法律の周辺

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上場会社等のコーポレート・ガバナンスについて

2005-10-24 18:15:09 | Weblog
 広島大学の片木晴彦教授は,法律時報9月号の巻頭言「「新会社法」について」の中で,上場会社等のコーポレート・ガバナンスについて,法による規制ではなく証券取引所の自主規制に委ねる方が適切な面もあろう,と一定の理解を示されつつ,次のように述べておられる。

 「しかし,皮肉にも新会社法案が公表された頃から始まった敵対的買収と企業の過剰ともいえる買収防衛作の導入の試みをみれば,新会社法に,上場会社の支配権に関するルールが欠けていることの弊害を感じざるをえない。証券取引法上の公開買付に関するルール(主として買収者側の行為を制約する)との整合性を確保しながら,被買収企業におけるルール(被買収企業の経営者,取締役,株主の役割も含めて)を示す必要があったと思われる。」

片木教授は,特に,敵対的買収に対する防衛策として種類株式を駆使した場合の弊害を指摘し,証券取引場の自主規制に委ねてよい問題ではないとされる。

 一方,公正な敵対的買収防衛策のあり方について検討を重ねてきた企業価値研究会の報告書は,買収防衛策の是非は,「企業価値基準」(企業価値への脅威の存在,防衛策の過剰性,取締役会の慎重かつ適切な行動)で判断するとしているが,会社法には,ルールそのものの策定ではなく,防衛策に関する開示ルールの整備等を求めるにとどまっている。

 防衛策に関するルール作りは,様々な利害が絡むところ。現在のところ,必ずしもコンセンサスが形成されているとは言い難い。将来的にはともかく,現時点での会社法への取り込みは,やはり難しいような気がする。どうだろうか。
因みに,件の企業価値研究会は,報告書の中で,「企業価値」を次のように定義づけている。

 「企業価値とは,会社の財産,収益,安定性,効率性,成長力等株主の利益に資する会社の属性又はその程度をいう。換言すると,会社が生み出す将来の収益の合計のことであり,株主に帰属する株主価値とステークホルダーなどに帰属する価値に分配される。」

それにしても,今日の読売新聞の社説[敵対的買収]「会社は株主だけのものではない」は珍しく保守的な論調。

東京証券取引所 敵対的買収防衛策の導入に際しての投資者保護上の留意事項について

経済産業省 「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針及び「企業価値報告書」について

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