法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

学生野球の本義に違背する行為について

2007-03-15 19:30:00 | Weblog
西武裏金「知らなかった事に」・球団が早大清水選手に要請 NIKKEI NET

 裏金を受け取っていた社会人野球の選手の出身高校も,独自に当時の野球部長,コーチに事情を聴いたと地元紙が報じている。こちらは,部長らの関与はないとのこと。学校側は幕引きの構えだが,さて,日本学生野球協会審査室の対応やいかに。


日本学生野球憲章の関連条文

 われらの野球は日本の学生野球として学生たることの自覚を基礎とし,学生たることを忘れてはわれらの野球は成り立ち得ない。勤勉と規律とはつねにわれらと共にあり,怠惰と放縦とに対しては不断に警戒されなければならない。元来野球はスポーツとしてそれ自身意昧と価値とを持つであろう。しかし学生野球としてはそれに止まらず試合を通じてフェアの精神を体得する事,幸運にも驕らず非運にも屈せぬ明朗強靭な情意を涵養する事,いかなる艱難をも凌ぎうる強健な身体を鍛練する事,これこそ実にわれらの野球を導く理念でなければならない。この理念を想望してわれらここに憲章を定める。

第一条 この憲章は,学生野球の健全な発達を図ることを目的とする。

第十三条 選手又は部員は,いかなる名義によるものであっても,他から選手又は部員であることを理由として支給され又は貸与されるものと認められる学費,生活費その他の金品を受けることができない。但し,日本学生野球協会審査室は,本憲章の趣旨に背馳しない限り,日本オリンピック委員会から支給され又は貸与されるものにつき,これを承認することができる。
(2) 選手又は部員は,いかなる名義によるものであつても,職業野球団その他のものから, これらとの入団,雇傭その他の契約により,又はその締結を条件として契約金,若しくはこれに準ずるものの前渡し,その他の金品の支給,若しくは貸与を受け,又はその他の利益を受けることができない。

第十九条 第四条第一項・第七条但し書及び第九条から第十四条までの規定は,高等学校野球にこれを準用する。

附則

第二十条 日本学生野球協会は,部長,監督,コーチ,選手又は部員に学生野球の本義に違背し,又は違背するおそれのある行為があると認めるときは,審査室の議を経て,その部長,監督,コーチ,選手又は部員に対しては,警告,謹慎又は出場禁止の処置をし,その者の所属する野球部に対しては,警告,謹慎,出場禁止又は除名の処置をすることができる。部長,監督,コーチ,選手又は部員にこの憲章の条規に反する行為があると認められるときも,同様である。
(2) その部長,監督,コーチ,選手又は部員について前項前段の規定を準用する。但し,この非行が,学生野球の健全な発達を阻害し,又は阻害する おそれがあると認められるときは,その者の所属する野球部についても前項前段の規定を準用する。
(3) 部長,監督,コーチ,選手又は部員の野球に関しない個人としての非行であつても,その非行が,学生野球の健全な発達を阻害し,又は阻害するおそれがあると認められるときは,その者の所属する野球部について第一項前段の規定を準用する。
(4) 学校法人の役員,若しくは,教職員,其他学校関係者の行為が,学生野球の健全な発達を阻害し,又は阻害するおそれがあると認められるときは,その者の関係し,又は関係せんとする野球部について,第一項前段の規定を準用する。

第二十三条 この憲章の適用に関して,疑義を生じたときは,日本学生野球協会審査室の議を経て,会長がこれを決定する。

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男女共同参画会議によるDV防止法改正に係る提言等について

2007-03-14 22:18:11 | Weblog
DV法保護対象,親族や支援者も…改正案報告書 YOMIURI ONLINE

 保護命令の趣旨は,生命又は身体に危害が加えられることの防止(DV防止法第10条第1項参照)。電話,ファックス,手紙,メール等による接触禁止は,保護命令の趣旨に「被害者の生活の安全と平穏に資すること」を加えたうえで,との提言のようだ。

 ところで,DV防止法第15条第3項には,「保護命令を発したときは,裁判所書記官は,速やかにその旨及びその内容を申立人の住所又は居所を管轄する警視総監又は道府県警察本部長に通知するものとする。」とあるが,昨年,夫が,保護命令(接近禁止命令)が出されている妻を探偵を利用して探し出し,殺害するという事件があった。「執行力のない命令」と言うとそれまでだが,この通知制度などがきちんと機能していれば・・・。

男女共同参画会議 「配偶者暴力防止法の施行状況等について」を公表しました。


「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の関連条文

我が国においては,日本国憲法 に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ,人権の擁護と男女平等の実現に向けた取組が行われている。
 ところが,配偶者からの暴力は,犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であるにもかかわらず,被害者の救済が必ずしも十分に行われてこなかった。また,配偶者からの暴力の被害者は,多くの場合女性であり,経済的自立が困難である女性に対して配偶者が暴力を加えることは,個人の尊厳を害し,男女平等の実現の妨げとなっている。
 このような状況を改善し,人権の擁護と男女平等の実現を図るためには,配偶者からの暴力を防止し,被害者を保護するための施策を講ずることが必要である。このことは,女性に対する暴力を根絶しようと努めている国際社会における取組にも沿うものである。
 ここに,配偶者からの暴力に係る通報,相談,保護,自立支援等の体制を整備することにより,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るため,この法律を制定する。

(定義) 
第一条  この法律において「配偶者からの暴力」とは,配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい,配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に,その者が離婚をし,又はその婚姻が取り消された場合にあっては,当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。
2  この法律において「被害者」とは,配偶者からの暴力を受けた者をいう。
3  この法律にいう「配偶者」には,婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含み,「離婚」には,婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者が,事実上離婚したと同様の事情に入ることを含むものとする。

