法律の周辺

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リサイクル料金がかかることを告げないゴミ回収業者について

2008-08-14 18:53:02 | Weblog
asahi.com 「無料と思ったのに…」 粗大ゴミ回収巡り苦情次々

 作業が全て終わってから「リサイクル料金がかかる。」はない (-_-;) 。

消費者契約法第4条第2項本文には「消費者は,事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ,かつ,当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより,当該事実が存在しないとの誤認をし,それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは,これを取り消すことができる。」とある。いわゆる「不利益事項の不告知」による取り消しに係る規定である。
この規定による取り消しについては,内閣府のHPに次の事例が掲げられている。

(事例4-19)
(例えば,隣接地が空き地であって)「眺望・日当たり良好」という業者の説明を信じて中古マンションの2階の一室を買った。しかし半年後には隣接地に建物ができて眺望・日照がほとんど遮られるようになった。業者は隣接地に建設計画があると知っていたにもかかわらずそのことの説明はなかった。

(考え方)
消費者の利益となる旨([例えば,隣接地が空き地であって]眺望・日当たり良好)を告げ,不利益となる事実(隣接地に建物ができて眺望・日照が遮られるようになること)を故意に告げていないので,第4条第2項の要件に該当し,取消しが認められる。


典型例とは事情は異なるが,常人なら,「無料回収車です。」と聞けば,名目のいかんを問わず費用負担は一切ないと考えるのが普通ではなかろうか。回収の無料を言いながら,リサイクル料金の負担を告げないことは,上記条項の「不利益事実の不告知」に該当すると考えることにさほど無理はないと思うのだが,どうだろう。雑ぱくに過ぎるだろうか。事業者側の二重の故意並びに不利益事実の不告知と誤認の間の因果関係が認められれば,消費者,ゴミの引取依頼の取り消しが可能な場合もあると思われる。

記事には,10万円の見積もりが23万円になったという事案も紹介されている。「思ったより多かった。」で料金が2倍超になったのでは,見積もりの意味がまるでない。こちらは,不実告知で取り消しが可能な場合,あるのではなかろうか(消費者契約法第4条第1項第1号参照)。

なお,消費者契約法第3条第1項には「事業者は,消費者契約の条項を定めるに当たっては,消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるよう配慮するとともに,消費者契約の締結について勧誘をするに際しては,消費者の理解を深めるために,消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供するよう努めなければならない。」とある。通例,努力義務規定で違反しても法的サンクションはないなどと言われるが,落合先生は,『消費者契約法』(有斐閣)の中で,「本条の努力義務違反が不法行為責任の違法性を基礎づけることはあり得る。また,契約締結における信義則上の付随義務違反として民法上の実体効果を生み出すことも十分考えられる」と述べておられる。これに関連するものとして,大津地判H15.10.3がある。

国民生活センター 廃品回収業者とのトラブルに注意!

内閣府 消費者の窓 消費者契約法


消費者契約法の関連条文

(目的)
第一条  この法律は,消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ,事業者の一定の行為により消費者が誤認し,又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに,事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか,消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより,消費者の利益の擁護を図り,もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

(定義)
第二条  この法律において「消費者」とは,個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。
2  この法律において「事業者」とは,法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。
3  この法律において「消費者契約」とは,消費者と事業者との間で締結される契約をいう。
4  この法律において「適格消費者団体」とは,不特定かつ多数の消費者の利益のためにこの法律の規定による差止請求権を行使するのに必要な適格性を有する法人である消費者団体(消費者基本法 (昭和四十三年法律第七十八号)第八条 の消費者団体をいう。以下同じ。)として第十三条の定めるところにより内閣総理大臣の認定を受けた者をいう。

(事業者及び消費者の努力)
第三条  事業者は,消費者契約の条項を定めるに当たっては,消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるよう配慮するとともに,消費者契約の締結について勧誘をするに際しては,消費者の理解を深めるために,消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供するよう努めなければならない。
2  消費者は,消費者契約を締結するに際しては,事業者から提供された情報を活用し,消費者の権利義務その他の消費者契約の内容について理解するよう努めるものとする。

(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第四条  消費者は,事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし,それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは,これを取り消すことができる。
一  重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
二  物品,権利,役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し,将来におけるその価額,将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認
2  消費者は,事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ,かつ,当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより,当該事実が存在しないとの誤認をし,それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは,これを取り消すことができる。ただし,当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず,当該消費者がこれを拒んだときは,この限りでない。
3  消費者は,事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し,それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは,これを取り消すことができる。
一  当該事業者に対し,当該消費者が,その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず,それらの場所から退去しないこと。
二  当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず,その場所から当該消費者を退去させないこと。
4  第一項第一号及び第二項の「重要事項」とは,消費者契約に係る次に掲げる事項であって消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものをいう。
一  物品,権利,役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質,用途その他の内容
二  物品,権利,役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件
5  第一項から第三項までの規定による消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは,これをもって善意の第三者に対抗することができない。

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