参加者は4人。ちょっと覚えている限りで出たご意見・ご感想を思い起こしてみます。間違っているところもあると思いますがご容赦を。(私の発言は感想で書いたので省略)
最初は図書館で借りましたが、期限切れで返しに行って延長しようとしたら予約の人がいたので借りられず、慌てて新しいものを買いました。でも、買って良かったです。
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「古き良き、かつての日本のような人間関係の濃さ。ほのぼのするものが多かった。キャディーさんの話は、うまく行き過ぎの感はあるが、夢を見れる時代としていいのかも。私は苦労を先に考えてしまうので、アメリカンドリームでもないと思った。」
「社会インフラの弱さを感じた。日本のほうがしっかりしている。」
「全体を通して、本としてはいい物語で、韓国映画のように美しいところもあるが、いまの私達からすれば現実味から遠い。」
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「ほんとに面白くて。とかげのキャラ(「とかげのゾフと仲間たち」)は、チェブラーシカを思い出しました。」
「子どもを思う親の心情や、中絶に友人がついていくなど、情の濃いところがある。チェ・エソンさん(義理の娘が穴に落ちてしまう義母)が、”家族の顔が見えたほうがいい”と自然に思うあたり、日本との違いを感じた。日本は、そこまで思っていても踏み込めないと思う。」
「構成が上手くて、説教くさくなく、おしつけがましさがないのが凄い」
「実際にあった事件が多い。240ページのメキシコの小都市の女性市長が殺された事件は、調べたら実話でした。」
「今回初めて韓国文学を読んだけれど、とても良かった。くらさんありがとうございました。」
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「面白くて、つながりの処理の仕方もうまく組み込んでいるし、構成もうまくて感心する」
「読み口はライトで、いい話で収めてるが、個人の力ではどうにもできない社会問題や過酷な事件が起こる。弟に顔を刺されるなど、家族・男女間で起こる救いのない事件、しんどさがちょいちょい出てきて、容赦ないところは容赦ないという、塩梅がうまい」
「同じ著者の『屋上であいましょう』『保健教師アンユニョン』(SFファンタジー的な話)も、救いようのない問題が出てくるが、そんな中でも"今日のご飯が美味しかった"とか"空が青かった"みたいな、"救い方"のさじ加減がうまい。ものすごいリアリズムというわけじゃなく、ちょっとだけ浮いている感じ。世の中のままならないことが出てくるが、あくまでやりすごす、問題の解決にはなっていないけど(という描き方をしている)」
「(フィフティ・ピープルは)LGBTがさらっと出てきたり、蜂が耳に入ってしまう夫と再婚した妻と娘が上手くいってる様子など、キャラクターや人間関係の構成がバライティーに富んでいるのも面白い」
「スキル・構成の巧さは一時期の伊坂幸太郎にも似ている。伊坂幸太郎はこうした社会問題を織り交ぜることはないけれど」
***韓国文学について
「フェニミズム的な視点から書かれていることが多く、日本においてはレベルの高い翻訳ができる人が出てきた、かつ売れることが分かって出版されることが増えてきた。韓国文学の重要な訳は、ほぼ斎藤真理子」と教えていただきました。
ここで、「斎藤真理子さんのお姉さんは(文芸評論家の)斎藤美奈子さん」という情報が。確かに強烈な姉妹ですね。
***キャラクター語り
『フイフティ・ピープル』好きな登場人物は?という話題で、私はシュークリーム教授を上げましたが、「生きている限りひそかに司書であり続ける」というキム・ハンナさんの名前も出ました。私も彼女、とても好きでした。「本さえあれば楽しいもん」と、結婚はむしろしたくないという考えにも共感する人は多いでしょう。(ところで、司書の労働環境がよくないのは日本と一緒なんだなあと悲しくなりますね。)
それと、掃除が得意で、夫の足を車で轢いてしまうコン・ウニョンさん。(夫がむかつく発言をしているので)「轢いてしまえばいいねん(笑)」というコメントいただきました。
義理の娘を心配する義母、チェ・エソンさんについては、私はうっとおしい義母のように感じてしまいましたが、次男の嫁ユンナは嫌がっている風もなかったし、みなさんの話を聞いて、韓国は義母もそうした密接な関係を自然に築くのかもしれないなと思いました。まあ、韓国人全体がそうではなく、エソンさん特有の性質かもしれないという意見も出ましたが。
小柄で見た目が子どもっぽい医師、ソ・ヒョンジュはけっこうキーパーソンで、初めから、そして重要な役どころでちょいちょい出てくるということもわかりました。
***チョン・ダウンのお父さんについて
刑務所で医師として働くイ・ドンヨルの回で、「2番めの子どもには会えそうにないですね」と言う慢性心不全の在所者(受刑者)が、ダウンのお父さんではないか、という話が出ました。そこまでは気づかなかった~と感心したのですが、その時はハッキリ結論を出しておらず、「そこまで深読みができる作品」みたいなことで終わらせてしまいました。
しかし読書会が終わってからハッと思い出したのですが、ダウンの回で、たしかにダウンは「パパは(誰かを傷つけて)牢屋に行った」と語っているのです。だから、訳者の斎藤真理子さんがあとがきで「ダウンのお父さん」に触れたことは、やっぱり間違いじゃなかったんですね。(名前が出てこないダウンの父親より、オ・ジョンビンのお父さんの方が、読者としてはインパクトが強いので)
ダウンのパパが傷つけた「誰か」も、チョ・ヤンソンの回をもう一度読むとやっぱり…とわかりました。うーん、それぞれの人生がただの登場人物ではなく、濃い人間ドラマが張り巡らされている…やっぱり凄いです。
***そのほか、話題になった本
『ロンドン謎解き結婚相談所』
『指差す標識の事例』(翻訳のレベルが高い、4人の、語り口が違う人物の視点から書かれていて、4人の翻訳者が訳している。政治と宗教がわかってないと誤訳になるので、校閲がすごい、ミステリーとしての仕掛けがすごい。)
『ザリガニの鳴くところ』
(翻訳者たちに、こういうのを一度は翻訳してみたいと言わせる作品。ネグレストされた女性のヤングアダルト的な話)
『一度きりの大泉の話』萩尾望都(竹宮恵子との同居生活を、「一度だけ」の約束で明かしたもの。少女漫画界のトキワ荘と言われ、映像化などの話が絶えないが、萩尾氏にとっては生々しい傷の記憶で断り続けている。どうしてもと請われ続けることに対し一度だけここで語ることにしたという)
次回の課題本、『おばちゃんたちのいるところ』
(今回のフィフティ・ピープルのようなというかフェニミズム的な側面の切り口で日本の本はあるか、とうかがったところ挙がった本。タイトルはお察しのとおり「かいじゅうたちのいるところ」からつけられたらしい。面白そうで、これも楽しみです。)
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