手鏡に押しつけて折るルージュどれも母を刺すにはやわらか過ぎて 032:ルージュ(岩井聡) すいくわ食む祖母はおそろし恐ろしき口にて食はれることしの夏は 033:すいか(村本希理子) どう言えばよかったのだろう夕暮れにざぶりとぬるいすいかを齧る 033:すいか(川鉄ネオン) 静岡の蜜柑を買つてしづをかのひかりをはらに蓄へてゐる 034:岡(村本希理子) 静岡の訛りを運ぶ鈍行の車両揺れつつ揺れつつ 土曜 034:岡(ひぐらしひなつ) 寝てたでしょう? 「つぎは長岡ペンギン」と駅員さんがいま言ったのに 034:岡(やすたけまり) こっそり思い出したときに。 題詠には、お題をメインにして上手に料理するひとと、まったく違うものを詠んでスパイスのようにお題を紛れ込ませるひとと、いる。 前者は、作るときに素材を見てからなにを作ろうか決めているのに対して、後者は、作るものが決まっていて、それにどう決められた食材をうまく取り入れるかを考えている。 どちらが良いということはないのだけれど、個人的な感覚でいえば、スパイスのようにお題を使うことには、すごく憧れがある。どうしてこんなところから・・・・。という切り込まれ方をされてしまったらもう降参。 |