香」に対応して工夫した手。
 ここで3三香なら、ワナにはまって先手不利になる。
 3三香、同銀、同歩成、同玉と取り、3四歩に、4二玉と逃げて、このとき、後手玉は(5二角成に同玉で)ギリギリ詰まない。そして先手玉は、9四香、8六玉、7五金で詰まされる。

 そうすると、この図で先手はどう指せばよいか。
 明快な“答え”がある(次の図)

変化8五玉図30 
 5六角(図)と打つ手である。
 この手は次に3三歩成~2三角成の“詰めろ”だし、先手玉は香を渡さなければまだ詰まない。なので後手は3一桂(1一桂)と受けるしかないが、2六香と打って「2三」への利きを増やせば、持駒のない後手はもう受けがなく、先手の勝ちが確定する。
 ただし、5六角ではなく、2六香を先に打つと、2四桂でまぎれてしまう。(5六角に2四桂には、同飛、同歩、3三歩成で後手玉詰み)

変化8五玉図31
 先手の「 2五飛 」には、〔へ〕3一桂(図)が実際的には後手の最善手かもしれない。
 これも3三香などと攻めると暴発になって悪くなる。

 ここは8六香が正解手。以下、9四金、8三香成、8四桂、同成香、同金、9三竜(次の図)

変化8五玉図32
 ここで9四香には、8六玉として、先手が良い。以下8三歩には、7六桂だ。
 しかしもし「 2五飛 」がいなかったら、9四香、8六玉に7五銀で先手玉は詰むので、9四香で負けになっているケース。「 2五飛 」が打ってあったから「8六香」が良い手になった。

 図で、7五銀には、同飛、同金、7三歩成として、先手玉は“入玉”確定で、先手良し。

変化8五玉基本図(再掲)
 以上の調査から、<5>8五玉 は、先手良し と結論する。
 先手に勝ち筋は、ここにも存在していた!!



 さて、今の調査研究から学んだことがある。後手のこの陣形に対して「2五飛は有力」ということである。
 そこで、この「2五飛」を、先ほど調べた <4>8六玉 に応用してみたらどうだろう、と我々は考えた。



 <4>8六玉 (追加調査)

変化8六玉図11
 すなわち、ここで「 2五飛 」(図)はどうだろう、ということである。(上の調査では6六角としていた)
 この図は、先手の <4>8六玉 に、後手8四歩 の場面である。この手が打ち破れず、「後手良し」と上で結論したわけであったが。この図で先手良しになれば、その結論を覆せる。
 「 2五飛 」は、次に「4一角、3二歩、3三香」という攻めを狙っている。この攻めを、「2五飛」と打っておいて決行すると、きわめて破壊力があることは上のケースでわかった。
 たとえば図で〔S〕5五銀引に「4一角、3二歩、3三香」で勝てるのではないか、というのが今回の“勝利の構図”(ただし勝てるかどうかはこの後の調査次第)である。

 しかしその調査の前に、気になる手がある。まず後手〔P〕8五金とすぐに打つ手である。
 この手には、同飛、同歩、同玉となるが、それで先手が良いのかどうか。
 そこで7二桂が後手最強の手。これには、6六角と打つ。5五銀引なら、9三角成で先手優勢がはっきりするが、5五飛という返し技がある。

変化8六玉図12
 以下、同角、同銀引、9三竜、8一桂、9二竜、9三歩、2六香、8四歩、9六玉、8五角、8六玉、6七角成、9六歩(次の図)

変化8六玉図13
 こう進んで、これは先手優勢になった。
 先手玉の“入玉”は後手の二枚の桂によって阻止されたが、手番がまわれば8一竜とその桂馬を拾って1五桂と打つ攻めが厳しい。

変化8六玉図14
 〔Q〕3五金(図)という手も気になる手だ。これで先手の飛車は捕まっている―――ように見えるが、実はそうではない。
 ここで4一角、3二歩を決め、1一角と打ちこむと―――(次の図)

変化8六玉図15
 以下、1一同玉に、3二角成で、先手勝勢。後手が「金」を不用意に手放すと、この攻めが有効になるのである。

変化8六玉図(再掲) 
 というわけでこの図に戻る。
 この「 2五飛 」に代えて先手9五金(次に8四金として入玉を狙う)という手があるのだが、それは後手8三桂という対応で、先手が悪い。まずそれを知ってもらった上で、次の解説を読んでもらいたい。

変化8六玉図16
 「 2五飛 」に対し、後手が〔R〕6五桂(図)としてきた場合。
 この手は先手玉の7七の退路を塞いで“詰めろ”(8五金まで)になっており、先手「 2五飛 」に対するうまい切り返しに見える。