(保護命令)
第十条  被害者(配偶者からの身体に対する暴力を受けた者に限る。以下この章において同じ。)が配偶者からの更なる身体に対する暴力(配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に,被害者が離婚をし,又はその婚姻が取り消された場合にあっては,当該配偶者(配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に,被害者が離婚をし,又はその婚姻が取り消された場合にあっては,当該配偶者であった者。以下この条,同項第三号及び第十八条第一項において同じ。)であった者から引き続き受ける身体に対する暴力。第十二条第一項第二号において同じ。)によりその生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときは,裁判所は,被害者の申立てにより,その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため,当該配偶者(配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に,被害者が離婚をし,又はその婚姻が取り消された場合にあっては,当該配偶者であった者。以下この条,同項第三号及び第十八条第一項において同じ。)に対し,次の各号に掲げる事項を命ずるものとする。ただし,第二号に掲げる事項については,申立ての時において被害者及び当該配偶者が生活の本拠を共にする場合に限る。
一  命令の効力が生じた日から起算して六月間,被害者の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この号において同じ。)その他の場所において被害者の身辺につきまとい,又は被害者の住居,勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないこと。
二  命令の効力が生じた日から起算して二月間,被害者と共に生活の本拠としている住居から退去すること及び当該住居の付近をはいかいしてはならないこと。
2  前項本文に規定する場合において,被害者がその成年に達しない子(以下この項及び第十二条第一項第三号において単に「子」という。)と同居しているときであって,配偶者が幼年の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情があることから被害者がその同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認めるときは,前項第一号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所は,被害者の申立てにより,その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため,当該配偶者に対し,命令の効力が生じた日以後,同号の規定による命令の効力が生じた日から起算して六月を経過する日までの間,当該子の住居(被害者及び当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この項において同じ。),就学する学校その他の場所において当該子の身辺につきまとい,又は当該子の住居,就学する学校その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものとする。ただし,当該子が十五歳以上であるときは,その同意がある場合に限る。

(保護命令の申立て)
第十二条  第十条の規定による命令(以下「保護命令」という。)の申立ては,次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一  配偶者からの身体に対する暴力を受けた状況
二  配偶者からの更なる身体に対する暴力により生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認めるに足りる申立ての時における事情
三  第十条第二項の規定による命令の申立てをする場合にあっては,被害者が当該同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため当該命令を発する必要があると認めるに足りる申立ての時における事情
四  配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察職員に対し,配偶者からの身体に対する暴力(配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に,被害者が離婚をし,又はその婚姻が取り消された場合にあっては,当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力を含む。)に関して前三号に掲げる事項について相談し,又は援助若しくは保護を求めた事実の有無及びその事実があるときは,次に掲げる事項
イ 当該配偶者暴力相談支援センター又は当該警察職員の所属官署の名称
ロ 相談し,又は援助若しくは保護を求めた日時及び場所
ハ 相談又は求めた援助若しくは保護の内容
ニ 相談又は申立人の求めに対して執られた措置の内容
2  前項の書面(以下「申立書」という。)に同項第四号イからニまでに掲げる事項の記載がない場合には,申立書には,同項第一号から第三号までに掲げる事項についての申立人の供述を記載した書面で公証人法 (明治四十一年法律第五十三号)第五十八条ノ二第一項 の認証を受けたものを添付しなければならない。

(迅速な裁判)
第十三条  裁判所は,保護命令の申立てに係る事件については,速やかに裁判をするものとする。

(保護命令事件の審理の方法)
第十四条  保護命令は,口頭弁論又は相手方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ,これを発することができない。ただし,その期日を経ることにより保護命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは,この限りでない。
2  申立書に第十二条第一項第四号イからニまでに掲げる事項の記載がある場合には,裁判所は,当該配偶者暴力相談支援センター又は当該所属官署の長に対し,申立人が相談し又は援助若しくは保護を求めた際の状況及びこれに対して執られた措置の内容を記載した書面の提出を求めるものとする。この場合において,当該配偶者暴力相談支援センター又は当該所属官署の長は,これに速やかに応ずるものとする。
3  裁判所は,必要があると認める場合には,前項の配偶者暴力相談支援センター若しくは所属官署の長又は申立人から相談を受け,若しくは援助若しくは保護を求められた職員に対し,同項の規定により書面の提出を求めた事項に関して更に説明を求めることができる。

(保護命令の申立てについての決定等)
第十五条  保護命令の申立てについての決定には,理由を付さなければならない。ただし,口頭弁論を経ないで決定をする場合には,理由の要旨を示せば足りる。
2  保護命令は,相手方に対する決定書の送達又は相手方が出頭した口頭弁論若しくは審尋の期日における言渡しによって,その効力を生ずる。
3  保護命令を発したときは,裁判所書記官は,速やかにその旨及びその内容を申立人の住所又は居所を管轄する警視総監又は道府県警察本部長に通知するものとする。
4  保護命令は,執行力を有しない。

第二十九条  保護命令に違反した者は,一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

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幸運な作業員について

2007-03-13 21:30:18 | Weblog
asahi.com 土中から5千万円,「持ち主は私」2人 愛知

 NHKのニュースなどもあわせ読むと,建設会社の作業員が,不動産会社所有の土地を,住宅建築のために掘削機で掘り起こすなどの作業をしていたときに発見したとのこと。
発見者は,所有者が判明した場合は報奨金として最低250万円(遺失物法第4条第1項),判明しなかった場合は2500万円(民法第241条但書),を手にすることになりそう。

 既に持ち主として名乗りでる予定の人がいるようだが,拾得物件の返還に係る遺失物法施行令第3条第1項には,「警察署長は,遺失者等から物件の返還を求められたときは,内閣府令で定める様式による受領書と引換に返還しなければならない。この場合において,警察署長は,遺失者等にその氏名及び住所を証するに足りる書類を提示させる等の方法によつて遺失者等であることを証明させなければならない。」とある。

なお,改正遺失物法の施行日は,先般,本年12月10日と決定された。


民法の関連条文

(埋蔵物の発見)
第二百四十一条  埋蔵物は,遺失物法 の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは,これを発見した者がその所有権を取得する。ただし,他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については,これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。

遺失物法の関連条文

第一条  他人ノ遺失シタル物件ヲ拾得シタル者ハ速ニ遺失者又ハ所有者其ノ他物件回復ノ請求権ヲ有スル者ニ其ノ物件ヲ返還シ又ハ警察署長ニ之ヲ差出スヘシ但シ法令ノ規定ニ依リ私ニ所有所持スルコトヲ禁シタル物件ハ返還スルノ限ニアラス
2 物件ヲ警察署長ニ差出シタルトキハ警察署長ハ物件ノ返還ヲ受クヘキ者ニ之ヲ返還スヘシ若シ返還ヲ受クヘキ者ノ氏名又ハ居所ヲ知ルコト能ハサルトキハ政令ノ定ムル所ニ従ヒ公告ヲ為スヘシ

