中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

MET「ドン・カルロ」~熱狂の一夜

2011年06月14日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン<映画篇>」第64回の今日は、「世界が注視した夫婦喧嘩」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2011/06/post-2ce6.html#more
 見応えある「終着駅 トルストイ最後の旅」について書きました。

 さてさて、先日は5年ぶりのメトロポリタン・オペラを見てまいりました。「ドン・カルロ」!ヴェルディ作品中、一番のボリュームです。今年前半最大の楽しみでした。

 ところが。。。

 今回のプロダクションの「売り」は、現在もっとも華やかでビジュアル的にも完璧な大スターを5人もそろえた、だから高額チケットなのも当然、ということでしたのに、な、なんと、5人のうち3人が交代、しかもスター指揮者レヴァインまで交代という、とんでもない事態に!

 歌手は肉体が楽器という過酷さですから、時に変更はやむを得ません。わたしもこれまでに何度かそういう経験をしています。でもそれが許されるのは、せいぜいひとりかふたりでしょう。ところが今回は指揮者も含めると6人中4人が交代ですから、いくら震災が一因とはいえ、チケット払い戻しに応じないのはとうてい納得できません。そうとうなクレームがきたはずです。

 タイトルロールのドン・カルロ役は、輝くスター、ドイツ人のカウフマンから、韓国人のヨンフン・リーへ。大丈夫か?劇場中が固唾を呑み、せめてふつうに歌ってくれよ、と祈る気持ち。

 ところが。。。

 リーはアジア人であることを忘れさせる大音量、美声、何より猛烈な熱気で、舞台をぐんぐん熱くさせたのです!

 ロドリーゴ(ホロストフスキー様♪)との二重唱の後、固く抱き合う場面では、ど~んと抱きついて火花が散るばかり。へヴィーな重唱の多いオペラなので、相手の熱さは感染します。次第に歌手も、オケも、観客も、興奮の度を深め、稀に見るヒートアップしたオペラの一夜になったのです。大大満足!

 禍転じて福となる。
 明日のスター、リーの誕生を目の当たりにし、期待に違わぬホロストフスキーとパーぺのオーラの凄さにくらくらし、あ~、もっともっと聴いていたいなあと席をたつのが惜しいほどでした。

 ちなみにドン・カルロというのは、スペイン・ハプスブルク家の王子さま。フェリペ二世の出来の悪い息子です。オペラでは老王のフェリペでしたが、ほんとうはこの時まだ三十代。息子よりずっとマシだったということは、拙著「ハプスブルク家12の物語」で書いたとおり。オペラでしかドン・カルロを知らない方は、ぜひ読んでみてくださいね!

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5 コメント

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Unknown (美波)
2011-06-14 21:22:45
いつも、火曜日を楽しみにしております。
(もちろん著作も)

まぁ!!なんて羨ましい!
あまりの高額なチケットにビビリ、行こうか、行くまいか、逡巡しておりましたが・・・・。
カウフマンもフリットリも来日しないんなら、
行かなくて正解、じゃなかったんですね(涙)

でもでも、中野先生の渾身リポートで熱気は十分伝わりました。
有難うございました。
スター 誕生! (ayachin)
2011-06-15 15:10:48
新しい「スター伝説」の始まりとなるような公演を体験された、興奮・感動が伝わってくるようです。そして、「私は、その歴史的な瞬間に立ち会ったのだ!」と、いつまでも語り草になりそうですね。

わが街のオーケストラ、京都市交響楽団の常任指揮者の広上淳一氏のプロフィールにも、「小澤征爾さんの代役での指揮が絶賛され…」という一文が掲載されています。音楽の世界に限らず、代役での成功をきっかけに、一気にスターダムにまで登りつめるケースが、ままあるようですね。

美術(画家)の世界では、どうなんでしょうか?代役(代筆というのか?)をきっかけにした成功例などは、あるのでしょうか?また機会がございましたら、ブログなどにてご紹介くださいませ!
Unknown (美波さん&ayachinさん(kyoko))
2011-06-16 10:41:17
美波さん
 正直、フリトリは痛かったですね。だって来日しているのに、ルチアへスライドですから。。。でもそうした諸々があったからこそ、演者も燃えて、すばらしい舞台になったのかもしれない、と思っています。

ayachinさん
 画家の代役ですぐ思い出したのが、フェリペ二世から依頼されて宗教画を描いたエル・グレコ。気に入られなくて、別の画家に差し替えになってしまいましたが、その画家の名前よりグレコのほうが今に至るも高いので、これはどう呼ぶべきかしらん?(このエピソードは「ハプスブルク家12の物語」に書きました♪)


悪い夫 (青山)
2011-06-18 18:21:46
いつも楽しく拝読しています。素晴らしいコンサートに出会われたのですね。すばらしい舞台との出会いは神様の贈り物。とても羨ましいです。

「世界が注視した夫婦喧嘩」に書かれていた「悪夫」と言う言葉に受けてしまい、初書き込みとなりました。中野さんが歴史上の悪夫は選ぶなら、誰になるのでしょう。

因みにこの言葉を聞いて、私の頭に真っ先に思い浮かんだのは、「楽園への道」でリョサが書いた、ゴーギャンの祖母フローラの夫でした。
Unknown (青山さん(kyoko))
2011-06-19 19:56:38
 ご訪問、ありがとうございます♪
 「楽園への道」未読ですが、ゴーギャンの祖父ということですよね。考えたらゴーギャン自身も奥さんからすれば「悪夫」の典型なので、父息子2代にわたる血かな?

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