はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part93 ≪亜空間 最終戦争…の前≫

2017年01月09日 | しょうぎ
≪3九香ロケット1号図≫

 我々終盤探検隊(先手を持っている)は、来るべき≪亜空間の主(ぬし)≫との「最終決戦一番勝負」に備え、研究を続けている。
 図の「3九香」の「香車ロケット」で勝てるかどうか。それが今回のテーマである。


    [一九九九年一月 ロケットの夏]
 ロケットの夏。人々は、しずくの落ちるポーチから身を乗り出して、赤らんでいく空を見守った。
 ロケットは、ピンク色の炎の雲と釜の熱気を噴出しながら、発信基地に横たわっていた。寒い冬の朝、その強い排気で夏をつくりだしながら、ロケットは立っていた。ロケットが気候を決定し、ほんの一瞬、夏がこの地上を覆った……                                                 (レイ・ブラッドベリ著『火星年代記』より )



 レイ・ブラッドベリ『火星年代記』は、1950年にその初版本が発行された。
 つまりこの小説が書かれたのは1940年代だが、すると「ロケット」はまだ夢物語の時代である。ブラッドベリは20代の青年だった。

 1940年頃、「ロケット技術」が世界で最も進んでいたのは、ドイツ国である。(それまではロシアではツィオルコフスキーが、アメリカではゴダードが個人的に「ロケット」を実現化したいと頑張っていたが)
 世界大戦後、その最先端のドイツの科学者と科学技術を分け合った(取り合った)のが、アメリカ合衆国とソビエト連邦共和国である。ドイツで科学が世界一進んでいた理由は、19世紀後半から物理や化学を「教育」に取り入れて、国民全体で高める政策を進めたからである。19世紀までは、イギリスでもフランスでも、「科学」は時間をたっぷり持っている大金持ちの“趣味”でしかなかった。貧乏人が「科学」を学ぶ体制はドイツ以外では整っていなかったのである。
 ドイツの押し上げた「科学力」を土台に、「ロケット」が実現に向かって進み始めたのが1950年代で、それを進めたのがアメリカとソ連。ソビエト連邦のスプートニクが世界で初めて人工衛星を打ち上げ軌道に乗せることに成功したのは、1958年のことである。
 そのおよそ10年ほど前に、書かれた物語がこの『火星年代記』である。

 この話は、1999年1月から始まっている。この時に出発したアメリカ合衆国の「ロケット」が、火星に初めてたどり着く。
 以後、間をおかず次々と「火星探検隊」が火星に行くが、だいたいは先住民、すなわち火星人に殺されてしまう。
 ところが、探検隊の地球人がもたらした水疱瘡が原因で、火星人はほぼ全滅してしまう。しかし数少ないが生き残った火星人もいた。
 やがて地球人の火星移住が流行となり、火星に地球人の植民市がいくつもつくられ、繁栄する。
 生き残っていた少数の火星先住民たちは、ついに滅びてしまう。
 ところがその地球人の「火星移住ブーム」も一時的で、火星に移住した地球人たちはほとんど地球に戻ってしまう。それが2005年のことである。

 そうして、20年間、火星は忘れられていた。火星は、廃墟の街になった。
 そんな火星に、2026年の10月に、また新たな地球の家族が“火星人”になるために、「ロケット」に乗ってやってきた。――――というところで、この『年代記』は終わっている。
 この設定では、2026年に、「ロケット」は、“家族”でも手に入れられて火星まで乗って行けるような身近なものになっている。キャンピングカーのように。

 「ロケット」に固有の名前をつけず、すべて「ロケット」と呼んでいるのが、文学的に、なんとも面白い効果をつくっている。
 どんな技術をつかった「ロケット」なのかも説明されない。

 にもかかわっらず、年月ははっきり記されている。
 この物語の作者レイ・ブラッドベリは2012年まで生きたようだ。


<香車ロケット1号作戦>

≪8四金図≫
 この図から、前回は4一飛(新・黒雲作戦)を調査した結果は、残念ながら、後手良しと出た。
 今回のレポートは、もう一つの候補手“3九香”についての調査報告である。 

≪3九香ロケット1号図≫
 この作戦を、『香車ロケット1号作戦』と呼ぶことにした。
 ここで、後手がなにを指すかだが、次の3つの候補手がある。
  〔木〕3五桂
  〔林〕4二銀
  〔森〕7五銀

3五桂図01
 〔木〕3五桂には、同香、同銀に、3四飛(次の図)がある。

3五桂図02
 これは先手良しになる。
 以下一例は、3三桂、3五飛、7五銀、7七玉、8五桂、8八玉、7六銀(次の図) 