 その場合、先手は、次の手で切り返す―――

変化8六玉図17
 9五金(図)である。
 “詰めろ”を受けた。これでこの場合は「先手良し」になるのである。
 理由は、後手の“持駒の桂馬が一枚だから”という理由である。もし後手に桂馬が“二枚”だったら逆に「後手良し」になるところだったのだ。
 9五金に、8三桂と打たれ、それに対して先手は9三竜と応じる。何度も言うがすんなり“入玉”できればだいたい先手が良くなる。
 8三桂、9三竜――以下7五銀、9六玉、9四歩、8三竜、9五歩、同玉と進むのが想定手順だが、そのときに、後手“7一桂”と打つ「桂馬」があれば後手がやれる。
 ところがこの場合はそれがない(後手はその「桂馬」を6五に打ってしまっている)ため、先手玉の“入玉”が確実。それでこの図での8三桂では「先手良し」というわけ。

 9五金には8五金が気になるが、同金、同歩、9六玉とし、以下9四金には8三金と打って、先手良し(さらに8四桂は、同金、同金、6六角が王手金取り)
 
 9五金と打ったこの図は「先手良し」。

変化8六玉図18
 では、〔S〕5五銀引。
 これに対して、「4一角、3二歩、3三香」が我々の期待を乗せた攻め。
 「2五飛」と「4一角、3二歩、3三香」の組み合わせの攻めは、先ほどの場合はうまくいったが、この場合は後手の持駒に「金」がある。それでもこの攻めがうまくいくかどうか、そこが最大の注目点である。

変化8六玉図19
 前の図(5五銀引)から、4一角、9四桂、7七玉、3二歩、3三香と進んで、この図になる。この攻めが成功しているかどうか。
 3三同銀は、上でも出てきた通りの攻め(同歩成、同玉、3四歩、同玉、4五銀、3三玉、3四金)で後手玉が詰む。

変化8六玉図20
 「3三香」に、3一銀(図)と引いた場合。
 この場合、後手が「香」を入手した場合、後手7五香、8八玉、7六桂という攻めで、先手玉は仕留められてしまう。なのでここで5二角成は、(同歩なら後手玉が詰むが)その瞬間に3三歩と香を取られて後手勝ちになる。
 
 だから先手は他の攻め筋があるかだが、「3二香成、同銀、3三歩成」という攻め筋があった。
 これを同桂は、3二角成、同玉、2一角から詰むので、後手は「3三同玉」。
 先手は「1一角」と王手する。

変化8六玉図21
 この攻め筋は、後手が4六銀を5五銀引とした形で有効になる。1一角に3四玉の場合に、3五金が打てるからだ。また、1一角に4二玉は、3二角成、同玉、3三歩以下詰み。
 なので先手1一角には“2二合”だが何を合するか。「桂」だと、同角成と取って、同玉に、3四桂、3三玉、3二角成、同玉、3三歩以下、後手玉が詰んでしまう。

 よって、後手は“2二香合”になるが、そうなると「香」を使ってしまったので、後手からの7五香以下の先手玉への詰みはなくなった。これが大事なところで、すると先手は後手玉に“詰めろ”で迫って行けばよいという条件になる。

変化8六玉図22 
 先手は「3四歩」(図)と王手。
 ここで“同玉”と、“4二玉”とがある。

 “同玉”には、3五金、3三玉、5二角成、同歩、2三飛成(次の図) 

変化8六玉図23
 2三飛成(図)から後手玉を詰め上げた。

変化8六玉図24
 「3四歩」に“4二玉”には、すぐには詰みはないので、「2二角成」とする。
 以下、「4四銀、3二角成、5三玉、6一竜、6二歩、2一馬右」と進めば、この図になる。
 先手優勢である。後手玉は、5二竜以下の“詰めろ”がかかっている。

 これで後手の3一銀を攻略できた。

変化8六玉図25
 「3三香」に対する後手最後の手段は、3一金(図)である。
 この手には、「3二香成、同金」。 これで後手には「香」が入ったが、「金」を受けに使ったので先手玉はまだ大丈夫だ。
 そこで「1一角」があった!!
 「同玉」に、「3二角成」(次の図)

変化8六玉図26
 「角桂香」の持駒では先手玉は詰まない。
 2二角が攻防の手だが、それには、3三歩成(同角なら2一馬以下即詰み)で、以下6六銀、同玉、3三角の反撃はあるものの、5七玉で届かない。
 先手勝ち。

 以上の結果、どうやら後手5五銀引には、「4一角~3三香」で、先手が勝てるとわかった。

変化8六玉図27
 しかしまだ「 2五飛 」で先手が勝てるとまで結論するのは早い。
 〔T〕6五歩(図)ならどうなるだろう。(この手は先手の飛車の横利きを止めただけの手だが)