第四条  物件ノ返還ヲ受クル者ハ物件ノ価格百分ノ五ヨリ少カラス二十ヨリ多カラサル報労金ヲ拾得者ニ給スヘシ但シ国庫其ノ他公ノ法人ハ報労金ヲ請求スルコトヲ得ス
2 物件ノ返還ヲ受クル者ハ第十条第二項ノ占有者アル場合ニ於テハ前項ノ規定ニ依ル報労金ノ額ノ二分ノ一宛ヲ拾得者及占有者ニ給スベシ

第十三条  埋蔵物ニ関シテハ第十条及第十条ノ二ヲ除クノ外本法ノ規定ヲ準用ス

遺失物法施行令の関連条文

(拾得物件の差出)
第一条  遺失物法 (以下「法」という。)第一条第一項 に規定する拾得した物件の警察署長への差出は,事情の許す限り,当該物件を拾得した場所のもよりの警察署長にしなければならない。
2  拾得した物件の差出を受けた警察署長は,内閣府令で定める様式による拾得物預り書を当該物件を差し出した者に交付しなければならない。

(公告)
第二条  法第一条第二項 に規定する公告は,拾得した物件の差出を受けた警察署長が,内閣府令で定める様式により,差出を受けた日から起算して十四日間,当該警察署の掲示場に掲示して行わなければならない。
2  警察署長は,内閣府令で定める様式による拾得物一覧簿を当該警察署に備えつけ,これを何時でも随意関係者に閲覧させることにより,前項の規定による掲示に代えることができる。
3  警察署長は,前二項の規定による公告に係る物件のうち特に貴重な物件と認められるものについては,第一項の規定による公告の期間が満了し,又は前項の拾得物一覧簿に拾得に関し記載した日から起算して十四日を経過しても,なお遺失者又は所有者その他当該物件の回復の請求権を有する者(以下「遺失者等」という。)の氏名又は居所を知ることができないときは,さらに公告の要旨を官報又は新聞紙に掲載する措置をとらなければならない。

(拾得物件の返還)
第三条  警察署長は,遺失者等から物件の返還を求められたときは,内閣府令で定める様式による受領書と引換に返還しなければならない。この場合において,警察署長は,遺失者等にその氏名及び住所を証するに足りる書類を提示させる等の方法によつて遺失者等であることを証明させなければならない。
2  警察署長は,前項の規定により遺失者等に物件を返還する場合は,当該遺失者等の氏名及び住所を拾得者(法第十条第二項に規定する占有者がある場合における占有者を含む。以下この条において同じ。)に通知しなければならない。ただし,拾得物に関する権利をあらかじめ放棄し,若しくは失つている拾得者,遺失者等から既に報労金を給された拾得者又は居所が判明しないため通知できない拾得者に対しては,通知することを要しない。

(法定期間内に遺失者等の知れない場合における拾得者に対する通知等)
第四条  警察署長は,その保管する物件につき,民法 (明治二十九年法律第八十九号)第二百四十条 に規定する期間内に遺失者等の知れないときは,その旨を拾得者(法第十条第二項 に規定する占有者が同条第四項 の規定により拾得物に関する権利を取得する場合は,占有者とする。以下この条及び第九条第二項において同じ。)に通知しなければならない。ただし,拾得物に関する権利をあらかじめ放棄し,若しくは失つている拾得者又は居所が判明しないため通知できない拾得者に対しては,通知することを要しない。
2  警察署長は,遺失者等が知れない場合において拾得者が所有権を取得することとなるべき期日をあらかじめ第一条第二項の拾得物預り書に記載することにより,前項の通知に代えることができる。
3  警察署長は,前二項の規定による通知により拾得者から物件の交付を求められたときは,内閣府令で定める様式による受領書と引換に交付しなければならない。前条第一項後段の規定は,この場合について準用する。

遺失物取扱規則の関連条文

(定義)
第二条  この規則において「遺失者等」とは,遺失者又は所有者その他の物件回復の請求権を有する者をいう。
2  この規則において「交番等」とは,次に掲げる施設をいう。
一  交番及び駐在所
二  警備派出所のうち,交番に準じて遺失物の取扱いを行う必要があるものとして警視 総監又は道府県警察本部長(以下「警察本部長」という。)が指定したもの
三  警視庁若しくは道府県警察本部(以下「警察本部」という。)又は方面本部に設けられた鉄道警察隊,高速道路交通警察隊その他の組織の施設のうち,交番に準じて遺失物の取扱いを行う必要があるものとして警察本部長が指定したもの

(拾得物の受理等の措置)
第四条  交番等において拾得物を受理したときは,拾得物の種類及び数量,拾得日時,拾得場所その他必要な事項(以下「拾得物の種類等」という。)を警察署に報告するとともに,警察署に備え付けられた施行規則第二条第二項 に規定する様式の拾得物一覧簿(以下「拾得物一覧簿」という。)の当該拾得物に係る受理番号を照会して,令第一条第二項 の拾得物預り書(以下「拾得物預り書」という。)及び別記様式第一号の拾得物控書を作成し,拾得物預り書を拾得物を差し出した者(以下「差出者」という。)に交付しなければならない。
2  交番等においては,受理に係る拾得物を,拾得物控書とともに,速やかに,警察署に送付しなければならない。ただし,これにより難い特別の事情があるときは,警察署長の指揮を受けて,必要な措置をとるものとする。
3  警察署において拾得物を受理したときは,拾得物預り書及び拾得物控書を作成して,拾得物預り書を差出者に交付しなければならない。

(遺失届の有無の調査)
第十一条  交番等において拾得物を受理したときは,警察署に,遺失届一覧簿(他署届出遺失届一覧簿を含む。次項及び第十五条において同じ。)に記載された当該拾得物に係る遺失届の有無を照会するものとする。
2  警察署において,第七条第一項又は第三項の記載を行うときは,遺失届一覧簿に記載された当該拾得物に係る遺失届の有無を確認するものとする。

