法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

参議院の苦情請願について

2005-10-26 18:28:46 | Weblog
asahi.com: 参院の苦情請願、8年目で初採択 警察判断の説明求める

参院本会議,「苦情請願」を初採択 NIKKEI NET

 請願をされたのは杉並区の80才の男性。内容は,93年に松江市の路上で亡くなった妹さんに関するもの。交通事故の可能性もあったが,死因は内因性くも膜下出血,よって事件性なし,と判断されたようだ。

 それにしても,検察審査会へ申し立てをするも不起訴相当→情報公開で検視調書及び鑑定書を開示請求→元東京都監察医務院長に意見徴求→参議院に苦情請願,とは。身内に関わることとはいえ,ここまでできる人がどれだけいるか。凄い話しである。
請願法第5条は,請願を受けた機関にそれを誠実に処理する義務を課するだけだが,今回は男性の熱い想いに参議院が応えた。

 憲法の教科書などでは,「現代では,国民主権に基づく議会政治が発達し,言論の自由が広く認められるようになり,請願権の意義は相対的に減少している。」(芦部憲法P234)などと説かれているところ。今回のケースは参政権的な意見表明などからは少し離れるが,「請願権も捨てたものではない」を実感させる話し。

何はともあれ,男性の納得いくようなかたちで警察当局の説明がおこなわれることを切に希望する。

参議院HP 請願の提出


日本国憲法の関連条文

第16条  何人も,損害の救済,公務員の罷免,法律,命令又は規則の制定,廃止又は改正その他の事項に関し,平穏に請願する権利を有し,何人も,かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

請願法の関連条文

第5条  この法律に適合する請願は,官公署において,これを受理し誠実に処理しなければならない。

国会法の関連条文

第79条 各議院に請願しようとする者は,議員の紹介により請願書を提出しなければならない。

第80条 請願は,各議院において委員会の審査を経た後これを議決する。
委員会において,議院の会議に付するを要しないと決定した請願は,これを会議に付さない。但し,議員二十人以上の要求があるものは,これを会議に付さなければならない。

第81条 各議院において採択した請願で,内閣において措置するを適当と認めたものは,これを内閣に送付する。
内閣は,前項の請願の処理の経過を毎年議院に報告しなければならない。

第82条 各議院は,各別に請願を受け互に干預しない。

参議院規則の関連条文

第162条 請願書は,請願者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所(住所のない場合は居所)を記載したものでなければならない。

第163条 法人を除いては,総代の名義による請願は,これを受理しない。

第164条 請願書の用語は平穏なものでなければならない。また,その提出は平穏になされなければならない。

第165条 議長は,請願文書表を作り印刷して,毎週一回,これを各議員に配付する。
請願文書表には,請願の趣旨,請願者の住所氏名,紹介議員の氏名及び受理の年月日を記載する。

第166条 請願は,請願文書表の配付と同時に,議長が,これを適当の委員会に付託する。

第167条 裁判官の罷免を求める請願については,議長は,これを委員会に付託しないで裁判官訴追委員会に送付する。

第168条 請願を紹介した議員は,委員会から要求があつたときは,請願の趣旨を説明しなければならない。

第169条 請願書は,議院の議決がなければ,これを印刷配付しない。

第170条 委員会は,審査の結果に従い,次の区別をして,議長に報告書を提出しなければならない。
 1 採択すべきもの
 2 不採択とすべきもの
採択すべきものについては,なお,次の区別をしなければならない。
 1 内閣に送付するを要するもの
 2 内閣に送付するを要しないもの

第171条 委員会において採択すべきものと決定した請願については,委員会は,前条第1項の報告書に付して意見書案を提出することができる。

第172条 委員会において議院の会議に付するを要しないと決定した請願については,委員会は,議長にその旨の報告書を提出しなければならない。
前項の場合において,報告書が提出された日から休会中の期間を除いて七日以内に,議員二十人以上から会議に付する要求がないときは,同項の決定が確定する。

