母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

秋の愁いは

2019年10月19日 | 
紫苑が咲けば母を思い
菊が匂うと父を思う

大地は安らぎいのちの実りが戻る季節
どこかで家を失った人々
家族を失った人たちが
広い空の下で泣いている

愛に囲まれた幸せな日日が
ある日突然に壊されて別世界に放り出され
それでも生きてゆかねばならぬ厳しさに涙する
誰もいなくなった家の跡地で
淋しく命を抱え切なさをこらえ

人は喜び悲しみ当たり前に与えられた日々を過ぎ
いつのまにか深く老い
消えゆく人の世の短さに気づく
その時初めて人間の何が
神の怒りに触れたのか振り返っては天を仰ぐが
もはや深く考える力も残されては居ない

真上に輝く太陽はしずかに傾き
休みなく夜を与え朝をくれる
当たり前の時間が過ぎゆく

ひとは過ちを幾度も犯しても顧みること少なく
この生がいつまでも続くと信じながらやがて
消え去るだけ
天上の父母たちは地上の花の精になり
永遠の謎を黙し
語ることをしない 



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