法律の周辺

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代理出産に係る出生届不受理の確定について

2007-03-23 21:22:59 | Weblog
代理出産:向井亜紀さんの双子,最高裁が実子とは認めず MSN毎日インタラクティブ

 東京高裁の原決定については,早川眞一郎教授が,『判例タイムズNo1225』の中で,「事案の個別的・具体的内容を重視するあまり,関係当事者の利益状況に目を奪われて云々」と厳しい評価をしておられたところ。

 さて,第2小法廷は,民訴法第118条第3号に関連し,最判H9.7.11を引用して,「外国裁判所の判決が民訴法118条により我が国においてその効力を認められるためには,判決の内容が我が国における公の秩序又は善良の風俗に反しないことが要件とされているところ,外国裁判所の判決が我が国の採用していない制度に基づく内容を含むからといって,その一事をもって直ちに上記の要件を満たさないということはできないが,それが我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものと認められる場合には,その外国判決は,同法条にいう公の秩序に反するというべきである。」とし,概略,実親子関係は身分関係の中で最も基本的なものであり,これを定める基準は一義的に明確なものでなければならず,その基準によって一律に決せられるべきと続け,「民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判は,我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものであり,民訴法118条3号にいう公の秩序に反するといわなければならない。このことは,立法政策としては現行民法の定める場合以外にも実親子関係の成立を認める余地があるとしても変わるものではない。」と判示。

 また,生殖補助医療技術に関しては,次のように判示した。

 (前略)子を懐胎し出産した女性とその子に係る卵子を提供した女性とが異なる場合についても,現行民法の解釈として,出生した子とその子を懐胎し出産した女性との間に出産により当然に母子関係が成立することとなるのかが問題となる。この点について検討すると,民法には,出生した子を懐胎,出産していない女性をもってその子の母とすべき趣旨をうかがわせる規定は見当たらず,このような場合における法律関係を定める規定がないことは,同法制定当時そのような事態が想定されなかったことによるものではあるが,前記のとおり実親子関係が公益及び子の福祉に深くかかわるものであり,一義的に明確な基準によって一律に決せられるべきであることにかんがみると,現行民法の解釈としては,出生した子を懐胎し出産した女性をその子の母と解さざるを得ず,その子を懐胎,出産していない女性との間には,その女性が卵子を提供した場合であっても,母子関係の成立を認めることはできない。
 もっとも,女性が自己の卵子により遺伝的なつながりのある子を持ちたいという強い気持ちから,本件のように自己以外の女性に自己の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産することを依頼し,これにより子が出生する,いわゆる代理出産が行われていることは公知の事実になっているといえる。このように,現実に代理出産という民法の想定していない事態が生じており,今後もそのような事態が引き続き生じ得ることが予想される以上,代理出産については法制度としてどう取り扱うかが改めて検討されるべき状況にある。この問題に関しては,医学的な観点からの問題,関係者間に生ずることが予想される問題,生まれてくる子の福祉などの諸問題につき,遺伝的なつながりのある子を持ちたいとする真しな希望及び他の女性に出産を依頼することについての社会一般の倫理的感情を踏まえて,医療法制,親子法制の両面にわたる検討が必要になると考えられ,立法による速やかな対応が強く望まれるところである。


 なお,津野,古田の両裁判官が,「なお,本件において,相手方ら(管理人註:高田・向井ご夫妻のこと)が本件子らを自らの子として養育したいという希望は尊重されるべきであり,(中略),特別養子縁組を成立させる余地は十分にあると考える。」と補足意見で述べ,今井裁判官も同調しておられる。3人の裁判官,この部分はどうしても言わずにはいられなかったのだと想像する。読んでいてほっとする部分。

判例検索システム 平成19年03月23日 市町村長の処分に対する不服申立て却下審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件


民事訴訟法の関連条文

(外国裁判所の確定判決の効力)
第百十八条  外国裁判所の確定判決は,次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り,その効力を有する。
一  法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二  敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三  判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四  相互の保証があること。

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