花日和 Hana-biyori

せかいでさいしょに ズボンをはいた 女の子

作:キース ネグレー/訳:石井睦美 /光村教育出版


Twitterで見かけて買ってしまいました。読み聞かせに使えそうだし絵がセンスよくてすてきと思って。時間は解説を含めると10分、本文のみで約7分でした。

内容もとてもいいです。

女の子がズボンをはくのがゆるされていなかった180年ほど前、女性ではじめてズボンをはいたひとりと言われる、メアリー・エドワーズ・ウォーカーという実在の人物のおはなしです。

きゅうくつなドレスをやめて、ズボンをはいたメアリーが町にでると、人々はメアリーを激しく責めます。学校の前でも「男の子の服を来ているからダメ」と勉強するのさえ禁じられるしまつ。しかしメアリーは、
「男の子のふくをきているんじゃないわ」
「わたしは わたしの ふくを きているのよ!」

と言い返し、学校に入ります。教室でも同じだと覚悟してドアを開けたメアリーですが――。

***

みんなに責められてへこたれないように見えるメアリーですが、「みんなのことばがむねにささった。」など、彼女の不安や葛藤も丁寧に描かれています。ただの説明ではなく、物語としての緩急がちゃんとしているといいますか。メアリーの悲しみを通して、集団で糾弾することの醜さも伝わってきます。

好きな場面は、お父さんと話し合うところ。彼女のお父さんはすてきな人で、ズボンをはく娘を否定せず、
「にんげんって、あたりまえだと おもっていたことが かわってしまうのがこわい んだよ」

と諭したり、迷うメアリーにドレスをはけとは言いません。メアリーに判断をまかせ、静かに見守っている感じです。

親としてなかなかこういう態度でいるのは難しそう。娘が批判されるくらいならと、多数派になびいてしまいがちですから。

しかし、親がどうあれ意思を貫く姿勢はすごいです。グレタ・トゥ-ンベリさんを思い出しますね。責めらても、決して間違ったことはしていない。そういう姿勢から、徐々に周囲の理解が得ていったのでしょう。

絵本では都合上あっという間にいい感じの世界になっていますが、当時は相当過酷な状況だったでしょう。いまだに制服の規制があることを考えると、人間って着るもので属性を強力に規定しているんだなあと改めて思います。

巻末にウォーカーさんの解説が載っていましたが、写真はズボンをはいた堂々たる立ち姿。南北戦争に医師として従軍したといいますから、傑物であることは確かです。

はやく教室で読み聞かせ出来るようになってほしいなあ。
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