(拾得物の有無の調査)
第十二条  交番等において遺失届を受理したときは,警察署に,拾得物一覧簿(他署差出拾得物一覧簿を含む。次項及び第十五条において同じ。)に記載された当該遺失届に係る拾得物の有無を照会するものとする。
2  警察署において,第十条第一項又は第三項の記載を行うときは,拾得物一覧簿に記載された当該遺失届に係る拾得物の有無を確認するものとする。

(高額物件等を拾得物として受理した場合の調査)
第十三条  警察署長は,高額物件等(十万円以上の現金,額面金額十万円以上の有価証券,見積価格十万円以上の物品その他警察本部長の指定する貴重な物件をいう。以下同じ。)を拾得物として受理したときは,速やかに,警察本部に当該物件に係る拾得物控書の写しを送付するとともに,当該物件に係る遺失届出書の写しが,次条第一項又は第二項の規定により警察本部に送付されているか否かを照会するものとする。ただし,当該物件に係る遺失者等が判明しているときは,この限りでない。
2  前項の場合において,送付を受けた拾得物控書の写しに係る物件の拾得場所が,他の都道府県警察の管轄区域内にあるときは,拾得物控書の写しの送付を受けた警察本部は,速やかに,拾得場所を管轄する都道府県警察の警察本部に拾得物控書の写しを送付するとともに,当該拾得物控書の写しに対応する遺失届出書の写しが,次条第一項又は第二項の規定により当該拾得場所を管轄する都道府県警察の警察本部に送付されているか否かを照会するものとする。

(高額物件等に係る遺失届を受理した場合の調査等)
第十四条  警察署長は,高額物件等に係る遺失届を受理したときは,速やかに,警察本部に当該物件に係る遺失届出書の写しを送付するとともに,当該物件に係る拾得物控書の写しが,前条第一項又は第二項の規定により警察本部に送付されているか否かを照会するものとする。ただし,当該物件が拾得物として受理されている事実が判明しているときは,この限りでない。
2  前項の場合において,送付を受けた遺失届出書の写しに係る物件の遺失場所が,他の都道府県警察の管轄区域内にあるときは,遺失届出書の写しの送付を受けた警察本部は,速やかに,遺失場所を管轄する都道府県警察の警察本部に遺失届出書の写しを送付するとともに,当該遺失届出書の写しに対応する拾得物控書の写しが,前条第一項又は第二項の規定により当該遺失場所を管轄する都道府県警察の警察本部に送付されているか否かを照会するものとする。
3  警察署長は,逸走の家畜,火薬類その他の物件で早期に発見しなければ地域住民に危険を及ぼすおそれがあるものに係る遺失届を受理した場合において,必要と認めるときは,警察本部通信指令室に対する手配の依頼その他の措置をとるものとする。

(その他の措置)
第十五条  警察署においては,拾得物を綿密に調査するとともに,遺失届一覧簿と拾得物一覧簿とを随時照合することにより,拾得物の遺失者等への返還に努めるものとする。
(遺失者等が判明したときの措置)
第十九条  警察署長は,その保管する拾得物について遺失者等が判明したときは,当該遺失者等に対し,速やかに,拾得物の返還に係る手続を行う窓口,当該拾得物について法第三条 の費用及び法第四条 の報労金を弁償する義務がある旨並びに法第三条 の費用及び法第四条 の報労金を請求する権利を有する者の氏名,住所等を通知するものとする。

(拾得物の返還及び引渡しに係る手続を行う窓口)
第二十条  遺失者等に対する拾得物の返還に係る手続並びに法及び民法第二百四十条 又は第二百四十一条 の規定により拾得物の所有権を取得した者(以下「権利取得者」という。)に対する当該拾得物の引渡し(以下「拾得物の引渡し」という。)に係る手続は,警察署(これに代わる警察施設を警察署長が指定したときは,その施設とする。次条において同じ。)において行うものとする。
2  前項の規定にかかわらず,交番等において拾得物を保管中に当該拾得物に係る遺失者等が拾得物の返還を求めて交番等を来訪したときは,令第三条第一項 の証明が得られる場合に限り,警察署長の指揮を受けて,交番等において拾得物の返還に係る手続を行うことができる。

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芦部憲法第4版(高橋補訂)の発刊について

2007-03-12 20:16:41 | Weblog
岩波書店 4年ぶりにアップデートしたロングセラー

 第5版,あるかが問題。ひょっとしたら・・・。

国民投票法案,憲法記念日前の成立にこだわらず・首相 NIKKEI NET


日本国憲法の関連条文

第九十六条  この憲法の改正は,各議院の総議員の三分の二以上の賛成で,国会が,これを発議し,国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には,特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において,その過半数の賛成を必要とする。2  憲法改正について前項の承認を経たときは,天皇は,国民の名で,この憲法と一体を成すものとして,直ちにこれを公布する。

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失念株の分割に係る不当利得返還請求について

2007-03-12 13:55:07 | Weblog
「失念株」売却益,名義人に返還命じる・最高裁判決 NIKKEI NET

 原審が,「本件新株式は上場株式であり代替性を有するから,被上告人の得た利益及び上告人らが受けた損失は,いずれも本件株式分割により増加した本件新株式と同一の銘柄及び数量の株式である。したがって,上告人らが本件新株券そのものの返還に代えて本件新株式の価格の返還を求めることは許されるが,その場合に返還を請求できる金額は,売却時の時価によるのでなければ公平に反するという特段の事情がない限り,被上告人が市場において本件新株式と同一の銘柄及び数量の株式を調達して返還する際の価格,すなわち事実審の口頭弁論終結時又はこれに近い時点における本件新株式の価格によって算定された価格相当額である。」としたところ,最高裁は,次のように述べ,原審の上記判断を是認できないとした。

