法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

授業料返還に係る入学辞退の意思表示の期限について

2007-03-28 21:25:43 | Weblog
授業料:入学辞退した場合…きちんと返還求める/要項見てもあきらめない MSN毎日インタラクティブ

 平成18年度も残すところあと3日。授業料は納めたが入学を辞退するという方が大学等から授業料を返還してもらうには,原則,年度内に件の大学等にその旨意思表示をする必要がある。この点,お忘れなきように。

 さて,記事にある昨年12月28日発出の通知「大学,短期大学,高等専門学校,専修学校及び各種学校の入学辞退に対する授業料等の取扱いについて」は,各大学等が入学者選抜に当たって留意すべき点として3点を掲げる。そのうち1と2は次のとおり。

1.  3月31日までに入学辞退の意思表示をした者(専願又は推薦入学試験(これに類する入学試験を含む。)に合格して大学等と在学契約を締結した学生等を除く。)については,原則として,学生等が納付した授業料等及び諸会費等の返還に応じることを明確にすること。

2.  1.にかかわらず,入学試験要項,入学手続要項等に,「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」,「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」などと記載している場合には,入学式の日までに学生等が明示又は黙示に在学契約を解除したときは,授業料等及び諸会費等の返還に応じることを明確にすること。


 2はどういう理屈か?,と一瞬訝しく思ったが,例えば,最判H18.11.27(事件番号平成17(受)1437号)には次のようにある。

 (前略),一般に,4月1日には,学生が特定の大学に入学することが客観的にも高い蓋然性をもって予測されるものというべきである。そうすると,在学契約の解除の意思表示がその前日である3月31日までにされた場合には,原則として,大学に生ずべき平均的な損害は存しないものであって,不返還特約はすべて無効となり,在学契約の解除の意思表示が同日よりも後にされた場合には,原則として,学生が納付した授業料等及び諸会費等は,それが初年度に納付すべき範囲内のものにとどまる限り,大学に生ずべき平均的な損害を超えず,不返還特約はすべて有効となるというべきである。
 もっとも,要項等に,「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」,「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」などと記載されている場合には,当該大学は,学生の入学の意思の有無を入学式の出欠により最終的に確認し,入学式を無断で欠席した学生については入学しなかったものとして取り扱うこととしており,学生もこのような前提の下に行動しているものということができるから,入学式の日までに在学契約が解除されることや,入学式を無断で欠席することにより学生によって在学契約が黙示に解除されることがあることは,当該大学の予測の範囲内であり,入学式の日の翌日に,学生が当該大学に入学することが客観的にも高い蓋然性をもって予測されることになるものというべきであるから,入学式の日までに学生が明示又は黙示に在学契約を解除しても,原則として,当該大学に生ずべき平均的な損害は存しないものというべきである。


なるほど,筋が通っている。
11月27日は,公表されているだけで学納金返還に係る最高裁判決が5件出された。巷間,5件ともほぼ同趣旨などと言われているが,以前このブログで触れた同日の事件番号平成17(受)1158号の最判には上記通知の2に触れる部分はなかったような気が・・・(って,読み直せばいいのだが)。

文部科学省 大学,短期大学,高等専門学校,専修学校及び各種学校の入学辞退者に対する授業料等の取扱いについて(通知)

全国専修学校各種学校総連合会 会員校への入学辞退者に対する授業料等の取扱いについてのお願い(2007.01.24)


消費者契約法の関連条文

(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第九条  次の各号に掲げる消費者契約の条項は,当該各号に定める部分について,無効とする。
一  当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し,又は違約金を定める条項であって,これらを合算した額が,当該条項において設定された解除の事由,時期等の区分に応じ,当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
二  当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には,それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し,又は違約金を定める条項であって,これらを合算した額が,支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について,その日数に応じ,当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分

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日中共同声明に伴う訴訟手続の中断について

2007-03-28 11:25:34 | Weblog
光華寮訴訟,審理差し戻し・最高裁 NIKKEI NET

 第三小法廷は,概略,「国家としての中国(中国国家)の政府は,昭和47年9月29日の日中共同声明によって,中華民国政府から中華人民共和国政府に切り替わり,中華民国駐日本国特命全権大使が有していた我が国における代表権は消滅した。本訴訟手続は,民訴法第37条,同第124条第1項第3号により,昭和47年9月29日の時点で中断することになるが,原審の判決等はこれを看過したもので破棄を免れず,審理をやり直させるため,第1審判決を取り消し,第1審に差し戻す」と判断。
受継の手続きを経た後,取り下げ,ということになりそうだ。おそらく,被告側が受継の申立てをするのでは。

