夢のなかで会場にいる全員と握手を交わしながら泣いている
夜更け毎メール交わせば降りつのる雨 すりきれるまでそばにいて 071:メール(ひぐらしひなつ) 取り戻したかったメールに返信がきている 部屋が深海になる 071:メール(里坂季夜) 言葉では伝えられない黄緑が君を連れ出す切っ掛けになる 072:緑(ほきいぬ) 寝たふりをするのはおやめ はみだしている新緑をていねいに剥ぐ 072:緑(こはく) どうみても緑色だし泡だっているのにこれを食えと言うのか 072:緑(さかいたつろう) 銀行の硬いソファーに腰掛けてわたしはたぶん船を待つてる 074:銀行(村本希理子) 量られるたびにほどかれゆくものを差し出したりはしないあなただ 075:量(こはく) 死にさうだ死ぬだらう推し量られてとってもとっても困ってしまう 075:量(間遠 浪) 雲の量変へつつたかくたかくなる九月の空においてけぼりだ 075:量(萱野芙蓉) ちょっとだけへこんでいるはずだったのになにか分量を間違えたらしい 075:量(藤野唯) 知れば知るほどハードルが高くなってしまって、前に進めなくなる。 そういうことが、わたしのなかにごろごろとある。 左手で字を書くような不自由さで短歌を書きたい。 |
すんすんと伸びる真竹に夏の日のひとりごとなら寂しくないわ 066:ひとりごと(kei) おもむろに正しいものになりかわる日没とともに葱をきざめば 067:葱(斉藤そよ) このカラダ水にさらした玉葱のようだね少し透きとほっている 067:葱(紫月雲) 灰色の別れ話がちらほらと この踊り場は廣すぎないか 068:踊(酒井景二郎) 腕の中の深い呼吸の音階が俺の危險な部分に觸れた 069:呼吸(酒井景二郎) 病む人のうすき呼吸をたしかめて白き花瓶に挿す夏の花 069:呼吸(ひぐらしひなつ) 籍という名前の錨を持たせてもわたしの痛みはわたしのものだ 070:籍(こはく) 本籍はみずうみにおく ほとぼりがさめるころには雪も降るから 070:籍(斉藤そよ) 後半にさしかかると、走っている人たちの持久力が試されますね。 題詠って、前半に新鮮さ生かして度肝を抜くような走り方を見せる人と、後半にハイになってぐんぐん良くなってく人がいて、面白いなぁ。と思います。 そのなかで、コンスタントにいいものを詠み続けている人もいるわけですが。 |
anata@wasurerarenai.com宛のメールが戻ってきます 061:@(西原まこと) コポコポと@のかたちして水は暗渠のみずとなりゆく 061:@(冬鳥) 悲しみはたとへば浅蜊が砂を吐くやうにほつほつ語られてゐき 062:浅(野州) 切り捨てた別のわたしがあの春の浅みで泣いてゐるかもしれず 062:浅(萱野芙蓉) それでいてここを浅瀬と思わせるあなたの所作にときおりは倦む 062:浅(村上きわみ) 白い人がたたずむといふ階段でいつも片方脱げるスリッパ 063:スリッパ(萱野芙蓉) 眩しくてつぶっていると寝てしまうほど金魚鉢からっぽだった 065:眩(我妻俊樹) 静かでほの暗い作品たちが集まった。 好き。 |