はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

シービスケット

2006年02月07日 | はなし
シービスケットという名の馬がいたんですね。僕もこの映画ではじめて知りました。シービスケットの意味は「軍用乾パン」です。つまり海軍が非常食用に持っているビスケットのことです。
 対するライバルの馬はウォーアドミラル、こっちの意味は「提督」です。
 この映画『シービスケット』は3時間あり、はじめの1時間はすこしわかりにくい。それは馬主、調教師、二人の騎手のキャラクターと人生があまりに面白いのでそれをなんとか伝えようとしているからです。彼らは実在した人物ですし、もちろんシービスケットとその物語も。
 主役のシービスケットがようやく登場するととたに空気が変わり、ものがたりは加速していきます。
 『ゴジラ』が昭和29年に封切られたとき、ゴジラが画面に登場するとそれまでざわついていた観客が息をのみ「あいつは何者だ」と視線をとらえてはなさなかったといいます。まさに「主役」なんですね、ゴジラは。
 シービスケットもそのような馬です。ゴジラとちがうのは本当にそのようなドラマがあったということです。

 いい映画をみたなと思いました。映画が面白かったので、原作本に興味をもち読んでみました。
 そしたら、面白い。映画の3倍おもしろい本でした。映画の3時間では語れなかったおもしろエピソードが山のようにあるのです。アメリカの古い時代はあふれるようにドラマがあったんですね。死と栄光と貧乏と夢と不幸とお金とがごちゃごちゃになってとなり合わせでならんでいるような。
 シービスケットははじめ「だめだ」と思われていました。理由は、体格が小さい、脚が曲がっている、きまぐれで扱いにくいからです。
 ところがハートがグレートだった。おそろしく強いエンジンを搭載していたのです。それを見抜いて育てたのが映画にも登場する人々というわけです。
 ほんとうにこんな馬と人がいたんだなと思うとちょっと夢のようです。この馬のキャラクターも面白いんです。
 ふつう馬は立って眠るんだそうです。ひまな時間に少しづつ仮眠をとります。もともと草原の草食動物なのでいつでも逃げられるようにそうなっているらしい。
 ところがシービスケットは横になって眠ります。とにかく眠るのがすきな馬だったらしい。馬はあまり長く横になって寝ると脚を痛めてしまうのですが、シ-ビスケットはそれでも横になって眠ります。それで脚が変形したらしいのです。朝になると馬たちは早く食わせてくれと待っているのに、シービスケットは午前中朝食抜きですやすや寝ていたらしい。
 そして闘志のすごい馬でした。映画でも出てきましたが他の馬と目をあわせると闘志に火がつくんです。だから騎手はリードしていてもわざと速度をゆるめて相手の馬の横につけます。相手が最強の馬であっても。
 ライバルのウォーアドミラルは体格、素質、性格、環境と非の打ち所のない最強馬だったが、その馬をやっぱりシービスケットは目をあわせ相手を弄るようにして勝利します。この本の筆力もすぐれたもので、ウォーアドミラルが抜き去られプライドをズタズタにされて置いていかれるとき、その馬の感情やさけびが伝わってくるような筆力のすさまじさでした。
 面白い本は?と聞かれたら真っ先の浮かぶのがこの『シービスケット』という本です。こんなおもしろい馬がいたんだなあ…。