3五桂図03
 7六銀で先手玉には“詰めろ”がかかったが……
 3四桂、3二玉、2二金、4一玉、8六角(次の図)

3五桂図04
 8六角(図)が“詰めろ逃れの詰めろ”で、先手良し。
 6七となら、3一金、同玉、5三角成、同金、5一竜以下“詰み”。
 角道を遮る7五香はあるが、これは先手玉への詰めろになっていないので、8四馬と質駒になっている金を取って、先手が勝ち。

 この通り、〔木〕3五桂は先手良し。


4二銀図01
 〔林〕4二銀と受けるのはどうか。
 これに対しても3四香は、今度は先手が悪くなる。
 7五銀、7七玉、8五桂、8八玉、7六桂、9八玉、3三銀(次の図)

4二銀図02
 これが後手の狙いで、これは後手良しになる。後手に香車が入ると、9七香、8九玉、7七桂不成以下、先手玉が詰んでしまうのだ。

4二銀図03
 この場合は、すぐの3四香がまずかった。4二銀には、5三歩(図)が正解手である。
 5三歩には、後手は2つの道がある。一つは(1)5三同銀引とする手。もう一つは(2)7五銀から攻める手である。
 
 まず(1)5三同銀引。 これには、3四香と走って良い。銀をバックさせたので、先手の玉がその分安全になったからだ。
 3四香に3三桂と受けた場合は、先手8五銀として、“入玉”ねらいで先手良し。

 3四香に3三銀は、以下、同香成、同桂、3四銀(次の図)となる。

4二銀図04
 6四銀上、4一角、7五銀、7七玉、3二香、2四銀(次の図)

4二銀図05
 これで後手玉は“受けなし”になった。 1一桂には、3三銀直成、同香、3四桂以下、詰みである。

4二銀図06
 先手5三歩に、(2)7五銀と攻めてきた。
 これには7七玉しかないが、後手は8五桂、8八玉、7六桂、9八玉まで決めて、そこで5三金と手を戻す(次の図)とどうなるか。

4二銀図07
 ここで先手は待望の3四香。以下、3三桂には、同香成。
 これを同玉は1一角で先手勝勢になるので、3三同銀だが、そこで先手は6二飛と王手(次の図)

4二銀図08
 3二歩なら、5一竜で、後手玉は"詰めろ"。そして先手玉は6二飛が受けに利いていて、"詰めろ"を逃れている。
 5二金には、同飛成、同歩、3四桂(次の図)

4二銀図09
 3四同銀に、1一角から“詰み”である。先手勝ち。

4二銀図10
 というわけで、後手は攻め方を変える。 6六銀左(図)。
 8八玉に、7六桂、9八玉、7七銀成と“詰めろ”で迫る(次の図)

4二銀図11
 結論から言えば、この図は(正しく指せば)先手勝ち。
 8九金か7九金でも勝てるが、ここは3二歩成からの勝ち方を紹介しておく。
 3二歩成、同歩(同玉は3四香、3三桂打、7九金、5三銀、3三香成、同桂、3四桂で先手良し)に、5五角と打つのである。
 以下、3三銀、7七角、8五桂、5五角(次の図)

4二銀図12
 ここから、[a]4四銀と、[b]5六とを考える。

 [a]4四銀は、3四香、5五銀、3二香成、同玉、3四飛、3三角、4一銀(次の図)

4二銀図13
 詰んだ。先手勝ち。

4二銀図14
 今度は、[b]5六と(図)。
 これには3一銀と打ち、同玉、5二歩成で次の図。

4二銀図15
 9七銀、8九玉、2二玉、3四香。
 そこで5五と(角を取る)は、3一銀以下詰みがあるので、後手は1四歩とする。
 しかしそれも、3三香成、同桂、1一銀(次の図)

4二銀図16
 やはりこれも“詰み”。 1一同玉に、3三角成、同歩、2一金、同玉、3二銀以下。(図で1三玉は、2二銀打、2四玉、3三角成、同歩、2五飛以下)

 以上の調査から、「後手〔林〕4二銀も、先手良し」と結論する。

 ここまで、「3九香」と打った先手の「ロケット」の威力が十分に発揮されている。


7五銀図01
 〔森〕7五銀が、どうやら後手の最強手である。
 7五銀、7七玉、6六銀左、8八玉、7六桂、9八玉、7七銀成。
 そこで上でやったように3二歩成、同歩、5五角で先手良しに思えるが(〔林〕4二銀のときはそれでうまくいったが)、3三歩、7七角、8五桂、5九角、6八との進行は、先手苦戦である。
 だから、7九金(次の図)と受ける。

