ずいぶんと日が経ってしまいましたが、6月末にドナーの会(勉強会)がありました。
去年に続いて単独(移植者の会と同時でなく)での2回目の開催です。
まず、ドナーの会の会長と移植の会の会長のあいさつで始まりました。
去年も書いたようにお二人とも高齢でいらっしゃいますが、お元気で
しかも精力的に活動されていて、頭が下がります。
勉強会は泌尿器科の先生による「ドナーの予後管理と定期検診
について」と栄養士の先生による「ドナーのための栄養指導」
の講演がありました。
他にお二人の「ドナー体験談」と大学病院内の「移植支援室開設に
ついて」の説明などがありました。
ここでは講演内容について書きたいと思います。
泌尿器科の先生ということで、私的には?でしたが、この病院では
泌尿器科と腎臓外科と両方で移植を行っているので、今回は泌尿器科の先生の講演のようでした。
が、本来は腎臓内科が専門であり、腎臓移植の勉強のために現在は泌尿器科勤務となっていると自己紹介されました。
ちょっと安心。(自分的には泌尿器科はまったく関係ないのでね)
えーっと、今回は講演内容をまとめた資料がなかったので、記憶とメモが頼りなのですが、日にちが経ちすぎたしメモも不完全なので、とりあえず私の理解した範囲で書きますので、ご了解下さいね。
※青字は講演の内容(要約してます)です。
「ドナーの予後管理と定期検診について」
腎臓移植は年々増加の傾向にありますが、その約8割が生体による
もので、残念ながら献腎による移植はほとんど増えていません。
これだけ、生体腎移植が行われるようになると、当然ドナーの数も
増えてくるわけです。
2004年のアムステルダムフォーラム(生体ドナーの健康を守る国際
会議)で、提供後もドナーをCKD(慢性腎臓病)として長期的に管理
していくというガイドラインが明示されています。
しかし、まちまちの対応というケースが多いのが実情。
当大学病院では、今年度(4/1)から生体ドナーをUSBチップ
(データ)で主治医が管理していくという予定。(実施はまだ)
病院によっても対応が違うようですが、私も1年を過ぎたころ、来ても
来なくてもいいような雰囲気がありました。
私は定期的に検診を受けたかったので、1年毎に受けるつもりでした。
私は通える範囲ですが、遠くから来て手術を受けた方も多いし、通うの
は大変であることは確か。
来ても来なくてもいいとなれば、特に問題がなければ来なくなるのも
しょうがないかもしれませんね。
でもそういえば、今年の4月の検診の時(術後2年半)はそんな雰囲気はなくなり「次回は〇月〇日」とはっきり言われました。
先生の言われるように、予後管理していく方針がはっきりしてくれると、ドナー側も自分で判断しなくてもよくなるので、精神的には楽ですね。
遠くて通うのが大変な場合でも、近くの病院でのドナー検診がちゃんと行われるようになるといいと思います。
次はアメリカの長期的資料(1963~2007年)によるドナーの
予後についてやその他の統計など、スライドを使って説明されました。
対象 3698人
死亡 268人
死因…不明162人、残り106人のうち30%が心血管系
一般人の割合と変わらず
12年後のQOR 一般に比べドナーの方が良好
術前検査に合格=良好であるので
提供後末期腎不全リスク 126/56458人…0.22%
一般人の割合と変わらず
まとめ
提供したからと言って、大きなリスクはない。ただし、油断は禁物。
特別なことはなく腎臓に負担をかけない生活を心がける。
この後は、腎臓に負担をかけない生活について具体的に説明がありました。
気を付けること
1.高血圧
・高血圧が続くと腎臓の細動脈の硬化進行→腎硬化症→腎不全
・130/80以下にコントロールする
(蛋白尿がある場合は125/75以下に)
・高血圧にならないためには
①塩分の摂りすぎ
②カロリーの摂りすぎ
③アルコールの摂りすぎ
④ストレス過剰
⑤運動不足
を見直す。
2.蛋白尿
・蛋白尿は腎臓病の重症度を反映する
・蛋白尿自体が障害になる
3.脱水
・脱水は腎臓への血液流量を低下させ、組織障害を起こす
・水分は1日2リットルを目安に摂るように
4、薬剤
・解熱鎮痛剤(ボルタレン、ロキソニンなど)
造影剤(排出されないことがある)には注意が必要。
・必要な場合は使用しても可、ただし十分に水分をとること。
5.貧血
・酸素不足となる
6.加齢
・GFR(糸球体濾過量)…60以上が標準
