はんどろやノート

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終盤探検隊183 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第82譜

2020年12月07日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第82譜 指始図≫ 7八銀まで

指し手 △7四香



   [宙に浮くアリス]

 (「それに、あのひとたち、ひどく押すんですもの」と、これは後で姉さんにこの宴会のことを話したときのアリスのいいぶんだ。「あたしをぺちゃんこに押しつぶす気かと思ったくらい!」)
 じっさい、スピーチをしながらその場にがんばっているのはけっこう骨が折れた。なにしろ二人の女王が両側からやたらぎゅうぎゅう押すものだから、アリスは宙にういてしまいそうだ。「あたし、おれいを申しあげたくて、ここに立ちあがって――」ときりだしたけれど、なんと、それどころかほんとに数インチうきあがっちゃったんだね。でもテーブルのはしにつかまって、どうにか体をもとどおりに引っぱりおろした。
 「気をつけなさいよ!」白の女王さまが悲鳴をあげて、両手でアリスの髪の毛をつかんだ。「何か起こりそうだわ」

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)





<第82譜 決着は泥の中で(一)>


≪最終一番勝負 第82譜 指始図≫ 7八銀まで

 △6七馬 に、▲7八銀(図)と打ったところ。
 どうやらここで後手が良くなる順があった。だからその前の▲6九歩が失着だったということになる(代えて6九金か7九金なら先手良しだったことは前譜で解説した)

 また、ここは「銀」に代えて7八金もある。その「銀」と「金」の違いによる変化の “あや” は後で検証する。

 この ▲7八銀 に対しては、次のような手が候補手となり、その調査結果も書いておく。

7八銀図(指始図)
  【月】4四歩 → 先手良し
  【火】6二香 → 形勢不明
  【水】8八香 → 先手良し
  【木】7七歩 → 先手良し
  【金】3四馬 → 先手良し(実戦的には互角)
  【土】7八同馬 → 後手良し
  【日】7四香 = 実戦の進行(ほぼ互角)

 つまり、【土】7八同馬なら後手良し、だった。
 しかし後手は実戦では、【日】7四香を選んだということである。


 以下、【月】~【土】の6つの手について、調べた内容(戦後調査)を示しておく。


変化4四歩図00
 【月】4四歩(図)は、はっきり先手良しになる順がある。5四歩と打つのである。
 5四歩、4二銀、4三歩、同銀直、6七銀、同歩成、4二金(次の図)

変化4四歩図01
 後手玉に “詰めろ” を掛けて、先手良し。7八銀には7六玉から逃げるルートがある。
 3一銀なら、同金、同玉として、そこで8四馬がまた “詰めろ” になる。


変化6二香図00
 6筋に香車を据える【火】6二香(図)は、「互角(形勢不明)」の勝負になる。
 これには7七金が最善手と思われる(次の図)

変化6二香図01
 以下、3四馬、5七金と進む(次の図)

変化6二香図02
 ここで6七歩成、同金右、同香成、同金、4四馬、7七歩の進行は、我々の調査では先手良しになった。
 しかしここで4四馬で―――(次の図)

変化6二香図03
 ここで先手が優勢になる順が見つかっていない。形勢不明(互角)


変化8八香図00
 【水】8八香(図)という手もある。7九飛に、5七馬が継続手。
 これで一見、先手が困ったようにもみえるが、6八歩で先手有望の変化となる(次の図)

変化8八香図01
 6八同桂成は、4三歩成、7九成桂、3二と、同玉、4四歩、4二歩、1一銀で、先手勝ち。
 6八同馬のほうが先手玉に迫っているが、これには6九金としっかり受ける(次の図)

変化8八香図02
 7七歩なら、4三歩成で、先手良し。
 7九馬、同金、4七飛、7七金打、7五歩の進行が予想されるが、6一竜(次に5二竜がねらい)で、先手良しである。
 また、ここで後手4四歩なら、やはりここでも5四歩、4二銀、4三歩の攻めで、先手優勢となる。


変化7七歩図00
 【木】7七歩(図)には、6七銀、同歩成、4三歩成と進めて先手良し。
 以下7八歩成、7六玉(次の図)

変化7七歩図01
 桂を取って、後手玉には3四桂、同歩、3三金、同桂、3二と、同玉、2一角、同玉、4一飛成以下の “詰めろ” が掛かっている。
 先手優勢である。