変化8六玉図28
 結論を言うと、同じように「4一角~3三香」と攻めるが、今度は先手の攻めが「失敗」に終わる。
 後手に「3一金」と対応され、以下先ほどと同じく、3二香成、同金、1一角、同玉、3二角成と進め、そこで後手は6六角と打つ。
 以下、7八玉に、3一香と進んで、この図。
 後手の角筋が利いて「2二」を守っているために、この3一香で受かる。この図は、後手良し。つまり後手は5五銀引としないほうが、6六角の角筋が受けに利くのでこの先手の攻めが受かるわけなのだ。

 「3一金」に対する他の攻め方(5二角成など)も調べてみたが、先手が勝てそうな道は発見できなかった。

 そういうことで「6五歩で先手勝てない」と結論を、我々は一旦は下したのだったが――― 

変化8六玉図29
 その後再度考えて、先手打開策が見つかったのだ!
 〔T〕6五歩には、「9五金」(図)と打つのがよい。

 「桂馬が二枚あるときは9五金は8三桂で先手悪い」と上で述べたが、この場合、「2五飛」と飛車をあらかじめ打ってあるために、その状況が変えられるのだ。
 「8三桂」に、「4五角」(次の図)と打つのである。

変化8六玉図30
 この手は“詰めろ”(3三歩成、同銀、2三角成以下)になっている。だから後手は3一桂(1一桂)と受けるが、これで後手は桂馬を一枚使ったので、持駒の桂は一枚に減った。
 よって、そこで9三竜とすれば、今度は先手にとって“入玉”しやすい条件になっているという仕組みだ。
 この図から、3一桂、9三竜、7五銀、9六玉、9五桂、同玉と進み―――(次の図)

変化8六玉図31
 先手優勢。

変化8六玉図32
 では最後の手。「 2五飛 」に〔U〕7四歩。
 この手には、例の「4一角~3三香」で楽勝に思えるが、それは実は3一金でたいへんとわかった(我々の調べでは優劣不明である)
 ここは飛車の横利きが通っていることを利用して、「9三竜」からの“入玉”作戦が良い判断。
 以下、「9四歩」にも、「同竜」と取って、後手「8二桂」に―――(次の図)

変化8六玉図33
 そしてここでも「4五角」がある。「3一桂」と受けに桂馬を使わせる。
 続いて、2六香、2四金、8一角成(次の図)

変化8六玉図34
 9四桂、7五飛、同歩、9四玉、6九飛、7三歩、6一飛成、7一銀(次の図)

変化8六玉図35
 二枚の飛車を後手に渡したが、“入玉”はほぼ確定で先手優勢である。


 後手 8四歩 には、「 2五飛 」で先手が勝てる、と以上の調査でわかった。

変化8六玉基本図(再掲)
 ということで、<4>8六玉 は先手良し、である。

 この調査報告では、この図で後手「8四歩」をどう攻略するかということを記してきた。
 他の手については、はじめから「先手良し」と考えてきたから。 その評価については今も変わっていない。
 「7四歩」「8四金」については、上ですでに簡単に触れているが、その他の手――「6七と」および「5五銀引」――にどう対応するかについて書いておこう。

 「6七と」にはどうするか。

変化8六玉図36
 「6七と」には、8二飛(図)と打つ手がある。
 ここでたとえば7四歩なら、先手は5二飛成で勝てる。(取ると3二金以下詰み)
 なので後手は3二歩とか、6二歩のように受けることになるが、先手は8三飛成とする。こうして二枚の竜をつくって、“入玉”をねらっていく。これで先手良し。

変化8六玉図37
 「5五銀引」(図)もある。
 これに対しても同じように8二飛で良さそうに見えるが、この場合は6一角と角を打つのが良い。(その理由は後で示す)
 6一角に、これも後手が8四歩のような手なら、5二角成で金を取れる。
 しかし6一角には、6六銀があって、この場合は5二角成では、7五銀上から先手玉が詰んでしまうから負けになる。この銀の攻めは意外に攻め足が早いのだ。
 よって、後手6六銀には、先手は8三角成だ。ここに馬をつくって上部を開拓していく。
 以下、8四歩、同馬、7五銀上(引もある)に、9五玉とする(次の図)

変化8六玉図38
 これで先手優勢。大駒一枚は後手に献上して、“入玉”をめざす。

 ところで、もし先手が6一角ではなく8二飛と打って「竜」を作っていたら、この8四の「馬」が、「竜」になっている。
 その場合は、ここで後手に7二桂と打たれ、逆に先手劣勢の図になっていたのである(失敗図)