 不当利得の制度は,ある人の財産的利得が法律上の原因ないし正当な理由を欠く場合に,法律が,公平の観念に基づいて,受益者にその利得の返還義務を負担させるものである(最高裁昭和45年(オ)第540号同49年9月26日第一小法廷判決・民集28巻6号1243頁参照)。
 受益者が法律上の原因なく代替性のある物を利得し,その後これを第三者に売却処分した場合,その返還すべき利益を事実審口頭弁論終結時における同種・同等・同量の物の価格相当額であると解すると,その物の価格が売却後に下落したり,無価値になったときには,受益者は取得した売却代金の全部又は一部の返還を免れることになるが,これは公平の見地に照らして相当ではないというべきである。また,逆に同種・同等・同量の物の価格が売却後に高騰したときには,受益者は現に保持する利益を超える返還義務を負担することになるが,これも公平の見地に照らして相当ではなく,受けた利益を返還するという不当利得制度の本質に適合しない。
 そうすると,受益者は,法律上の原因なく利得した代替性のある物を第三者に売却処分した場合には,損失者に対し,原則として,売却代金相当額の金員の不当利得返還義務を負うと解するのが相当である。


 原審の判断中にも「特段の事情がない限り」との留保はあるが,不当利得制度の趣旨などからすれば,本最判の方がより理解しやすいように思われる。最高裁は,上記規範に基づき,本件においては原則と異なる解釈をすべき事情はうかがわれないとして,新株式に係る利得については上告人側の主張を全面的に認めている。
因みに,譲渡した名義人が分割に係る新株式を売却したのは,株式分割の実施から約半年後のこと。

 なお,判決中に,「大審院昭和18年(オ)第521号同年12月22日判決・法律新聞4890号3頁は,以上と抵触する限度において,これを変更すべきである。」とあるが,この大審院判決は,松坂民法の記述から推察するに,利得が代替性を有する場合は価格ではなく当該代替物を返還すべき,としたもののようだ。

日本証券業協会 株式の名義書換失念の場合における権利の処理に関する規則(統一慣習規則第2号)

判例検索システム 平成19年03月08日 不当利得返還請求事件


民法の関連条文

(不当利得の返還義務)
第七百三条  法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け,そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は,その利益の存する限度において,これを返還する義務を負う。

(悪意の受益者の返還義務等)
第七百四条  悪意の受益者は,その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において,なお損害があるときは,その賠償の責任を負う。

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認知症患者と北海道との売買契約について

2007-03-11 19:11:42 | Weblog
認知症女性:所有の土地,建物 北海道が委任状なく買収 MSN毎日インタラクティブ

 施設の記録に重い病態が現れたのが02年2月で,成年後見開始の審判が行われたのが05年11月。随分とタイムラグがある。女性の家族関係等はわからないが,適時に成年後見開始の申立てが行われていれば,という憾みがどうしても残る。
因みに,市町村長による成年後見の申立要件を緩和する厚労省の通知が都道府県・指定都市・中核市 民生主管部(局)長宛てに発出されたのは2005年7月。


老人福祉法の関連条文

(審判の請求)
第三十二条 市町村長は,六十五歳以上の者につき,その福祉を図るため特に必要があると認めるときは,民法第七条,第十一条,第十三条第二項,第十五条第一項,第十七条第一項,第八百七十六条の四第一項又は第八百七十六条の九第一項に規定する審判の請求をすることができる。

「高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」の関連条文

(財産上の不当取引による被害の防止等)
第二十七条 市町村は,養護者,高齢者の親族又は養介護施設従事者等以外の者が不当に財産上の利益を得る目的で高齢者と行う取引(以下「財産上の不当取引」という。)による高齢者の被害について,相談に応じ,若しくは消費生活に関する業務を担当する部局その他の関係機関を紹介し,又は高齢者虐待対応協力者に,財産上の不当取引による高齢者の被害に係る相談若しくは関係機関の紹介の実施を委託するものとする。
2 市町村長は,財産上の不当取引の被害を受け,又は受けるおそれのある高齢者について,適切に,老人福祉法第三十二条の規定により審判の請求をするものとする。

(成年後見制度の利用促進)
第二十八条 国及び地方公共団体は,高齢者虐待の防止及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護並びに財産上の不当取引による高齢者の被害の防止及び救済を図るため,成年後見制度の周知のための措置,成年後見制度の利用に係る経済的負担の軽減のための措置等を講ずることにより,成年後見制度が広く利用されるようにしなければならない。

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社会福祉法人に係る監査の厳格化について

2007-03-10 20:42:24 | Weblog
社会福祉法人,監査厳格に・厚労省 NIKKEI NET

 現行の厚労省通知「社会福祉法人の認可等の適正化並びに社会福祉法人及び社会福祉施設に対する指導監督の徹底について」には次のようにある。

 法人監査は,一般監査と特別監査とすること。このうち一般監査は,運営に問題のない法人については実地監査を2年に1回としても差し支えないこと。ただし,実地監査を行わない年にあっては書面による監査を行うこと。
 また,特別監査は,問題を有する法人を対象に随時実施するものとすること。


記事には「2年ごとだった実地監査」とあるが,現在も,「2年に1回」の一般監査は「運営に問題のない法人」のみでは。して見ると,今般の改定,緩めるところは緩めたうえで,あるべき姿に立ち返るもの,という言い方もできそう。

独立行政法人福祉医療機構 社会福祉法人経営の現状と課題(概要版)


社会福祉法の関連条文

(目的)
第一条  この法律は,社会福祉を目的とする事業の全分野における共通的基本事項を定め,社会福祉を目的とする他の法律と相まつて,福祉サービスの利用者の利益の保護及び地域における社会福祉(以下「地域福祉」という。)の推進を図るとともに,社会福祉事業の公明かつ適正な実施の確保及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図り,もつて社会福祉の増進に資することを目的とする。