・年に1%ずつ加齢により低下していく
腎機能は一旦悪くなると元に戻りにくいので、悪化させないこと。
特別なことはなく、一般の生活習慣病を予防する生活を心がけること。
生活習慣病を予防する生活
1.食事
塩分を6~10g以下に(日本人の平均摂取量は13g)
2.体重
太ると腎臓に負担がかかる→提供前より5㎏以上は太らない
3.身体活動
軽く息がはずむくらいの運動を一日30分する→10分×3回でも可
4.アルコール
飲みすぎない
5.タバコ
禁煙することが望ましい
定期的な検診について
術後の経過によって、
①3~4週間後
②3か月後
③6か月後
④1年後~1年毎
内容は
①採血…クレアチニンなど
②検尿…蛋白尿、アルブミンなど
③腎エコー…
日常的に個人で行うことは
①血圧測定…起床後、就寝前
②食事…塩分、カロリーのコントロール
③体重…定期的に量る
⑤禁煙…必ず
以上が大体の講演内容でした。
メモをまとめた形になりましたが、参考になりましたでしょうか。
次は質疑応答です。
Q 術後、疲れやすくなったのですが。
手術前は山登りなどをしていましたが、術後はちょっと歩いても
疲れるので、こんな調子ではとてもリュックをしょって山登りは
出来ないと思えます。
定期検診の時に担当医に聞いても、関係ないと言われ「加齢の
せいでしょうか?」と聞いたら、ニヤリとされたんですけど…。
(2年2か月後の60代女性ドナー)
A 移植手術とは直接の因果関係はないと思います。
ただ、術後はお腹に傷もあるし、安静にしていた時期があると思う
ので、その間に筋力や体力が落ちたということが考えられます。
ですから、いきなり以前と同じようにではなく、少しずつウォーキング
などから始めたらどうでしょうか。
Q ドナーは年に一度の検診で良いか。ガンのリスクは?
(夫婦間移植のレシピエントの男性)
A ドナー検診についてというなら、ガン対応ではなく腎機能について
ですが年に一度で良いです。
ガンについては一般の人と同じように受けるので良いと思います。
Q 腰が痛くて整形外科にかかったが、骨粗鬆症の薬を飲んだ方が
良いでしょうか?
結局、整形外科ではまだ骨粗鬆症の薬を飲むところまで行って
いないと言われたのですが。
(2年半後の60代女性ドナー)
A 整形外科でまだ大丈夫というなら特に飲む必要はないです。
ただ薬を服用することになった場合、腎臓で排出される薬は減量
が必要で、通常の量の80%にするようにしてください。
Q 先ほどの説明ではアメリカのデータが多かったのですが、日本人
のデータはないのでしょうか?
(男性ドナー)
A その質問は痛いところで、日本の移植は外科が主流で内科医が
関与してこなかったためにデータが少ないんです。
腎臓内科医が少ないことも原因の一つですが、今後は増えていく
(日本人のデータ)と思います。
Q 術後、便の出が悪くなった。腸の癒着があるのでは?
(女性ドナー)
A この病院の手術では腸を触らないので腸の癒着はしません。
Q 腎臓を摘出した後、腸が下がって癒着しているのでは?
A 腸が下がったとしても癒着はしません。
Q 血尿が出て、IgA沈着症と診断されました。IgA腎症とは
どう違うのですか。
(男性ドナー)
A IgAが付いたけれど、腎症は起こしていないということです。
IgA腎症の治療にはリスクがあるので、必ずしも治療はしません
が、腎症にならないように注意は必要です。
他に、術後1年くらいの男性ドナーから「生ものはいつごろから食べて
いいのでしょうか?」という質問がありまして、先生が「レシピエント
ですか?」と聞くと「いいえ、ドナーの方です」と。
これには会場から小さく笑い声が起こってしまいました。
先生が「ドナーは何の規制もありませんよ」と。
どこかで勘違いされていたのでしょうね、1年も生ものを食べてなかった
みたいで、なんだか気の毒でした。
私なんてすぐお寿司食べちゃいましたよ。入院中(たった5日ですけど)生もの食べられませんでしたからね。
次に栄養士の先生から栄養指導の講演がありましたが、長くなりましたので次にします。
ダラダラと書きましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。
少しでも参考になればと思います。
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