はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

クラッシュ

2006年03月19日 | 映画(2005-06年公開)


『ミリオンダラー・ベイビー』の製作・脚本を手掛け
たポール・ハギスの初監督作品でもある本作。
多彩な出演陣を揃えて、複雑に交錯したエピソードと、
その因果関係。誰が主役というわけではなく、誰もが主役。
私の好きなタイプの映画です。ドラマはまずプロットが
しっかりしていなきゃね。本作は良く出来た脚本だなと思う。


今回はボビー・モレスコとの共同脚本のようですが、
元々ポール・ハギスはテレビ畑だったらしく、
『ER』に代表されるような、複数のエピソードが同時進行し
登場人物達が意外な形で関係し合うテレビドラマの形式を
踏襲したものなのかな、と思いました。
テレビドラマなら回を重ねるうちに、その複雑な人物相関図
を段々と理解してゆくものなのでしょうが、
それを映画という限られた時間の中でやってのけようとした
ところが大胆であり、観客を惑わせるのかな?
結構集中して見ないと、訳が分からなくなりますね。
その意味で中学生の息子には難し過ぎたようです。

一般の映画評では「人種差別」が
ことさらクローズアップされていますが、
私自身は人種差別うんぬんより、
人間の多面性を描いて秀逸だなと感じました。
単純な善VS悪、勧善懲悪物語ではなく、
ひとりの人間が持つ善悪の両面を見事に表現している。
悪人と思っていた人物の善良な一面というのは、
これまでの作品でも度々描かれて来ており、
それほど珍しくはありませんが、本作で描かれた、
自ら善人と信じて止まない人物の意外な脆さには、
驚きつつも、どこか納得するところがありました。
この辺り、上手いですね。

人種差別とは、人間の心の「醜い」、
あるいは「弱い」部分を炙り出す意識なんでしょうね。
自分の人生の苦悩や絶望の代償行為としての
他者への攻撃性のような。
あるいは、自分が抱える劣等感の裏返しとしての、
より弱い立場にある他者に対する蔑視など。
登場人物達が、自身にとっても意外な関わり方や経験で、
そのことに気付く。時にはユーモアも交えて。
そこに希望があり、救いがあると思いました。

ご覧になられた皆さんは、個人的にどの人物に
思い入れを深くしましたか?
私はドン・チードル演じる刑事と、マット・ディロン演じる
警官の二人に、人間の哀しみを感じました。
テレンス・ハワード演じるテレビ演出家の
強さと高潔さにも、惹かれるものがありました。

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