失敗図
 7二桂と打たれた図だが、9三竜右に、8四金、同竜、同銀、9四玉としたときに、「9五飛」と打たれて、先手が悪くなる。もしも取られる駒が「角(馬)」ならば、逆にはっきり先手良しの図になるというわけ。



≪5九金図≫(再掲)
   <1>2五香 → 後手良し
   <2>4一角 → 後手良し
   <3>6六角  = 我々が選択した手
   <4>8六玉 → 先手良し
   <5>8五玉 → 先手良し

 以上が <4>8六玉 および <5>8五玉 についての調査結果で、どちらの手も、「先手勝ち筋」があると判明した。
 しかし実戦でこれらを発見できたかというと、それは難しかったと思う。我々の闘いは「激指」に頼るものであったので、それにはちょっと荷の重い局面であった。
 「最新ソフト」と「激指14」の一手の評価の能力の“差”はわずかであっても、手が広く選択肢の多い終盤の局面を、10手20手となると、その“差”が累積されて、調査に使う時間に“圧倒的な差”ができてしまうのだ。


 さて、今回のこの調査研究で、我々はさらに、次の局面を「再調査すべき」と感じることとなった。

先手2五香図A
 これは≪5九金図≫で、<1>2五香 を選んだ場合の変化で、先手の2五香に、後手が3一桂と受けた場面である。
 この後手の3一桂で、先手負けると判断し、我々はこの道をあきらめたのであった。(前譜参照)
 
 ところが、「ここで8六玉なら先手もチャンスがあるのではないか」と、今回の調査を経験して、思うわけである。

変化2五香図B
 「8六玉」として、この図である。
 2五香と3一桂との手を交換し、後手の持駒から一枚「桂」が消えた。そのことを先手にとってプラスとして、この図から先手は勝てるのではないか。
 実は、「2五香、3一桂」とした上の図でのソフト「激指」の示す最善手は「8六玉」で、戦闘中もそれはわかっていた。わかってはいたが、“気がすすまない”という理由でその先を考えなかったのである。(「激指14」のこの図の評価値は-177)


2五飛図
 また、≪5九金図≫で、「2五飛」(図)があるのではないか。
 あらためて確認してみると、「激指14」はこの「2五飛」を、7番目の候補手として示していた。(評価値-707)


第17譜につづく




[追記] <5>8五玉についての補足

8五玉図33
 うっかり <5>8五玉 の変化で、先手「 2五飛 」に対しての後手〔ほ〕6五歩(図)の手について調べることを怠っていた。(後手にとってはこの手は〔ふ〕6五桂よりも有力な手で当然調べておくべき手であった)
 もしもこれで先手が勝てないとしたら結論が覆る。
 が、結果から言うと、先手が勝てるとわかった。よって、結論は変わらない。

 以下、その〔ほ〕6五歩に対し、先手がどう攻略するのかは重要なので、それを追記として書いておく。

 まず5六角と打って、3一桂、2六香、1一桂、6七角(次の図)

8五玉図34
 後手に持駒の桂をすべて使わせて「6七のと金」を払った。
 以下、5七銀成、8九角、9四歩、8六歩、7五銀、8七玉、6九金、3七桂、7九金(次の図)

8五玉図35
 先手の3七桂は、次に3三歩成、同銀、5二角成のような攻めを狙っている。しかしこの場面でそれを決行するのは、8九金と角を取られて負ける。
 よって、この図では4五角と角を逃がし、後手は4四歩とする。
 ここで5二角成と勝負。以下、4五歩に、3三歩成でどうなっているか(次の図)

8五玉図36
 3三歩成(図)を同桂は、2三飛成以下後手玉が詰む。
 同銀は5一竜で、先手勝てる。(角一枚ではまだ先手玉は詰まない)
 同玉には3五飛、2二玉、4一馬とし、以下は7六角、8八玉、6六歩、4三歩、同角、3四金が予想手順だが、先手良し。
 よって、後手は3三同歩が最善手。 これには、5三馬。
 以下、同銀、8二竜、3二角、4一銀、7六角、8八玉、6六歩、3二銀成、同角、6五角(次の図)

8五玉図37
 5四銀打なら、同角、同銀、4二金で、先手勝勢。
 4一銀も、3四歩、5二歩、4五桂、6五角、3三歩成、同桂、同桂成、同玉、3四歩、同玉、4六桂で、先手成功。

 図以下、他の想定手順は、7八金、同玉、6七歩成、8九玉、6二歩、3二角成、同玉、6五角、4三角、同角成、同玉、4五飛、4四歩、6五角(次の図)

8五玉図38
 5四銀打に、同角、同銀、5三金、同玉、4二銀、同玉、6二竜以下、後手玉は詰んでいる。
 攻略できた!
 
 ということで、「 2五飛 」に対しての後手〔ほ〕6五歩の変化も先手良し。

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