(一般的監督)
第五十六条  厚生労働大臣又は都道府県知事若しくは指定都市若しくは中核市の長は,法令,法令に基づいてする行政庁の処分及び定款が遵守されているかどうかを確かめるため必要があると認めるときは,社会福祉法人からその業務又は会計の状況に関し,報告を徴し,又は当該職員に,社会福祉法人の業務及び財産の状況を検査させることができる。2  所轄庁は,社会福祉法人が,法令,法令に基づいてする行政庁の処分若しくは定款に違反し,又はその運営が著しく適正を欠くと認めるときは,当該社会福祉法人に対し,期限を定めて,必要な措置を採るべき旨を命ずることができる。
3  社会福祉法人が前項の命令に従わないときは,所轄庁は,当該社会福祉法人に対し,期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命じ,又は役員の解職を勧告することができる。
4  所轄庁は,社会福祉法人が,法令,法令に基づいてする行政庁の処分若しくは定款に違反した場合であつて他の方法により監督の目的を達することができないとき,又は正当の事由がないのに一年以上にわたつてその目的とする事業を行わないときは,解散を命ずることができる。
5  所轄庁は,第三項の規定により役員の解職を勧告しようとする場合には,当該社会福祉法人に,所轄庁の指定した職員に対して弁明する機会を与えなければならない。この場合においては,当該社会福祉法人に対し,あらかじめ,書面をもつて,弁明をなすべき日時,場所及びその勧告をなすべき理由を通知しなければならない。
6  前項の通知を受けた社会福祉法人は,代理人を出頭させ,かつ,自己に有利な証拠を提出することができる。
7  第五項の規定による弁明を聴取した者は,聴取書及び当該勧告をする必要があるかどうかについての意見を付した報告書を作成し,これを所轄庁に提出しなければならない。

(公益事業又は収益事業の停止)
第五十七条  所轄庁は,第二十六条第一項の規定により公益事業又は収益事業を行う社会福祉法人につき,次の各号のいずれかに該当する事由があると認めるときは,当該社会福祉法人に対して,その事業の停止を命ずることができる。
一  当該社会福祉法人が定款で定められた事業以外の事業を行うこと。
二  当該社会福祉法人が当該収益事業から生じた収益を当該社会福祉法人の行う社会福祉事業及び公益事業以外の目的に使用すること。
三  当該公益事業又は収益事業の継続が当該社会福祉法人の行う社会福祉事業に支障があること。

(助成及び監督)
第五十八条  国又は地方公共団体は,必要があると認めるときは,厚生労働省令又は当該地方公共団体の条例で定める手続に従い,社会福祉法人に対し,補助金を支出し,又は通常の条件よりも当該社会福祉法人に有利な条件で,貸付金を支出し,若しくはその他の財産を譲り渡し,若しくは貸し付けることができる。ただし,国有財産法 (昭和二十三年法律第七十三号)及び地方自治法第二百三十七条第二項 の規定の適用を妨げない。
2  前項の規定により,社会福祉法人に対する助成がなされたときは,厚生労働大臣又は地方公共団体の長は,その助成の目的が有効に達せられることを確保するため,当該社会福祉法人に対して,次に掲げる権限を有する。
一  事業又は会計の状況に関し報告を徴すること。
二  助成の目的に照らして,社会福祉法人の予算が不適当であると認める場合において,その予算について必要な変更をすべき旨を勧告すること。
三  社会福祉法人の役員が法令,法令に基づいてする行政庁の処分又は定款に違反した場合において,その役員を解職すべき旨を勧告すること。
3  国又は地方公共団体は,社会福祉法人が前項の規定による措置に従わなかつたときは,交付した補助金若しくは貸付金又は譲渡し,若しくは貸し付けたその他の財産の全部又は一部の返還を命ずることができる。
4  第五十六条第五項から第七項までの規定は,第二項第三号の規定により解職を勧告し,又は前項の規定により補助金若しくは貸付金の全部若しくは一部の返還を命令する場合に準用する。

(所轄庁への届出)
第五十九条  社会福祉法人は,毎会計年度終了後三月以内に,事業の概要その他の厚生労働省令で定める事項を,所轄庁に届け出なければならない。
2  第四十三条第四項の規定は,前項の場合に準用する。

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反倫理性等の低い近親婚について

2007-03-09 22:23:36 | Weblog
asahi.com おじ・めいの近親婚でも遺族年金の受給権 最高裁初判断

 原審が不支給処分を相当とした理由は,概略,以下の3つ。
第1に,遺族厚生年金は社会保障的性格が強い給付であり,内縁関係にある者の受給に係る資格判断(厚生年金保険法第3条第2項参照)にあたっては公益的要請を無視できないこと。
第2に,内縁関係にある者の受給に係る資格判断にあたっては,婚姻関係の一般法である民法の規定及び趣旨が尊重されるべきで,厚生年金保険法は民法の定める婚姻法秩序に反するような内縁関係にある者まで保護する趣旨ではないこと。
第3に,民法の近親婚の禁止規定に反するような婚姻関係の反倫理性,反社会性は,時の経過によって治癒されることはあり得ず,厚生年金保険法はそのような関係にある者を公的支給を受給し得る者として保護することを予定していないこと。
最高裁は,直系血族間及び2親等の傍系血族間の内縁関係と3親等の傍系血族間の内縁関係は反倫理性,反社会性という点では基本的に変わりはないとしつつ,次のように述べ,上記3番目の理由は是認できないとした。

 もっとも,我が国では,かつて,農業後継者の確保等の要請から親族間の結婚が少なからず行われていたことは公知の事実であり,前記事実関係によれば,上告人の周囲でも,前記のような地域的特性から親族間の結婚が比較的多く行われるとともに,おじと姪との間の内縁も散見されたというのであって,そのような関係が地域社会や親族内において抵抗感なく受け容れられている例も存在したことがうかがわれるのである。このような社会的,時代的背景の下に形成された三親等の傍系血族間の内縁関係については,それが形成されるに至った経緯,周囲や地域社会の受け止め方,共同生活期間の長短,子の有無,夫婦生活の安定性等に照らし,反倫理性,反公益性が婚姻法秩序維持等の観点から問題とする必要がない程度に著しく低いと認められる場合には,上記近親者間における婚姻を禁止すべき公益的要請よりも遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するという法の目的を優先させるべき特段の事情があるものというべきである。したがって,このような事情が認められる場合,その内縁関係が民法により婚姻が禁止される近親者間におけるものであるという一事をもって遺族厚生年金の受給権を否定することは許されず,上記内縁関係の当事者は法3条2項にいう「婚姻の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に該当すると解するのが相当である。