変化3四馬図00
 【金】3四馬(図)と馬を引くのは後手にとって有力な手だ(「水匠2/やねうら王」評価値は +125)
 次に6七歩成や7七歩が後手の狙いになっている。
 それを防ぐ5七金には、6八桂成、同歩、7七歩、同玉、7四香の攻めがある。
 また、7七金と打つのは、7四香で、どうも後手が良さそう。

 ここは5四歩と攻める手が最善と見る。以下4二銀に、4三歩成(同馬なら7七歩で先手ペース)、同銀直、4二金(次の図)

変化3四馬図01
 先手には銀がないのでこの4二金ではまだ後手玉は詰めろになってはいないが、次に3一金打が詰めろになる。
 7七歩、同玉、7四香、5三歩成、同歩、7五歩、同香、9二馬(次の図)

変化3四馬図02
 9二馬で後手玉に“詰めろ”を掛けた。
 1四歩とそれを解除する手に、3五歩(次の図)

変化3四馬図03
 3五歩(図)が好手。4五馬なら、6六玉、7八馬、4三金、6二歩、3一銀と勝負に行く。このときに「3五歩」が残っていると1三玉~2四玉と逃げた時に後手玉が狭くなっている。
 よって3五歩に、後手は8八桂成と勝負する。以下6六玉、7八馬、4三金、6二歩、3一銀(次の図)

変化3四馬図04
 3一同玉、4二金打、2二玉、3二金入、1三玉、8四馬(次の図)

変化3四馬図05
 7七馬、5六玉、8四歩、3六金、7八馬、4七玉、4六歩、3七玉、4八銀(次の図)

変化3四馬図06
 2六玉、2四歩、8八飛、同馬、2二銀、2三玉、2一銀成、1三玉、2二成銀、8九馬、3四桂(次の図)

変化3四馬図07
 先手勝ちになった。

 ということで、【金】3四馬 には、5四歩、4二銀、4三歩成、同銀直、4二金で、先手良し。


変化7八同馬図00
 【土】7八同馬(図)
 問題はこの手である。
 7八同玉、8八銀(次の図)

変化7八同馬図01
 8八同飛、同桂成、同玉、6七歩成(次の図)

変化7八同馬図02
 ここまでは変化の余地がなさそう。
 ここで先手どう受けるかだが、受けが難しい。
 7九銀と打つ のも、8七金と打つのも4八飛で勝てそうにない。
 6八金が最善手のようだ。
 6八同と、同歩、4七飛、8七金、7四香、7六歩、同香、6七銀(次の図)

変化7八同馬図03
 7七金、同金、同歩成、同玉、6六歩、同玉、6四銀右(次の図)

変化7八同馬図04
 こう進んでみると、先手まったく自信のない展開になっている。
 (「水匠2/やねうら王」評価値 -347)


 【土】7八同馬 は 後手良し、が結論である。


7八銀図(指始図 再掲)
  【月】4四歩 → 先手良し
  【火】6二香 → 形勢不明
  【水】8八香 → 先手良し
  【木】7七歩 → 先手良し
  【金】3四馬 → 先手良し(実戦的には互角)
  【土】7八同馬 → 後手良し
  【日】7四香 = 実戦の進行(ほぼ互角)

 つまり、後手が【土】7八同馬 を選べば、どうやら先手は不利だったということになる。




≪最終一番勝負 第82譜 指了図≫ 7四香まで

 しかし、実戦で、≪ぬし≫(後手番)は、【日】7四香(図)を選んできた。





[研究調査 7八銀に代えて7八金の変化]

変化7八金図00

 「7八銀」に代えて、「7八金」(図)の手も有力であった。これだとどう変わってくるのかについて、研究調査してみた。

 まず、「金」の場合は、ここで[ハ]3四馬[ヒ]6二香[フ]7四香 は、ハッキリ先手良しになる ということを書いておく。

変化7八金図01
 たとえば、[ハ]3四馬(図)の場合、5四歩、4二銀、4三歩成としたときに―――(次の図)

変化7八金図02
 4三同銀直に、4二金が“詰めろ”になるので、先手良し。
 「7八金」と受けた場合はこのときに「金金銀」の持駒が手にある。「銀が手にある」ことが大きく、4二金が “詰めろ” になるのである。

変化7八金図03
 [ヒ]6二香(図)の変化。
 これには、6七金、同歩成、4三歩成で先手が勝てる(次の図)