 訴訟代理人がいるにもかかわらず訴訟手続が中断する点については,次のように判示している。

 また,本件のように,訴訟代理人が外国国家の外交使節から訴訟代理権の授与を受けて訴訟を提起した後に,我が国政府が,当該外国国家の政府として,上記外交使節を派遣していた従前の政府に代えて新たな政府を承認したことによって,上記外交使節の我が国における当該外国国家の代表権が消滅した場合には,民訴法37条,124条2項,同条1項3号の規定にかかわらず,上記代表権の消滅の時点で,訴訟手続は中断すると解するのが相当である。なぜなら,上記規定は,訴訟代理人が選任されているときには,当該訴訟代理人が訴訟の実情に通暁しており,一般にそのまま訴訟を追行させたとしても,当事者の利益を害するおそれがないことから,訴訟手続の中断事由が生じたとしても,訴訟代理権は消滅しないものとして(同法58条1項4号参照),訴訟手続の中断についての例外を定めたものと解されるところ,上記の場合,従前の政府の承認が取り消されたことにより,従前の政府が上記代表権の発生母体としての根拠を失ったために上記代表権が消滅したのであって,単に代表権のみが消滅した場合とは実質を異にする上,新たに承認された政府が従前の政府と利害の異なる関係にあることは明らかであるので,従前の政府から派遣されていた外交使節からの訴訟代理権の授与しか受けていない訴訟代理人がそのまま訴訟を追行することは,新たな政府が承認された後の上記外国国家の利益を害するおそれがあるというべきだからである。
 そうすると,本件の訴訟手続は,民訴法37条,124条1項3号の規定により,第1次第1審に係属していた昭和47年9月29日の時点で中断したものというべきである。


なお,判決末尾には,代表者及び訴訟代理人の記載に係る説明がある。なかなか慎重だ。

判例検索システム 平成19年03月27日 土地建物明渡請求事件


民事訴訟法の関連条文

(法定代理権の消滅の通知)
第三十六条  法定代理権の消滅は,本人又は代理人から相手方に通知しなければ,その効力を生じない。
2  前項の規定は,選定当事者の選定の取消し及び変更について準用する。

(法人の代表者等への準用)
第三十七条  この法律中法定代理及び法定代理人に関する規定は,法人の代表者及び法人でない社団又は財団でその名において訴え,又は訴えられることができるものの代表者又は管理人について準用する。

(訴訟手続の中断及び受継)
第百二十四条  次の各号に掲げる事由があるときは,訴訟手続は,中断する。この場合においては,それぞれ当該各号に定める者は,訴訟手続を受け継がなければならない。
一  当事者の死亡
     相続人,相続財産管理人その他法令により訴訟を続行すべき者
二  当事者である法人の合併による消滅
     合併によって設立された法人又は合併後存続する法人
三  当事者の訴訟能力の喪失又は法定代理人の死亡若しくは代理権の消滅
     法定代理人又は訴訟能力を有するに至った当事者
四  当事者である受託者の信託の任務終了
     新受託者
五  一定の資格を有する者で自己の名で他人のために訴訟の当事者となるものの死亡その他の事由による資格の喪失
     同一の資格を有する者
六  選定当事者の全員の死亡その他の事由による資格の喪失
     選定者の全員又は新たな選定当事者
2  前項の規定は,訴訟代理人がある間は,適用しない。
3  第一項第一号に掲げる事由がある場合においても,相続人は,相続の放棄をすることができる間は,訴訟手続を受け継ぐことができない。
4  第一項第二号の規定は,合併をもって相手方に対抗することができない場合には,適用しない。
5  第一項第三号の法定代理人が保佐人又は補助人である場合にあっては,同号の規定は,次に掲げるときには,適用しない。
一  被保佐人又は被補助人が訴訟行為をすることについて保佐人又は補助人の同意を得ることを要しないとき。
二  被保佐人又は被補助人が前号に規定する同意を得ることを要する場合において,その同意を得ているとき。

(相手方による受継の申立て)
第百二十六条  訴訟手続の受継の申立ては,相手方もすることができる。

(受継の通知)
第百二十七条  訴訟手続の受継の申立てがあった場合には,裁判所は,相手方に通知しなければならない。

(受継についての裁判)
第百二十八条  訴訟手続の受継の申立てがあった場合には,裁判所は,職権で調査し,理由がないと認めるときは,決定で,その申立てを却下しなければならない。
2  判決書又は第二百五十四条第二項(第三百七十四条第二項において準用する場合を含む。)の調書の送達後に中断した訴訟手続の受継の申立てがあった場合には,その判決をした裁判所は,その申立てについて裁判をしなければならない。

(中断及び中止の効果)
第百三十二条  判決の言渡しは,訴訟手続の中断中であっても,することができる。
2  訴訟手続の中断又は中止があったときは,期間は,進行を停止する。この場合においては,訴訟手続の受継の通知又はその続行の時から,新たに全期間の進行を始める。

(上告の理由)
第三百十二条  上告は,判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに,することができる。
2  上告は,次に掲げる事由があることを理由とするときも,することができる。ただし,第四号に掲げる事由については,第三十四条第二項(第五十九条において準用する場合を含む。)の規定による追認があったときは,この限りでない。
一  法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
二  法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
三  専属管轄に関する規定に違反したこと(第六条第一項各号に定める裁判所が第一審の終局判決をした場合において当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときを除く。)。
四  法定代理権,訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。五  口頭弁論の公開の規定に違反したこと。
六  判決に理由を付せず,又は理由に食違いがあること。
3  高等裁判所にする上告は,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときも,することができる。

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