 記事にもあるとおり,反対意見を述べた横尾裁判官は元社会保険庁長官。反対意見の中で,民法第734条第1項は何ら留保を置かず近親婚を禁止しているのであり,各婚姻関係間において,反倫理性,反社会性の大小を論ずることには躊躇せざるを得ないと述べている。

 一読して,婚姻関係に至った経緯や生活状況等に係る事実を丁寧に拾っているという印象。

判例検索システム 平成19年03月08日 遺族厚生年金不支給処分取消請求事件


民法の関連条文

(近親者間の婚姻の禁止)
第七百三十四条  直系血族又は三親等内の傍系血族の間では,婚姻をすることができない。ただし,養子と養方の傍系血族との間では,この限りでない。
2  第八百十七条の九の規定により親族関係が終了した後も,前項と同様とする。

(婚姻の届出)
第七百三十九条  婚姻は,戸籍法 (昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって,その効力を生ずる。
2  前項の届出は,当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で,又はこれらの者から口頭で,しなければならない。

(婚姻の届出の受理)
第七百四十条  婚姻の届出は,その婚姻が第七百三十一条から第七百三十七条まで及び前条第二項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ,受理することができない。

厚生年金保険法の関連条文

(この法律の目的)
第一条  この法律は,労働者の老齢,障害又は死亡について保険給付を行い,労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とし,あわせて厚生年金基金がその加入員に対して行う給付に関して必要な事項を定めるものとする。

(用語の定義)
第三条  この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
一  保険料納付済期間 国民年金法 (昭和三十四年法律第百四十一号)第五条第二項 に規定する保険料納付済期間をいう。
二  保険料免除期間 国民年金法第五条第三項 に規定する保険料免除期間をいう。
三  報酬 賃金,給料,俸給,手当,賞与その他いかなる名称であるかを問わず,労働者が,労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし,臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは,この限りでない。
四  賞与 賃金,給料,俸給,手当,賞与その他いかなる名称であるかを問わず,労働者が労働の対償として受けるすべてのもののうち,三月を超える期間ごとに受けるものをいう。
2  この法律において,「配偶者」,「夫」及び「妻」には,婚姻の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。

(受給権者)
第五十八条  遺族厚生年金は,被保険者又は被保険者であつた者が次の各号のいずれかに該当する場合に,その者の遺族に支給する。ただし,第一号又は第二号に該当する場合にあつては,死亡した者につき,死亡日の前日において,死亡日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり,かつ,当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは,この限りでない。
一  被保険者(失踪の宣告を受けた被保険者であつた者であつて,行方不明となつた当時被保険者であつたものを含む。)が,死亡したとき。
二  被保険者であつた者が,被保険者の資格を喪失した後に,被保険者であつた間に初診日がある傷病により当該初診日から起算して五年を経過する日前に死亡したとき。
三  障害等級の一級又は二級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が,死亡したとき。
四  老齢厚生年金の受給権者又は第四十二条第二号に該当する者が,死亡したとき。
2  前項の場合において,死亡した被保険者又は被保険者であつた者が同項第一号から第三号までのいずれかに該当し,かつ,同項第四号にも該当するときは,その遺族が遺族厚生年金を請求したときに別段の申出をした場合を除き,同項第一号から第三号までのいずれかのみに該当し,同項第四号には該当しないものとみなす。

(遺族)
第五十九条  遺族厚生年金を受けることができる遺族は,被保険者又は被保険者であつた者の配偶者,子,父母,孫又は祖父母(以下単に「配偶者」,「子」,「父母」,「孫」又は「祖父母」という。)であつて,被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(失踪の宣告を受けた被保険者であつた者にあつては,行方不明となつた当時。以下この条において同じ。)その者によつて生計を維持したものとする。ただし,妻以外の者にあつては,次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
一  夫,父母又は祖父母については,五十五歳以上であること。
二  子又は孫については,十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にあるか,又は二十歳未満で障害等級の一級若しくは二級に該当する障害の状態にあり,かつ,現に婚姻をしていないこと。
2  前項の規定にかかわらず,父母は,配偶者又は子が,孫は,配偶者,子又は父母が,祖父母は,配偶者,子,父母又は孫が遺族厚生年金の受給権を取得したときは,それぞれ遺族厚生年金を受けることができる遺族としない。
3  被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時胎児であつた子が出生したときは,第一項の規定の適用については,将来に向つて,その子は,被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持していた子とみなす。
4  第一項の規定の適用上,被保険者又は被保険者であつた者によつて生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は,政令で定める。

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判決の言い直しについて

2007-03-08 20:50:45 | Weblog
判決言い直し:求刑より重い,と指摘受け 奈良地裁裁判官 MSN毎日インタラクティブ

 訓戒の後の言い直しはちょっと格好が悪い。

 裁判は告知により外部的にも成立する。裁判機関もこれに拘束され,原則として撤回・変更することはできないが,この点に関連し,最判S51.11.4は次のように判示している。

 ところで,判決の宣告は,裁判長(一人制の裁判所の場合には,これを構成する裁判官)が判決の主文及び理由を朗読し,又は主文の朗読と同時に理由の要旨を告げることによって行うものであるが(刑訴規則三五条),裁判長がいったんこれらの行為をすれば直ちに宣告手続が終了し,以後は宣告をし直すことが一切許されなくなるものと解すべきではない。判決の宣告は,全体として一個の手続であって,宣告のための公判期日が終了するまでは,完了するものではない。また,判決は,事件に対する裁判所の最終的な判断であって,宣告のための公判期日が終了するまでは,終局的なものとはならない。そうしてみると,判決は,宣告のための公判期日が終了して初めて当の裁判所によっても変更することができない状態となるものであり,それまでの間は,判決書又はその原稿の朗読を誤った場合にこれを訂正することはもとより(最高裁昭和四五年(あ)第二二七四号同四七年六月一五日第一小法廷判決・刑集二六巻五号三四一頁参照),本件のようにいったん宣告した判決の内容を変更してあらためてこれを宣告することも,違法ではないと解するのが相当である。このように解することの妨げとなる法令の定めのないことはいうまでもなく,また,このように解することにより被告人その他の当事者に不当な不利益を与えたり,手続の明確性・安定性を害するものでもない。