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銀行代理店の解禁に係る改正銀行法の成立について

2005-10-26 11:35:12 | Weblog
改正銀行法:成立,スーパーなど銀行代理店業務参入可能に MSN-Mainichi INTERACTIVE

 本改正により,スーパーや百貨店などが銀行の代理店となり,個人向け融資や預金口座の開設などをおこなうことができるようになる。代理店への参入は許可制とのこと。銀行にとってはネットワークの拡大,利用者にとっては利便性の向上,という意味でそれぞれメリットがある。
個人情報の保護などとの関係で,適格性の審査がどのようにおこなわれるものか,興味深い。さすがに,雨後の筍のように・・・,というわけにはいくまい。

 秋田県は,昭和44年に富士銀行が撤退して以来,都市銀行は第一勧銀だけ。銀行代理店の解禁に対する期待は大きいのではないだろうか。地元金融機関もウカウカとはしていられない。
なお,銀行代理店の解禁については,全銀協の前田会長が,18日の記者会見で発言されている。

全国銀行協会web site 前田会長記者会見(H17.10.18)

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秋田市の国勢調査票の紛失について

2005-10-26 08:17:59 | Weblog
11世帯の調査票を紛失/秋田市の国勢調査員11人 - さきがけonTheWeb

 約1660人の調査員のうち,580人が一般市民による公募調査員とのこと。3分の1以上である。秋田市の採用基準はどのようなものなのだろうか。このあたりは,統計法第12条第2項により,命令(地方公共団体の長又は教育委員会の定める規則を含む)に委任されている部分。

 市の国勢調査実施本部は,調査員に対し,紛失した場合は紛失被害世帯に謝罪するとともに警察に紛失届を出すよう指導しているという。しかし,記事のいうとおり,採用を決定した機関としての責任が曖昧のように思われる。

 今回の国政調査は簡易調査だったが,次回は大規模調査。「暇つぶしに国勢調査員」ということもないと思うが,調査票の保管等については,遺漏なきよう万全を期していただきたいもの。

法律の周辺 2005年9月1日 2005年 国勢調査について


統計法の関連条文

(指定統計)
第二条  この法律において指定統計とは,政府若しくは地方公共団体が作成する統計又はその他のものに委託して作成する統計であつて総務大臣が指定し,その旨を公示した統計をいう。

(国勢調査)
第四条  政府が本邦に居住している者として政令で定める者について行う人口に関する全数調査で,当該調査に係る統計につき総務大臣が指定し,その旨を公示したものは,これを国勢調査という。
2  国勢調査は,これを十年ごとに行わなければならない。但し,国勢調査を行つた年から五年目に当る年には,簡易な方法により国勢調査を行うものとする。
3  総務大臣は,必要があると認めたときは,前項の期間の中間において,臨時の国勢調査を行うことができる。

(統計調査員)
第十二条  政府,地方公共団体の長又は教育委員会は,その行う指定統計調査のために必要があるときは,統計調査員を置くことができる。
2  統計調査員に関する事項は,命令(地方公共団体の長又は教育委員会の定める規則を含む。)でこれを定める。

(秘密の保護)
第十四条  指定統計調査,第八条第一項の規定により総務大臣に届け出られた統計調査(以下「届出統計調査」という。)及び統計報告調整法 の規定により総務大臣の承認を受けた統計報告の徴集(以下「報告徴集」という。)の結果知られた人,法人又はその他の団体の秘密に属する事項については,その秘密は,保護されなければならない。

第十五条  何人も,指定統計を作成するために集められた調査票を,統計上の目的以外に使用してはならない。
2  前項の規定は,総務大臣の承認を得て使用の目的を公示したものについては,これを適用しない。

第十五条の二  何人も,届出統計調査(地方公共団体が行うものを除く。次条において同じ。)によつて集められた調査票及び報告徴集によつて得られた統計報告(統計報告調整法第四条第二項 に規定する申請書に記載された専ら統計を作成するために用いられる事項に係る部分に限る。)を,統計上の目的以外に使用してはならない。
2  前項の規定は,届出統計調査又は報告徴集の実施者が,被調査者又は報告を求められた者を識別することができない方法で調査票又は統計報告を使用し,又は使用させることを妨げるものではない。