7五銀図02 
 先手が7九金(図)と受けたとき、手を渡された後手がどうするか。
 <ア>3五桂と、それから<イ>8六桂という手がある。

7五銀図03
 <ア>3五桂(図)と受けたが、この場合、先手がすぐに3五同香、同銀、3四飛と攻めていくのは、金を受けに使ってしまっているため後手玉への詰めろになっておらず、8五香と打たれて、後手優勢となる。
 ではどうするか。

7五銀図04
 ここは5五角と打つのがよい。
 後手6七となら、3二歩成、同玉、2二飛、4一玉、3二歩、同歩、2一飛成、4二玉、8四馬で、これは先手勝ち。
 だから後手は何か工夫をしなければならないが、8八成銀、同金、4四銀が、その“工夫”。 この4四銀に、7七角なら、6七とで、これは後手良しになる。

7五銀図05
 しかし後手の4四銀には、5四飛(図)がうまい切り返し。
 これに対して、後手は適当な手がなく、この図は先手優勢である。
 ソフト「激指」はここで後手最善手は3三銀としているが、その手には3五香で先手が良い。
 図で5五銀なら、どうなるのか。
 それは5二飛成(取ると詰み)、3三玉、5一竜左で、先手勝勢である。

 <ア>3五桂は、先手勝ちになった。

7五銀図06
 戻って、<イ>8六桂(図)で勝負する手がある。以下、同歩、同銀。
 (図で9七玉で先手良さそうにみえるが、8八桂成、同金、同成銀、同玉、7六銀は、先手悪い)
 さて、この“詰めろ”をどう受けるか。8八歩では、同桂成、同金、6七とで、後手勝ち。

7五銀図07
 8九飛(図)と受けるのが正着となる。
 この手に対し、8八桂成は、同飛で受かっている。(同金だと後手勝ち)
 すなわち、8八桂成、同飛、同成銀、同金、6八飛には、2六桂(詰めろ)で、先手優勢だ。
 ここで6九金という手がある。(6八ともあるが、だいたい同じ進行になる)
 6九金には、2六桂(4六桂)と攻め合う。 以下、7九金、3四桂、3三玉、1一角、3二玉、2二角成、4一玉、8六飛(次の図)

7五銀図08
 8八桂成、同飛、同成銀、同馬、6八飛、2二銀(次の図)

7五銀図09
 2二銀(図)と打って後手玉に“詰めろ”をかけて、先手勝ちになった。
 ここから6二金と粘る手があるが、3一銀成、5二玉、6四歩、同飛成、5五桂で、後手玉はたすからない。

 <イ>8六桂には、同歩、同銀、8九飛という受けがあって、先手良し。

 以上により、〔森〕7五銀は、先手良し」と結論が出た―――すると、この『香車ロケット1号作戦』は成功で、終盤探検隊は2つ目の「先手勝ち筋」を得たことになる。
 しかし、ほんとうに「先手良し」なのか。
 我々の調査に、“穴”はないのか―――?

 よく調べた結果、“穴”はあったのである。
 後手の「好手」が見つかった。


6六銀右図01
 〔森〕7五銀、7七玉の後、6六銀左に代えて、「6六銀右」とする手が発見されたのである。“左”ではなく、“右”で行くのだ。
 この手の意味は、「7五」に空間をつくるということである。これによって、7五桂と打つことができるというわけだ。(5五銀を残すことで先手の3二歩成、同歩、5五角の狙いも消している)
 それで、形勢はどうなるだろうか。
 
 6六銀右に8六玉は、8五桂があって、先手悪い。(以下、7六金、7七桂成、同金、同銀不成、同玉、8五桂…)
 よって、6六銀右の後は、8八玉、7六桂、9八玉、7七銀成、9七角(次の図)のように進む。

6六銀右図02
 後手7七銀成に、上と同じように7九金と受けると、7五桂と打たれ、すると7八角くらいしか受けがなく、それには6七とが“詰めろ”(8八桂成以下)で先手負け。
 図は、<カ>9七角と工夫して受けたところ。(ほかに<キ>7九角も有力でこれは後で調べる)
 後手はここでも7五桂だが、これには8六金と受ける(次の図)

6六銀右図03
 先手は良いタイミングで、7五金、同金、同馬を決行したい。それがこの9七角~8六金の受けの狙いである。(ただし、すぐにそれを決行するのは、後手8八金から詰まされてしまう)
 ここで後手は6七と。これは詰めろではないので、先手は3四香とロケットを走らせる。これは3二飛からの“詰めろ”だ。
 よって後手は3三桂とそれを受け、先手は3八飛(次の図)