 なお,この最判の事案,被告人に対し,懲役1年6月,保護観察付き執行猶予5年を宣告し,その際,前刑の執行猶予期間が既に経過しているので保護観察付きの執行猶予にしたことなどを説示したところ,書記官から犯行が前刑の保護観察期間中に行われたものである点を指摘され,約5分後に先に宣告した主文は間違いであった旨を告げ,あらためて懲役1年6月の実刑を宣告したというものである。
目出度し,目出度しと言いたいところだが,第一審の裁判官が自ら説示しているとおり,前刑は第一審の判決宣告期日以前に執行猶予期間が経過し,刑の言い渡しは効力を失っている。執行猶予を言い渡すことに法律上の支障はなかったのである。書記官から突然言われ,裁判官,余程動揺したのであろう。何事も慌ててはいけない。
第一小法廷は,上記の後,このままでは著しく正義に反するとして第一審判決及び原判決ともに破棄し,当初の第一審と同じく,懲役1年6月,保護観察付き執行猶予5年と判決している。因みに,裁判長は団藤裁判官。

判例検索システム 昭和51年11月04日 窃盗被告事件


刑法の関連条文

(執行猶予)
第二十五条  次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは,情状により,裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間,その執行を猶予することができる。
一  前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け,情状に特に酌量すべきものがあるときも,前項と同様とする。ただし,次条第一項の規定により保護観察に付せられ,その期間内に更に罪を犯した者については,この限りでない。

(保護観察)
第二十五条の二  前条第一項の場合においては猶予の期間中保護観察に付することができ,同条第二項の場合においては猶予の期間中保護観察に付する。
2  保護観察は,行政官庁の処分によって仮に解除することができる。
3  保護観察を仮に解除されたときは,前条第二項ただし書及び第二十六条の二第二号の規定の適用については,その処分を取り消されるまでの間は,保護観察に付せられなかったものとみなす。

(猶予期間経過の効果)
第二十七条  刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは,刑の言渡しは,効力を失う。

刑事訴訟法の関連条文

第三百四十二条  判決は,公判廷において,宣告によりこれを告知する。

刑事訴訟規則の関連条文

(裁判の告知)
第三十四条 裁判の告知は,公判廷においては,宣告によつてこれをし,その他の場合には,裁判書の謄本を送達してこれをしなければならない。但し,特別の定のある場合は,この限りでない。

(裁判の宣告)
第三十五条 裁判の宣告は,裁判長がこれを行う。
2 判決の宣告をするには,主文及び理由を朗読し,又は主文の朗読と同時に理由の要旨を告げなければならない。

(謄本,抄本の送付)
第三十六条 検察官の執行指揮を要する裁判をしたときは,速やかに裁判書又は裁判を記載した調書の謄本又は抄本を検察官に送付しなければならない。但し,特別の定のある場合は,この限りでない。
2 前項の規定により送付した抄本が第五十七条第二項から第四項までの規定による判決書又は判決を記載した調書の抄本で懲役又は禁錮の刑の執行指揮に必要なものであるときは,すみやかに,その判決書又は判決を記載した調書の抄本で罪となるべき事実を記載したものを検察官に追送しなければならない。

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附帯私訴に係る手数料について

2007-03-07 21:34:01 | Weblog
賠償請求:犯罪被害者の手数料は一律2千円に 法務省 MSN毎日インタラクティブ

 同じ訴額でも,附帯私訴が利用できる者とそうでない者との間で,訴状等の貼付印紙代に差が生ずることになる。
「平等原則」からすれば,この別異取扱い,全く問題ないわけでもないように思えるが,「裁判所に新たな負担増なし」という実質論を聞くと,なるほど,それなりに納得がいく。


日本国憲法の関連条文

第十四条  すべて国民は,法の下に平等であつて,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない。
2  華族その他の貴族の制度は,これを認めない。
3  栄誉,勲章その他の栄典の授与は,いかなる特権も伴はない。栄典の授与は,現にこれを有し,又は将来これを受ける者の一代に限り,その効力を有する。

第三十二条  何人も,裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

民事訴訟法の関連条文

(訴訟費用の負担の原則)
第六十一条  訴訟費用は,敗訴の当事者の負担とする。

「民事訴訟費用等に関する法律」の関連条文

(趣旨)
第一条  民事訴訟手続,民事執行手続,民事保全手続,行政事件訴訟手続,非訟事件手続,家事審判手続その他の裁判所における民事事件,行政事件及び家事事件に関する手続(以下「民事訴訟等」という。)の費用については,他の法令に定めるもののほか,この法律の定めるところによる。

(申立ての手数料)
第三条  別表第一の上欄に掲げる申立てをするには,申立ての区分に応じ,それぞれ同表の下欄に掲げる額の手数料を納めなければならない。
2  次の各号に掲げる場合には,当該各号の申立てをした者は,訴えを提起する場合の手数料の額から当該申立てについて納めた手数料の額を控除した額の手数料を納めなければならない。
一  民事訴訟法第二百七十五条第二項 又は第三百九十五条 若しくは第三百九十八条第一項 (同法第四百二条第二項 において準用する場合を含む。)の規定により和解又は支払督促の申立ての時に訴えの提起があつたものとみなされたとき。
二  労働審判法 (平成十六年法律第四十五号)第二十二条第一項 (同法第二十三条第二項 及び第二十四条第二項 において準用する場合を含む。)の規定により労働審判手続の申立ての時に訴えの提起があつたものとみなされたとき。
3  一の判決に対して上告の提起及び上告受理の申立てをする場合において,その主張する利益が共通であるときは,その限度において,その一方について納めた手数料は,他の一方についても納めたものとみなす。一の決定又は命令に対して民事訴訟法第三百三十六条第一項 (これを準用し,又はその例による場合を含む。)の規定による抗告の提起及び同法第三百三十七条第二項 (これを準用し,又はその例による場合を含む。)の規定による抗告の許可の申立てをする場合も,同様とする。
4  破産法 (平成十六年法律第七十五号)第二百四十八条第四項 本文の規定により破産手続開始の申立てと同時に免責許可の申立てをしたものとみなされたときは,当該破産手続開始の申立てをした者は,免責許可の申立ての手数料をも納めなければならない。

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