(調査票等の管理)
第十五条の三  指定統計調査,届出統計調査及び報告徴集の実施者は,統計調査によつて集められた調査票,報告徴集によつて得られた統計報告その他の関係書類を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない。

(地方公共団体の責務)
第十五条の四  地方公共団体は,届出統計調査によつて集められた調査票その他の関係書類の適正な使用及び管理に努めなければならない。

第十九条の二  統計官,統計主事その他指定統計調査に関する事務に従事する者,統計調査員又はこれらの職に在つた者が,その職務執行に関して知り得た人,法人又はその他の団体の秘密に属する事項を,他に漏らし,又は窃用したときは,これを一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2  前項に掲げる者が,総務大臣の承認を得た場合のほか集計された結果を,第七条の規定により定められた公表期日以前に,他に漏らし,又は窃用したときは,これを十万円以下の罰金に処する。
3  職務上前二項の事項を知り得た第一項に掲げる者以外の公務員又は公務員であつた者が,前二項の行為をしたときもまた当該各項の例による。

統計法施行令の関連条文

(統計調査員の職務)
第三条  法第十二条 に定める統計調査員は,その設置に関する事務を行う各行政機関若しくは地方公共団体の長又は教育委員会の指揮監督を受け,指定統計調査の調査票の配付及び取集その他指定統計調査に関する事務に従事する。

国家賠償法の関連条文

第一条  国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは,国又は公共団体が,これを賠償する責に任ずる。
2  前項の場合において,公務員に故意又は重大な過失があつたときは,国又は公共団体は,その公務員に対して求償権を有する。

民法の関連条文

(使用者等の責任)
第七百十五条  ある事業のために他人を使用する者は,被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし,使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき,又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは,この限りでない。
2  使用者に代わって事業を監督する者も,前項の責任を負う。
3  前二項の規定は,使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

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高齢者虐待防止法案の今国会への提出について

2005-10-25 18:26:02 | Weblog
<高齢者虐待防止法案>与野党が今国会に共同提出へ 毎日新聞

殴るける,年金使い込む…高齢者虐待防げ! YOMIURI ONLINE

 今日の自民党の総務会で高齢者虐待防止・介護者支援法案の今国会への提出が了承された模様である。民主党・公明党の同意も得られており,今国会での成立を目指すとのこと。
高齢者虐待防止法案は,高齢者虐待の防止に向けた自治体の責務のほか,高齢者の虐待を発見した者の通報義務や通報を受けた市町村の家庭への立ち入りなどについても規定している。市町村長の成年後見等の申し立てとも関係しており,成立が待望されている。

 高齢者虐待防止法案については,先の通常国会においても,7月29日に民主党案が,8月5日に自民党案がそれぞれ提出されていたが,8月8日の衆議院解散により,ともに廃案になっていた。

法律の周辺 2005年9月18日 敬老の日と高齢者の虐待について

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TBSの企業価値評価特別委員会の判断について

2005-10-25 16:59:47 | Weblog
TBS統合 「敵対的」なら融資せず 楽天に主力行通告 (産経新聞) - goo ニュース

 楽天にとっても,金融機関にとっても,企業価値評価特別委員会の判断が「神の声」「天の声」的重みを持ちそうな気配。
企業価値評価特別委員会の判断を受け入れるにせよ,拒絶するにせよ,経営陣の判断は固有のそれとして評価・批判の対象とされるべきは当然。ただ,会社法上責任のない「公正な第三者機関の判断」がブラックボックス化,あるいは聖域化されることについては今後議論を呼びそう。