6六銀右図04  
 (y)3八飛。 これも後手玉への“詰めろ”なので、後手は3二歩とそれを受ける。
 3八飛と打って、「8八」への受けの利きを増やしたので、“ねらいの7五金”を決行する。
 7五金、同金、同馬。
 しかしそれでも後手は8八金と打ってくる(次の図)

6六銀右図05
 8八同角、同桂成、同飛、同成銀、9七玉、7八飛(次の図)

6六銀右図06
 7八飛(図)は、“詰めろ”(8七成銀以下)。
 先手8六玉なら、8七成銀、8五玉、7五飛成、同玉、5七角以下、詰み。
 図で抵抗するなら、7六金だが、それも6八角と打たれて、先手負けである。

 この図で3四の香が盤上から消えれば3四桂から後手玉が詰むのだが…。
 後手玉に詰みはない。しかし図で、3三香成に同歩なら、3一銀、同玉、5三馬から詰みがある。だが、3三香成に同玉で、詰みなしである。

 この順は、先手の負け。

6六銀右図07 
 (z)3六飛。 (y)3八飛と打つ手に代えて、ここに飛車を打った。
 後手3二歩に、8四馬と金を取り、同歩に、3三香成、同歩、3一銀、3二玉、2二金、4一玉(次の図)と、後手玉を追い込む。

6六銀右図08
 先手に後手の「7七の成銀」が手に入れば、それを3二に打って…。しかし現状、角を後手に渡したので、先手玉に後手8九角からの詰みがある。
 そうしたことを踏まえて、この図で先手に2通りの候補手が考えられる。 7六飛と、8九桂だ。
 まず、7六飛は、同成銀、同金、6八飛(次の図)

6六銀右図09
 これは先手玉が詰んでしまった。8八合、8九角、同玉、7八飛成、9八玉、8七桂成まで。また8八角とするのも、8九角、9七玉、8八飛成、同玉、7八角成以下。

6六銀右図10
 戻って、8九桂(図)と受けるのはどうか。
 これには後手8八角がある。7七桂なら、9七角成~7九角で、先手玉詰み。
 よって、8八角に7五金(9七角成~7九角に8六玉と逃げる意味)としてみるも、8六香(次の図)がある。

6六銀右図11
 8六同歩なら9七角成~7九角、8六同角なら、9九角成から“詰み”。
 
 これでどうやら、<カ>9七角以下は、「先手の負け」が確定である。


6六銀右図12
 <キ>7九角と受けた場合。
 やはり後手は7五桂。先手は8六金(次の図)

6六銀右図13
 ここで後手の指し手がむずかしい。
 たとえば6七とは、3四香、3三桂、同香成、同玉、3五飛で、先手良しになる。また、6八とは、3四香、3三桂、3七飛、4二銀、7七飛、7九と、7六飛…、これも先手良し。3三玉は3七飛だし、6六銀は、3四香、3三桂、3六飛がある。
 どうやら後手の最善手は、6九金である。

6六銀右図14
 前図より、6九金、3四香、3三桂と進んだところ。
 ここで9七角と、8四馬が、先手の候補手となる。(3九飛、4四銀引、6九飛は、6八とで、先手敗勢)
 
 9七角に、後手は6八金。(次に7八金が狙い。この手に代えて6八とは3三香成、同玉、3七飛から、7七成銀を取られ、後手悪い)
 先手は3八飛と打つ。
 対して後手3二歩なら、先手が勝てる。8四馬、同歩、3三香成、同歩、3一銀、3二玉、2二金、4一玉、6八飛、同と、4二金まで。
 したがって、後手は4四銀引と受ける。
 以下、先手4五歩に、後手7八金(次の図)

6六銀右図15
 7八金(図)で先手玉に“詰めろ”がかかった。
 7八同飛、同成銀、7六金、8九飛、7九桂、6八と(次の図)

6六銀右図16
 6八と(図)は詰めろではないが、後手玉にも詰めろがかからない。
 4四歩、7九と、8六金打、8五桂、同金右、同金が予想されるが、後手勝勢である。

6六銀右図17
 「6六銀右図14」に戻って、8四馬(図)とする手を検討する。
 以下、同歩、3三香成、同玉、3五飛、3四香、2五桂、4二玉、3三銀、4一玉、5五飛、8八桂成(次の図)となる。途中、3五飛に4四玉は4五金がある。この変化のために、先に8四馬から金を入手したのだ。

6六銀右図18
 5五飛で銀を取り、次に5三飛成が先手のねらいだが、後手は8八桂成(図)。
 これは8八で清算して、6六角の“王手飛車取り”が後手の意図だ。
 それはまずいので、8八同角、同成銀に、9七玉とする。
 しかしその手には、8七桂成、同金に、6四角があった(次の図)

