はんどろやノート

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よこふ物語1  ヨコフって何? の巻

2009年06月03日 | 横歩取りスタディ
            ↑ 先手の手番です。あなたならどう指す?

 羽生善治名人がこのところ「横歩取り」戦法を使い出し、A級に復帰した高橋道雄九段、井上慶太八段も、「横歩取り8五飛戦法(中座流)」を得意としています。「横歩取り」という戦法がさらに流行りそうです。

 しかし、「横歩ってなに?」…という方も多いのではないか。
 というわけで、『よこふ物語』をはじめてみよう。

 「よこふ」とは「横歩」である。 その「横歩」とはなんなのか?

 上図を見てほしい。今、後手が△2三歩と打ったところ。
 先手が飛車先の歩をのばし▲2四歩同歩同飛となって、そこで後手が△2三歩と打ったのである。よくありそうな局面だ。 (ただし、昨日の名人戦の対局では、△2三歩ではなく、△8六歩同歩同飛とすすんだのだが。)
 ここで先手はどうするか?
 ▲3四飛と「歩」を取ってよいのか? それとも▲2六飛(または▲2八飛)と引くところなのか? 「定跡」はどうなっているのか?

 プロならば、ここでは、▲3四飛と「歩」を取る。それが正解である。なぜなら、それで先手良しだから。(ただし、取らないで飛車を引いてもわるくはない。)
 横から3四の「歩」を掠め取る、だから「横歩取り」というのである。

 詳しい説明は省くが、実はこの歩を取ったらよいのか、取らないほうがよいのか、プロ棋士もむかしはずっと悩んできた。昭和20年代、30年代に良く指され、この「よこふ」を「取る派」の棋士と、「取らない派」の棋士に別れた。木村義雄(14世)名人は「取る派」の棋士で、結果的に正しかったわけだ。そういう歴史の積み重ねが「定跡」として残る。
 なぜ悩むのか? 取れるものなら、取ればいいじゃない。
 ――そりゃそうだ。
 ただ、その「歩」を取った時の飛車の位置がわるいのだ。飛車は2六飛ともどしたい、けれども3四飛を2六までもどすのに手間がかかる。「横歩3年の煩い(わずらい)」という言葉もそれで生まれた。
 具体的には、上図で▲3四飛と「よこふ」を取ると、後手には△8八角成▲同銀△2五角という手がある。それに対して対策がないと、「よこふ」はとれないわけである。
 (△2五角には、▲3二飛成、または、▲3六飛で先手良し、というのが定跡である)


 後手「横歩をとれば? とれよ、ほら。 ほしいんだろ? 」
 先手「横歩をとれ? じゃあ、とるよ。いただきま~す! 」
 後手「ふふふ。とったな…。」
 先手「えっ」
 後手「わざととらせて闘う戦法なのだ。それが『横歩取り戦法』! 」
 先手「んー? ちがうじゃん、『横歩取らせ戦法』じゃね? 」
 後手「まあ、そうなんだけどね。 えへ。」
 先手「えへって… 昔のマンガか!」


 だから上図の△2三歩は、今はプロ棋士は指さない。後手が不利になるから。
 そこでこの手では、△8六歩と指すのが定跡である。(羽生名人もそう指したようにネ。)
  (いちおう「よこふ物語1」としましたが、「2」はないかもしれません。アシカラズ。)



◇名人戦
  羽生善治 2-3 郷田真隆

 先手の郷田真隆九段が、後手の羽生名人を押さえ込んで3勝目。
 戦型は「横歩取り」でした。(羽生名人が「取れば」とさそって、郷田九段が「じゃあ」と取った)
 くわしいことは(僕には)わかりませんが、郷田九段の一日目最後の指し手(33手目)▲2三歩に僕は凄みを感じました。 「ここで▲2三歩! 僕には思いつかないなあ」と思いました。この手を郷田さんは1時間25分の長考で指しましたが、羽生さんはそれに対して、2時間42分(!)考えて次の手を封じました。 羽生さんは対局後、「▲2三歩は想像以上に厳しかったですね」とコメントしています。
 二日目は郷田さんが局面をリードして、羽生名人が耐えるという展開。 結果、郷田さんが押さえ込み一本勝ち。

 さて、郷田真隆九段、名人まであと1勝!
 郷田さんは果たして名人になるのか? 大注目です。 羽生さんから名人位を奪いとるなら、これは堂々と「頂点に立つ」ことになる。 次の第6局。わくわくしますね。

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