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秋田県の自治体再編地図について

2005-10-25 16:57:57 | Weblog
あきた自治体再編 - さきがけonTheWeb

 こういう便利な地図があったとは。
昨年まで69市町村(9市50町10村)あった自治体は,来年3月末時点で25市町村(13市9町3村)に。こう見ると,能代・山本地域と南秋地域の再編の遅れが一目瞭然。自主自立の道を選択したのは,鹿角市,小坂町,羽後町,東成瀬村。

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TBSの買収防衛策について

2005-10-25 07:22:47 | Weblog
TBS株:諸井委員長,楽天の行為は「敵対的買収」 毎日新聞

楽天社長,TBSの買収防衛策発動をけん制・株主訴訟も

 TBSの企業価値評価特別委員会は,役員会から諮問を受け,買収防衛策の発動が必要かを判断し,役員会に勧告する役割を担う。企業価値研究会が取りまとめた報告書でいう「独立社外チェック型」の一類型。
TBSは,新株予約権の行使を中心とした買収防衛策を整備しているということで,件の研究会が提示する「買収防衛策の平時の導入」という要件は外形的には充たしているようだ。
ただ,現在のところ,楽天の株式保有比率は防衛策発動の客観的条件に達していない模様。

諸井委員長は,当初,楽天の提案を評価しているように報じられたと思ったが,そうではなさそう。「誰が見ても敵対的買収」と述べられたようだが,本記事からは理由は明らかではない。

第三者機関も御用委員会に堕した場合は無意味な存在。いや,むしろ弊害の方が大きい。利害関係の有無など,人選の透明性も求められる。

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上場会社等のコーポレート・ガバナンスについて

2005-10-24 18:15:09 | Weblog
 広島大学の片木晴彦教授は,法律時報9月号の巻頭言「「新会社法」について」の中で,上場会社等のコーポレート・ガバナンスについて,法による規制ではなく証券取引所の自主規制に委ねる方が適切な面もあろう,と一定の理解を示されつつ,次のように述べておられる。

 「しかし,皮肉にも新会社法案が公表された頃から始まった敵対的買収と企業の過剰ともいえる買収防衛作の導入の試みをみれば,新会社法に,上場会社の支配権に関するルールが欠けていることの弊害を感じざるをえない。証券取引法上の公開買付に関するルール(主として買収者側の行為を制約する)との整合性を確保しながら,被買収企業におけるルール(被買収企業の経営者,取締役,株主の役割も含めて)を示す必要があったと思われる。」

片木教授は,特に,敵対的買収に対する防衛策として種類株式を駆使した場合の弊害を指摘し,証券取引場の自主規制に委ねてよい問題ではないとされる。

 一方,公正な敵対的買収防衛策のあり方について検討を重ねてきた企業価値研究会の報告書は,買収防衛策の是非は,「企業価値基準」(企業価値への脅威の存在,防衛策の過剰性,取締役会の慎重かつ適切な行動)で判断するとしているが,会社法には,ルールそのものの策定ではなく,防衛策に関する開示ルールの整備等を求めるにとどまっている。

 防衛策に関するルール作りは,様々な利害が絡むところ。現在のところ,必ずしもコンセンサスが形成されているとは言い難い。将来的にはともかく,現時点での会社法への取り込みは,やはり難しいような気がする。どうだろうか。
因みに,件の企業価値研究会は,報告書の中で,「企業価値」を次のように定義づけている。

 「企業価値とは,会社の財産,収益,安定性,効率性,成長力等株主の利益に資する会社の属性又はその程度をいう。換言すると,会社が生み出す将来の収益の合計のことであり,株主に帰属する株主価値とステークホルダーなどに帰属する価値に分配される。」

それにしても,今日の読売新聞の社説[敵対的買収]「会社は株主だけのものではない」は珍しく保守的な論調。

東京証券取引所 敵対的買収防衛策の導入に際しての投資者保護上の留意事項について

経済産業省 「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針及び「企業価値報告書」について

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『新会社法で有限会社はどうすればいいのか』

2005-10-24 13:09:32 | Weblog
 現在ある非公開会社が会社法の施行にあたりどのような対応をすべきかについては,既にいろいろな書籍・雑誌が刊行されている。例えば,鳥飼重和ほか著『非公開会社のための新会社法』(商事法務),鳥飼重和ほか著『プロが教える!中小企業の新”会社法”対策-Q&A135-』(TKC出版),酒巻俊雄監『新会社法と中小会社の実務対応』(中央経済社)等々。