6六銀右図19
 こちらから“王手飛車”である。
 以下、8八玉、5五角、9七玉、6四角打、8六歩、9九角成、9八金、8九馬、2一銀、3二香、2二銀成と進んで、次の図。

6六銀右図20
 後手玉は、3三桂打、同香、3二銀打以下、“詰めろ”がかかっている。
 なので後手は4二銀とそれを受ける。
 以下、7三歩成、6八飛、8八銀(8八桂は7六歩が詰めろで後手良し)、7三角、9四竜、1九角成、3三歩、同香、3二歩、5五馬(次の図)

6六銀右図21
 後手7六歩(詰めろ)が入れば、はっきり後手優勢になる。
 9五竜、6五香、9二竜(5三桂以下の詰めろ)、6二歩、5四桂(3一歩成以下詰めろ)、6三金(次の図)

6六銀右図22
 これで後手勝ちになった。
 この6三金は、“詰めろ逃れの詰めろ”になっており、ここで先手6二桂成には、8八馬引からばらして、7八金、同玉、6七と以下、先手玉が詰む。
 3一歩成には5二玉である。


6六銀右図01(再掲)
 以上の探査の結果、先手の『香車ロケット1号作戦』は、後手の7五銀、7七玉、6六銀右(図)という巧妙な攻め手があって、「後手良し」―――が結論となった。



[補足]  結論は以上の通りなので以下は蛇足になるが、『香車ロケット1号作戦』の調査研究の補足として付け加えておく。

4二銀図03(再掲)
 これは、〔林〕4二銀に、先手が5三歩と歩を打ったところ。
 この場合も、7五銀、7七玉に、6六銀右があるわけだ。この変化はやっていなかった。
 
4二銀図17
 ところが調査の結果、この場合は、6六銀右は不発となる(つまり先手良しになる)とわかった。
 これはその調査結果である。
 ここで8八玉なら、7六桂、9八玉、7七銀成、7九金、7五桂で先手悪い(7七銀成に9七角の受けもやはり7五桂で後手良し)
 また、図で8六玉も、8五桂、7六金、7七銀不成、同金、同桂成、同玉、8五桂で後手良し。
 ところが、図で7六玉として、先手良しになるのである!

4二銀図18
 ここで8五桂は詰めろになっていないので、5二歩成で先手優勢。先手玉には6五~5四という逃走ルートもある。後手の銀が4二にまで引いた形なので、6五~5四の道があるのだ。
 また5三金は考えられる手だが、3四香、3三桂、同香成、同玉、1一角、2二桂、4五桂、4四玉、5三桂成は、先手良し。
 よって、後手はここで6四桂と打つことになる。これには8六玉しかないが、そこで8五桂としばってくる。
 これを先手は7八飛と受けるのだ。

4二銀図19
 これで先手良しというのだから……。これを時間のない実戦で読み切って指せれば達人のレベルである。
 6四に一枚桂を使わせたことで、後手の攻めの力をこの場合は弱くしている。
 ここで6七となら、3四香、3三桂、8四馬、同歩、9四竜、7八と、9五玉と“入玉”作戦で先手良し。
 したがって、この図で後手は、7七銀不成、同飛、同桂成と攻めてくるのが考えられる。
 それには5二歩成とし、以下、7六飛、9七玉、3三銀、5一竜として、後手玉には“詰めろ”がかかっている。

4二銀図20
 しかし後手は適当な受けがないので、9五歩(図)。
 先手3一竜、同玉、3二歩から、後手玉は“詰み”。

 つまり、〔林〕4二銀の変化では、「6六銀右」は有効手とならない

6六銀右図22
 ところで、これは、〔森〕7五銀の変化で、7七玉、6六銀右に、「7六玉」とした場合。
 それには図のように、8五桂で、この場合は後手良しなのだ。「5三銀型」なので、7五銀、6五玉、6四銀左引の“詰めろ”になっているからである。
 したがってこの変化では、「6六銀右」が有効となるのである。


 もう一度結論を示しておく。

≪3九香ロケット1号図≫
  〔木〕3五桂 → 先手良し
  〔林〕4二銀 → 先手良し
  〔森〕7五銀 → 後手良し

 これが結論となる。 後手の手番なので、〔森〕7五銀を選び、7七玉、6六銀右以下、後手良しとなる。


 さて、「1号」があるなら、もちろん、「2号」がある。
 次回は、『香車ロケット2号作戦』を検討調査する。

                       『終盤探検隊 part94』につづく

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