変化7八金図04
 「7八金」と受けて、その結果後手に渡す駒が「銀」ではなく「金」なので、7八銀のような王手飛車取りの手がない。なのでこの図では8八金と打つことになるが、同飛、同桂成、同玉、4八飛、6八歩、4三飛成、6七歩、4八竜、8七玉、6七香成、8八金(次の図)

変化7八金図05
 先手良し。後手は攻め駒が足らない。

変化7八金図00(再掲)
 そして、[フ]7四香 は、受けずに4三歩成で先手良しになる(解説は省略)
 つまり、[ハ]3四馬[ヒ]6二香[フ]7四香 は「先手良し」になる。

 しかし、ここで先手の恐れる手が2つある。
 [ヘ]7七歩[ホ]7八同馬 である。

変化7八金図06
 [ヘ]7七歩(図)の変化。
 この手には、6七金、同歩成と進めることになる。
 「7八銀」のときは、そこで4三歩成で先手良しになった。以下「7八歩成、7六玉」で先手勝ちだった(上の「変化7七歩図01」を参照)

 しかし同じように「7八歩成、7六玉」と進めて、この場合は後手持駒に「金」があるのが重要な違い。6六金と打たれて、8七玉、7七金、9八玉、8八と以下、先手玉が詰まされてしまう。
 したがって、「[ヘ]7七歩、6七金、同歩成」の次の手は、(4三歩成ではなく)この場合は7九歩の受けの手が正着となる(次の図)

変化7八金図07
 これで均衡のとれた勝負になる。
 厳密にはどちらが有望なのか。この先を続けてみる。
 後手8八香なら、4三歩成、8九香成、3二と、同玉、8四馬(後手玉詰めろ)で、先手良し。
 よってここは後手7八歩成、同歩、7七歩、同歩、7八金と攻める。以下7六玉、6二香、5五角(次の図)

変化7八金図08
 後手の7七とを防いで5五角(図)と打ったところ。7七と、同角という変化は先手良し。
 8九金なら、3四桂、同歩、4三歩成で先手良しになる。
 この図、どっちが勝っているだろうか。
 4四歩なら4二歩、同銀、4三歩で、これも先手良し。

 ここは4四銀がベストの手かもしれない。以下4二金、1四歩、8五歩、8九金、8四歩、7四銀、8五金、5六飛、6六桂(次の図)

変化7八金図09
 8五金~6六桂と受けて、かろうじて、先手良しになっているようだ。
 図以下5五飛、7四金、8五角、8六玉、7四角、同桂、8五金、8七玉、1三玉、2二銀、2四玉、4六角(王手飛車取り)、3四玉、5五角、同銀、3六飛が予想され、そう進むと先手勝ち。

 [ヘ]7七歩 は、ギリギリの変化だったが、なんとか先手良しの結果となった。

変化7八金図10
 よって、[ホ]7八同馬 と切る手が後手の最善手かもしれない。
 以下同玉に、8八金(次の図)

変化7八金図11
 この8八金(図)を、「同飛」、同桂成、同玉、6七歩成は、「変化7八同馬図02」に完全に合流する。それは「後手良し」だった(上の「変化7八同馬図01~04」の解説参照)

 ただしこの場合、ここで「7七玉」という変化がある。これがどうなるか。
 以下8九金、6六玉、4九飛(次の図)

変化7八金図12
 こう進んで、先手自信なし(最新ソフトの評価値的にはまだ互角だが)

 というわけで、[ホ]7八同馬 は 後手良し、とする。

 まとめると、次の通り。

7八金図(再掲)
 「7八金」(図)は、7八同馬以下後手良し。

 つまりこの場面は、「7八」に銀を打っても金を打っても、「同馬」と切られて、先手自信のない変化になるのである。
 しかし「相手を迷わせる」という意味では、「銀」のほうが正解だったということになるかもしれない。「金」ならば「7八同馬」か「7七歩」しかないが、「銀」なら(6二香や7四香や3四馬など)ほかの選択肢も魅力的なので、「7八同馬」と切る手を躊躇するかもしれない。

 実際、後手の ≪ぬし≫ は、7八同馬を選ばず、7四香を選んだのであった。




≪最終一番勝負 第82譜 指了図≫ 7四香まで

 ≪ぬし≫ が何を考えて △7四香(図)を選んだのか、それはわからない。

 先手にとって、厳しい戦いが続いていることは、間違いない。



第83譜につづく

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