法律の周辺

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知的障害者に対する郵便投票の制限について

2006-07-14 09:10:46 | Weblog
郵便投票訴訟,最高裁補足意見で「在宅障害者の権利保障を」 NIKKEI NET

 成年被後見人には選挙権は認められていないが(公職選挙法第11条第1項第1号),これは選挙権行使に必要な意思能力に係る必要最小限度の制限。知的障害一般を理由に選挙権が制限されているわけではない。
詳細はわからないが,この請求,「国は実質的にも国民に選挙権を保障する責務をを負っており,知的障害者にも,身体障害者と同様,郵便投票を認めるべき」との主張に基づくものであろう。

 読売には,泉裁判長が「期間論」に言及する部分がある。本判決,在宅投票制度不復活訴訟に倣い「国会の裁量権」でバッサリというわけでもなさそうとは思ったが,泉裁判長自ら「憲法の要求に反する状態にある」との補足意見を述べていたようだ。

 現行法は,身体の障害と知的な障害とで異なる扱いをしている(公職選挙法第49条)。判決理由には,この扱いを正当とする理由として,知的障害の多様性,状態の可変性,といった事由があげられている模様。
このほか,選挙の公正確保という要請もある。この観点からは,選挙権の固有性(憲法第15条第1項)を考慮にいれても,ただ「弛めれば良い」は単純過ぎる,ということになりそう。法改正にはもう少し時間を要するか・・・。

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日本国憲法の関連条文

第十四条  すべて国民は,法の下に平等であつて,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない。
2  華族その他の貴族の制度は,これを認めない。
3  栄誉,勲章その他の栄典の授与は,いかなる特権も伴はない。栄典の授与は,現にこれを有し,又は将来これを受ける者の一代に限り,その効力を有する。

第十五条  公務員を選定し,及びこれを罷免することは,国民固有の権利である。
2  すべて公務員は,全体の奉仕者であつて,一部の奉仕者ではない。
3  公務員の選挙については,成年者による普通選挙を保障する。
4  すべて選挙における投票の秘密は,これを侵してはならない。選挙人は,その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

第四十七条  選挙区,投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は,法律でこれを定める。

公職選挙法の関連条文

(選挙権)
第九条  日本国民で年齢満二十年以上の者は,衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。
2  日本国民たる年齢満二十年以上の者で引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者は,その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。
3  前項の市町村には,その区域の全部又は一部が廃置分合により当該市町村の区域の全部又は一部となつた市町村であつて,当該廃置分合により消滅した市町村(この項の規定により当該消滅した市町村に含むものとされた市町村を含む。)を含むものとする。
4  第二項の規定によりその属する市町村を包括する都道府県の議会の議員及び長の選挙権を有する者で当該市町村の区域内から引き続き同一都道府県の区域内の他の市町村の区域内に住所を移したものは,同項に規定する住所に関する要件にかかわらず,当該都道府県の議会の議員及び長の選挙権を引き続き有する。
5  第二項の三箇月の期間は,市町村の廃置分合又は境界変更のため中断されることがない。

(選挙権及び被選挙権を有しない者)
第十一条  次に掲げる者は,選挙権及び被選挙権を有しない。
一  成年被後見人
二  禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者
三  禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
四  公職にある間に犯した刑法 (明治四十年法律第四十五号)第百九十七条 から第百九十七条の四 までの罪又は公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律 (平成十二年法律第百三十号)第一条 の罪により刑に処せられ,その執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた者でその執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた日から五年を経過しないもの又はその刑の執行猶予中の者
五  法律で定めるところにより行われる選挙,投票及び国民審査に関する犯罪により禁錮以上の刑に処せられその刑の執行猶予中の者
2  この法律の定める選挙に関する犯罪に因り選挙権及び被選挙権を有しない者については,第二百五十二条の定めるところによる。
3  市町村長は,その市町村に本籍を有する者で他の市町村に住所を有するもの又は他の市町村において第三十条の六の規定による在外選挙人名簿の登録がされているものについて,第一項又は第二百五十二条の規定により選挙権及び被選挙権を有しなくなるべき事由が生じたこと又はその事由がなくなつたことを知つたときは,遅滞なくその旨を当該他の市町村の選挙管理委員会に通知しなければならない。

(不在者投票)
第四十九条  前条第一項の選挙人の投票については,同項の規定によるほか,政令で定めるところにより,第四十二条第一項ただし書,第四十四条,第四十五条,第四十六条第一項から第三項まで,第四十八条及び第五十条の規定にかかわらず,不在者投票管理者の管理する投票を記載する場所において,投票用紙に投票の記載をし,これを封筒に入れて不在者投票管理者に提出する方法により行わせることができる。
2  選挙人で身体に重度の障害があるもの(身体障害者福祉法 (昭和二十四年法律第二百八十三号)第四条 に規定する身体障害者,戦傷病者特別援護法 (昭和三十八年法律第百六十八号)第二条第一項 に規定する戦傷病者又は介護保険法 (平成九年法律第百二十三号)第七条第三項 に規定する要介護者であるもので,政令で定めるものをいう。)の投票については,前条第一項及び前項の規定によるほか,政令で定めるところにより,第四十二条第一項ただし書,第四十四条,第四十五条,第四十六条第一項から第三項まで,第四十八条及び第五十条の規定にかかわらず,その現在する場所において投票用紙に投票の記載をし,これを郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律 (平成十四年法律第九十九号)第二条第六項 に規定する一般信書便事業者,同条第九項 に規定する特定信書便事業者若しくは同法第三条第四号 に規定する外国信書便事業者による同法第二条第二項 に規定する信書便(以下「郵便等」という。)により送付する方法により行わせることができる。
3  前項の選挙人で同項に規定する方法により投票をしようとするもののうち自ら投票の記載をすることができないものとして政令で定めるものは,第六十八条の規定にかかわらず,政令で定めるところにより,あらかじめ市町村の選挙管理委員会の委員長に届け出た者(選挙権を有する者に限る。)をして投票に関する記載をさせることができる。
4  選挙人で船舶安全法 (昭和八年法律第十一号)にいう遠洋区域を航行区域とする船舶その他これに準ずるものとして総務省令で定める船舶に乗つて本邦以外の区域を航海する船員(船員法 (昭和二十二年法律第百号)第一条 に規定する船員をいう。)であるもののうち選挙の当日前条第一項第一号に掲げる事由に該当すると見込まれるものの衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙における投票については,同項及び第一項の規定によるほか,政令で定めるところにより,第四十二条第一項ただし書,第四十四条,第四十五条,第四十六条第一項から第三項まで,第四十八条及び第五十条の規定にかかわらず,不在者投票管理者の管理する場所において,総務省令で定める投票送信用紙に投票の記載をし,これを総務省令で指定する市町村の選挙管理委員会の委員長にファクシミリ装置を用いて送信する方法により,行わせることができる。

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