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郷田ミラクル、秘技「死んだフリ」

2007年06月17日 | しょうぎ
先月発行の「将棋世界」6月号には藤井猛九段の次のようなコメントが載っています。
「郷田さんは(中略)毎回、手を変えてくる。そこにはいつも彼の工夫が加えられています。あと言葉は悪いですが、終盤での『死んだフリ』がうまい。狙っているんですね。だから強敵相手に鮮やかな逆転勝ちが多いでしょ。」


 将棋名人戦第6局2日目は、朝、郷田九段の封じ手△6五歩で始まりました。対して森内名人わずか10分で▲7二歩。これが好手だったみたいですね、郷田九段は大長考に入ります。ずっと郷田さんが苦しかったようです。
 夜になり、「森内勝勢」となりました。「勝勢」というのは「間違いなく勝つだろう、あとは投了を待つだけだよ」という状況です。シロウトがみてもそれは明らか。しかも優位に立っているのは、あの、森内俊之です。羽生や谷川を相手にしても、ふるえることなく7番勝負を戦い、勝ちきった実績があります。「18世名人誕生」を待つだけでした。「ああ、森内さん、永世名人か」と僕も思って見ていました。最後までゆるまず、時間を投入する森内…。
 郷田△4九角。王手だ。「名人挑戦記念、思い出王手か…」そんなことを僕は思いました。
 森内名人は、対局中、両手を頭にもっていく癖があります。これは一見「失敗した」という仕草に見えます。しかしそうではなく、ただの癖で、この仕草をして、そして確実に勝ちきる、それが森内のスタイルです。
 しかし、この日は違った!
 郷田の△5三香に、森内▲4七玉(131手目)。 以下△5八角成り、▲3八玉、△4六桂。
 逆転!
 郷田の秘技、炸裂です。▲4七玉が失着。「逃げ間違えました」と投了した後に森内名人。総手数140手。

 これでスコアは3-3。第7局は6月28、29日、面白くなりました。

 あの、わかっていて王手飛車(龍)をくらうスジにいく、香をとった△1九龍(94手目)が、郷田さんの渾身の勝負手だったんですねエ…。控え室では「形づくりではないか」と言われていたあの手が。あのとき、今年の名人戦は終わったな…、みんなそう思った(ね、そうでしょ?)。 そうか、これが「死んだフリ」か!

 それにしても… 藤井の人物眼、おそるべし。


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