 表題の税理士法人タクトコンサルティング著『新会社法で有限会社はどうすればいいのか』(明日香出版)もその1つだが,なかなか良い。
ディープな論点等には立ち入ってはいないが,「当面の対策とそのメリット・デメリット」という副題や,端書きの「中小企業の社長さんがすぐに読めて理解できる実務書」から推測できるように,「会社法施行によってどうなるか(どうすればよいのか)」がQ&A形式(全61問)で図表やフローチャートを用いながら分かり易く解説されている。
該当箇所に会社法のみならず整備法の条文がキチンと掲げられているのは,この種の本としては珍しい。ざっと目を通した程度だが,記述も慎重で,安心して読むことができる。

 おやっ,と思ったのは,Q47「株式会社設立の際に必要となる定款について教えて下さい」で,「資本金の額(会社法32①三)」「発行可能株式総数(会社法37①)」「発行する株式の数(会社法32①一)」が,定款の相対的記載事項に掲げられていること。
「発行可能株式総数(会社法37①)」は,会社法第27条には列挙されていないが,会社設立時までには定款で定めなければならない事項。これは,やはり,絶対的記載事項と考えるべきではないだろうか。神田会社法P39,弥永会社法P282も同じ立場だ。
また,相対的記載事項の「定款に記載しなくても,定款自体の効力は有効であるが,定款で定めないとその事項の効力が認められないような事項」(神田会社法P39)という定義に照らせば,「資本金の額(会社法32①三)」「発行する株式の数(会社法32①一)」がこれに該当しないことは明らか。任意的記載事項と考えるべきだろう。

 全体としては好印象で,中小企業のオーナーのみならず,要綱には目を通したものの会社法はこれから,という実務家の方にもおすすめできる入門書のように思う。全214頁で1400円+税。

 なお,会社法については,中小企業庁のHPに「よくわかる中小企業のための新会社法33問33答」が掲載されており,こちらも参考になる。索引付きなのが有り難い。

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片木晴彦教授の「「新会社法」について」と題する巻頭言について

2005-10-23 22:13:03 | Weblog
 広島大学の片木晴彦教授が執筆された法律時報9月号の巻頭言「「新会社法」について」を興味深く読ませていただいた。
片木教授は,ジュリスト1295号の江頭教授の論稿を引用しつつ,新会社法は公開会社中心主義から脱し,「取締役会を置かない非公開会社から出発し,株式の公開,会社の規模に応じて次第に複雑な企業組織へと規定を展開している」と評されている。そして,率直に,「この形式面の改正については,法制審議会の議論からは想像しえず,筆者も,新会社法の法案が示されてから戸惑いを覚えた1人である。」と告白しておられる。

 虚を突かれた点がいくつかある。非公開会社の名目的取締役等の責任に関する部分もその1つ。片木教授は,非公開会社について,「新会社法の下で取締役会および監査役の設置を選択した会社,またそのような会社の取締役や監査役に就任することを承諾した者は,「名目的」であるという言い訳が通用する余地はない。」と断じておられる。
なるほど,新会社法下の大会社以外の非公開会社は,あらゆる統治形態が選択可能となる。もはや,「員数あわせのために就任しました」との言い逃れは成り立たない。裁判所としても,名目的取締役等の責任につき,「悪意又重大な過失」(会社法第429条)の認定を躊躇しなければならない理由はないといえよう。現行商法を踏襲した安易な「取締役会+監査役」型の選択は要注意である。

 上記は,会社法施行後に設立した株式会社や,特例有限会社から移行した株式会社にはいえても,会社法施行時に現に存する株式会社にはいえない,という考えもあろう。しかし,果たしてそう言い切れるのかどうか。

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