法律の周辺

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塩漬け状態だった訴訟について

2007-01-23 21:56:54 | Weblog
20年来の京都「光華寮」訴訟,最高裁が確認手続き YOMIURI ONLINE

 関係改善の兆しが見え始めたところだったが・・・。

 寮生側の「台湾の当事者能力及び当事者適格」に係る本案前の抗弁につき,昭和57年の大阪高裁は次のように判示した。

 (前略)本来,政府や国家の承認は,多分に政治的な行為であって,承認を与える国の政府(行政府)が承認を与えられる政府や国家との関係(国際関係)をどのように処理すべきかという見地からこれを決定するのが常であるのに対し,国内裁判所は,国内における法律上の紛争,とりわけ私的な法律上の紛争をどのように合理的に解決すべきかという見地から判断を下すのが建て前であり,このことは国内裁判所が私的な渉外関係上の紛争を判断の対象とする場合にも同様である。したがって国内裁判所が私的な法律上の紛争(私的な渉外関係上の紛争を含む。以下同じ。)の解決を図るに当って,行政府の決定に基礎を置く承認の有無をそのまま判断の基礎とすることは,必ずしも適切ではなく,承認以外の事実を考慮して,未承認ないし承認を失った事実上の政府にも当事者能力を認めて,私的な法律上の紛争の合理的な解決を図ることが必要とされる場合のあることを否定しえないのであるから,政府の承認と外国法廷における当事者能力とを直結する考え方に従うことはできない。

中国は2つの中国を認めるものと反発したようだが,判決の中には次のようなくだりがある。

 このように判断して国内裁判所が控訴人(管理人注:台湾のこと)を右私的な法律上の紛争の解決につき訴訟当事者として扱っても,控訴人に対し事実上の政府について認められることのある国際法上の地位及びこれに由来する権利,義務を認めること等,控訴人の国際法上の立場に影響を与えることにはならないと考えられるから,右取り扱いをもって,前記共同声明においてわが国政府が十分理解し,尊重する旨言明した中華人民共和国政府の前記立場を軽視,毀損するものとみることはできない。

判例検索システム 昭和57年04月14日 土地家屋明渡請求事件


民事訴訟法の関連条文

(原則)
第二十八条  当事者能力,訴訟能力及び訴訟無能力者の法定代理は,この法律に特別の定めがある場合を除き,民法 (明治二十九年法律第八十九号)その他の法令に従う。訴訟行為をするのに必要な授権についても,同様とする。

(訴訟能力等を欠く場合の措置等)
第三十四条  訴訟能力,法定代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権を欠くときは,裁判所は,期間を定めて,その補正を命じなければならない。この場合において,遅滞のため損害を生ずるおそれがあるときは,裁判所は,一時訴訟行為をさせることができる。2  訴訟能力,法定代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権を欠く者がした訴訟行為は,これらを有するに至った当事者又は法定代理人の追認により,行為の時にさかのぼってその効力を生ずる。
3  前二項の規定は,選定当事者が訴訟行為をする場合について準用する。

(口頭弁論を経ない訴えの却下)
第百四十条  訴えが不適法でその不備を補正することができないときは,裁判所は,口頭弁論を経ないで,判決で,訴えを却下することができる。

(釈明権等)
第百四十九条  裁判長は,口頭弁論の期日又は期日外において,訴訟関係を明瞭にするため,事実上及び法律上の事項に関し,当事者に対して問いを発し,又は立証を促すことができる。
2  陪席裁判官は,裁判長に告げて,前項に規定する処置をすることができる。
3  当事者は,口頭弁論の期日又は期日外において,裁判長に対して必要な発問を求めることができる。
4  裁判長又は陪席裁判官が,口頭弁論の期日外において,攻撃又は防御の方法に重要な変更を生じ得る事項について第一項又は第二項の規定による処置をしたときは,その内容を相手方に通知しなければならない。

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