はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

螺旋の塔

2008年02月16日 | ほん
 北欧には「ルーン文字」という古代の文字があるという。北欧神話にも魔法の文字としてでてくるが、この文字は空想上の文字ではなく、ちゃんと実在する。「古代の」とはいってもエジプトやギリシャの文字ほど古くはない。もともと北の民族たちは、地中海やメソポタミアほどは文字を使わないようだ。
 「ルーン文字」は、木にナイフで刻むような文字である。タテの線が多く、横線がまったくない。横線があると、木目と重なってわからなくからそれを避けたということらしい。なるほど。 この文字はオーディン神が発見したということになっている。


 その「ルーン文字」で書かれた謎の古文書をドイツの鉱物学者リーデンブロック教授が発見し、その暗号解読に夢中になる。
 と、これは小説『地底探検』の中の話だが。
 リ-デンブロック教授は、古本屋で見つけたそのルーン文字の暗号文書が古いアイスランド語で書かれたものであり、200年まえ、16世紀のアイスランドの学者サクヌッセンが書いたものであると、甥のアクセルに興奮して語る。だが、どうしてもそれ以上暗号の解読が進まない…。暗号で書いたということは、そこには重大な秘密が書いてあるはず、と教授は言う。
 若者アクセルは、この叔父であるリ-デンブロック教授のことが大好きであった。だがこの教授は、たしかに、たいへんに変わり者であった。
 アクセル本人はそれほどその暗号に興味は抱かなかったが、なんとなく考えていると、その暗号を解くカギが突如ひらめいた! それをリ-デンブロック教授に教えると、二人は古文書を解読していく。その古文書には、サクヌッセンがかつてアイスランドの火山の火口から地球の中心をめざして降りたことが記されていた。
 リ-デンブロック教授、すぐに旅行の準備をせよ、という。「地球の中心」に行くつもりなのだ! この教授、好奇心のためなら、こわいものなし、なのである。それだけでなく「アクセル、おまえも一緒にいくのだ」というのだ!! 古文書の暗号は二人で解読したのだから、お前もこのすばらしい冒険旅行へ行く権利があると。
 「冗談じゃない!」 アクセルのほうは常識人である。(そして、ビビリでもある。) 「地球の中心」へなんて行けるわけないじゃないか、と、なんとかこの叔父である教授の旅行をやめさせようとアクセルは思う。彼はその悩みを、婚約者のグラウベンに話す。アクセルは、彼女も一緒にリーデンブロック教授のこの無謀な旅を中止させる方法を考えてくれると思っていた。ところが、なんと、彼女は「なんてすばらしい!」とその冒険旅行に興奮する。そしてアクセルに、こんないい話はない、行ってらっしゃい、この旅行から帰ったら結婚よ、という。
 もちろんグラウベンはアクセルのことが好きだ。だが、男としてアクセルは、なにかが物足らない、と彼女は思っていたのかもしれない。そして、この冒険旅行から帰ってきたときに、きっとアクセルは一人前の立派な男になるだろう、そう予感して、それが彼女を喜ばせたのであろう。
 アクセルのほうは、困ったことになった。そんな冒険になど行きたくない。「地球の中心」になんて、死んでしまうではないか。地底に25メートルごとに約1度温度が上昇するという。それなら、地球の半径は6千キロだから、地球の中心は20万度… 焼け死んでしまう!! それに、火山の火口から降りるなんて、途中で火山が爆発したらどうするんだ!?
 だがリーデンブロック教授は言う。その科学の常識がまちがっているのだ。それを確かめるために、探検に行くのだ。ぐだぐだ言わず、さあ、準備せよ!
 必死でこの探検旅行をやめさせようとがんばるも、アクセルは、こわいもの知らずの教授に引っぱられ、恋人に後押しされて、アイスランドの火山へとむかうのであった。

 リーデンブロック教授とアクセルがデンマークのコペンハーゲンでアイスランド行きの帆船の出港を待つ間に、アクセルに、その臆病な気持ちを鍛えるために教授が登らせたのが、フレルセルス教会の螺旋階段。(下図) これは、教授が言うには、「深遠をのぞく訓練」なのだという。 この教会、たぶんこの小説が書かれた当時は実在したのだろうが、今はわからない。
 だが僕は図書館のデンマークを解説した本の中に、コペンハーゲンの救世主教会の尖塔の写真を見つけた。それを描いてみた。(上図) 螺旋階段があって、展望台になっている。
 ひぃ~、(登ったら)怖いだろうな~。
 


 北欧神話もすこし読んでみた。


 オーディンは、妻のフリッガに言った。
 「わしは、じぶんのもっている知識を、知恵にかえたいのだ。」
 「ミーミルの井戸へいらっしゃりたいのでしょう。」と、フリッガ。
 「そう、わしは、ミーミルの井戸にいくもりだ。」
 「さあ、おいきなさい。」

 そして、オーディンはミーミルの知恵の井戸の水を飲んだ。そのために彼は「右目」をそのお礼としてはらわねばならなかった。


 読んでみると、オーディンという神は、ずいぶん、人間くさい。ギリシャの全能神ゼウスのように、なんとしても欲しい女を手に入れる(でもって目的を達成したあとは知らん顔)、というのとはまるっきり違う。オーディンは、知恵の水を飲んだあとでさえもも、けっこう判断ミスをしているし、常に、これでいいのかと迷いながら生きている。オーディンは、神話の中の神だが、実在した人物なのではないか、そう僕は感じた。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
 (鉋屑)
2008-02-23 14:52:52
久しぶりのコメントが過去記事ですみません。
ほぼ2日に1度は訪問してますがコメントを書く時間がなくて…(文才に乏しくてスラスラと書けないんです。
やっぱり筆の運びがプロ並!絵うまいですね。
あ、なぜこの記事にコメントかと言うと、写真と絵のフレルセルス教会の螺旋階段の向きが違う…?
何か気になっちゃって……すみません。

P.S 実は昨年末にブログを作ってしまいました。
はんどろやさんの興味のあるものはあまりないかも知れませんがお時間があったら、
どうぞお出で下さい。
『COLORS』http://blog.goo.ne.jp/minazuki3721
返信する
そうなんです! (han)
2008-02-23 21:13:56
>スラスラと書けないんです

わかります。コメント入れるのって、みょうに緊張感ありますよね。


>写真と絵のフレルセルス教会の螺旋階段の向きが違う…?

そうなんですよ!
フレルセルス教会と救世教教会とのつながりもわからない。よく似ている、というか、そっくりなんだけど螺旋の向きは逆。古くなって建て直したのかもしれないし、それにしても螺旋の向きが反対なんてことがあっていいのだろうか? 『地底探検』の挿絵の絵、実は「反転」してしまっているのではないか? なんて思いますね。


>P.S 実は昨年末にブログを作ってしまいました。

今、すこし拝見しました。とても楽しい。
そしてちょっとビックリ。
というのは『ポーの一族』のエドガーの肖像画についてはブログに書こうかと思っていたからです。SFの元祖としてジュール・ベルヌがいるわけですが、彼はエドガー・アラン・ポーの影響を受けていると最近知りました。で、ポーといえば『ポーの一族』ということで。
 ところがね、僕はあの肖像画は、レンブラントだと思いこんでいたんです。漫画のほうはまだ確認せずにレンブラントを調べていた。レンブラントってずっとオランダにいたっていうので変だなとは感じていたんです。
 そうか、ローレンスって画家だったんですねえ。(あまり知らない画家です。) 今見て、「膝」や「肘」を魅力的に描くひとだなあ、と感じました。
返信する

コメントを投稿