久しぶりに凄く面白いフィクションをちゃんと読み通したぞーという充実感(笑)まあ、短編ですし。ムダの無い、でもまといつくような文体が良くて、最初のほうだけ声に出して読んでしまいました。
戦争で手足を無くし、頭や顔も無残な状態の夫の世話をひとりで看ている妻・時子の、鬱屈しゆがんだ感情と愛憎が描かれています。なんというか、大人の刺激があるハナシです。
耳も聞こえず口もきけずという夫は、目だけが常人どおり。であるがゆえに時子は時にその目に対して口には表せない感情を抱くようになります。
破滅的な話のわりに、時子はわりとまっとうな態度でおろおろと許しを乞うたり、他人に助けを求めたりするのが却って新鮮でした。ただただ冷たく突き放すのもありだろうと思うのですが、時子も普通のひとであり、一時の衝動に流されたりはするけれど夫に対する情がないわけじゃない。人間の感情の単純でないこと、複雑さを感じます。
それと、文中何度も出てくる「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」ね。これ、ここになにを入れるかでその人の妄想力が試されるといいますか。伏字にされてしまった箇所(初版時は伏字にされて発行されたそうなので)なのか、戻してこれなのか分かりませんが、とても気になります!
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