スーパーコンピュータというか、地球シミュレータのことが話題になっていました。ちょっと前ですけど。いちおうまだリンク繋がりますね。
asahi.com:「地球シミュレータ」部品交換で能力2倍に 海洋機構
かつてスーパーコンピューター世界一に輝いた海洋研究開発機構のスパコン「地球シミュレータ」が来年度、演算装置などの心臓部を最新のものに置き換えることになった。計算能力を現在の1秒間に約40兆回から80兆~100兆回に上げることを目指す。
計画では概算要求中の来年度予算で維持費とは別に5億円を計上し、640台ある演算装置(計算ノード)の半数など主要部品をレンタルで更新する。残り半分はその時点で運用を終える。完成した02年以降の技術進歩で、半数の演算装置でも現在の2倍以上の計算速度が期待できる。電気代も現在の7~8割程度になり、維持費は現在と同程度ですむという。
性能向上で、従来同様、温暖化予測などに貢献できるとしている。
02年~04年に計算能力世界一だった地球シミュレータも、今月発表のランキングでは30位。国内でも東京工業大のTSUBAME(16位)を下回る。1秒間に100兆回の計算能力なら同ランキングで8位に当たる。文部科学省は世界一奪還に向けて、1秒間に1京(けい)回(1兆の1万倍)の計算能力を持つ次世代スパコンを神戸市に建設、10年度に稼働させる計画だ。
気になったのが最後の段落。次世代スパコンで世界一奪還ですか。うーむ。しかも、神戸市に建設だったんですね。うむむ。以前にも書きましたが、神戸って意外や(でもないか)重厚長大な土地柄なんですよねー。
下記リンクに経緯が書かれています。新聞記事は紛らわしいですが、地球の温暖化シミュレートだけをやるわけではないみたいなカンジ。
現在、地球シミュレータがあるのは、横浜です。
実は前々回のIPCCレポートの勉強会の後で、ちらっとこの「地球シミュレータ」の話題が出たんです。
ワタシのような素人は(てか、ワタシだけ?)、地球シミュレータ=スパコンとは知らなかったので、温暖化や気象予測の根拠となるデータを解析する方法について話しているとき。
「データだけを増やしていっても仕方ないんだよ」
「えっ?でもデータをとる網の目を細かくしていかないと、日本なんて埋没しちゃうんですよね」
「まさしく、そういう理由からスーパーコンピュータの導入が推進されるんたけど、データだけ増えて、人に対する予算が投入されないので、理論的な理解がまったく進んでいかない。それでマナベさんもアメリカに行ったんじゃないかな。推測だけど」
「スーパーコンピュタってもう実際に動いてるんですか。」
「地球シミュレータだよ」
「あっそうなんすか」
うーむ。地球シミュレータで速度だけを競っても意味ないじゃんと思うんです。スパコン=速度、地球シミュレータ=スパコン、したがって地球シミュレータ=速度という議論なのかもしれませんが。
問題なのは、多くの変数(例えば温度、湿度、風向き、風速だけでなく、過去のデータやさまざまな条件)を飲み込んだ従順な計算機に過ぎないスパコンの排泄物から、結局、今は人間だけが大気現象を読み取ることができ、理論的理解に至ることができるということ。そして、その人間の数が足りないんじゃないかということ。
もうひとつ、最新はどうなってんのかなと思うのが、格子点の幅。
シミュレーションでは複雑な大気の状態をコンピュータに写し取るために、地上大気を三次元の格子点で代用するのですが、これが粗くなるほど、現象は単純化されて計算されます。
有名なハンセンのモデルは、経度八度という格子点の幅ですが、これは北米の気候変動の予測をいちばん効率よく算出するためという目安で決められた可能性があると言われていました。
これはずいぶんと古い話ですが、この幅だと「雲の影響」はほとんど切り捨てられてしまうと言われていたし、日本列島さえも、太平洋の海中に埋没してしまうと。
まぁそうして、格子点の幅を細かくしていった結果、スパコンの速度と容量の限界が云々という話になってきたし、これからもなっていくのでしょうか。よくわかりませんな。
5号館のつぶやきさんのところでもエントリーが立ってました。重厚長大なものって、スプリング8もそうなんですが、一般感覚としては電気代とか気になりますよね。
分野によってコスト感がピンキリだからというコメントやら、小回りのきくコンピューティングにしても開発費はバカにならないというコメントもあり、一概にどっちがいいのかよくわかりません。
そもそも、地球シミュレータの格子点の幅がどうなっているのかは知りませんが、大雑把な網の目から得られたデータでいいから、まずモデルを創成することを第一目的とすべきなのかどうか。その間、網の目からこぼれ落ちた地域・事柄は埋没するしか仕方がないのかどうか。
話は微妙に飛びますが、地球環境問題を、「地球全体」で押しなべて(平均値で)考えていいのか、それはあまりに不公平じゃないのかといった議論は、グローバル・イシューに成り立ての頃から、さんざん議論されていたことで、ようするに、地球環境問題=南北問題であり、あるいは、先進国vs発展途上国の問題であり。
...そんなワケで、最近になってからも、中国の首相がアフリカでの会議に出ていて、「発展途上国同士で頑張りましょう」などと演説しているのを聞いても、「ほへー、さすがに華僑なり~」と妙に感心してしまうわけですが
昨日の「爆問学問」は、タイミングよく気象学の先生でした。「雲の話」をもっと聞きたかったのですが、太田さんが珍しく、ズブの素人状態だった(地球の自転さえ意識していなかった)ので、まったく深い話にはなりませんでしたね。残念。
追記;地球シミュレータの特集記事、みつけました!
この追記の記事が書かれた頃には、地球シミュレーターがもうすぐお払い箱になることはわかっていたのでしょうが、そんなことには露も触れていないところに妙な感動を覚えてしまいました。
限りある税金の使い方ですから、みんなで考えたいものだと思います。
科学者はお金に関することに対しては明らかに不機嫌になりそうな気がして、質問を躊躇しちゃいますね。
かと言って、コミュニケーターに説明責任があるとは思えないし。(逆にツッコミを入れるコミュニケーターの姿は想像できます)
そんなワケで、ここは納入企業に説明してもらいたいものです。利権が動いているならば大問題ですし。
何より、こういった「公共事業」は諸費用すべてをオープンにしてほしいです。
サイエンスカフェで研究にかかるお金の話を取り上げてみるのも面白いかもしれません。
費用対効果の問題もありますが,一方で,国策の力業が背景にあって,初めて進む分野もあります。善し悪しは別にして,先端軍事技術開発など,傍目から見ると,コスト度外視にしか見えませんけど。
「戦艦大和」で何をするつもりなのかが問題ですよね。まさか力比べだけのために作るわけではないだろうからと思うのですが、理研の記事を読んでも目的がいまひとつ見えません。
こんな巨大スパコンより、小規模?のスパコンを主要研究室に配置したほうがいいという意見もどなたかが書かれていましたが、たしか大和の頃にもそういう考えがあったと記憶します。
大和の巨大な図体が、疲弊しつつあった国力のすべてを吸い尽くしてしまったわけで、ホント最悪だと思います。
先端軍事技術開発をやっている研究者って、ワタシから言わせてもらうと「悪し」なんですけど
スパコンの戦艦大和「京速計算機」
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/7a0b5fd9f33ff6d2be7f8e8255b7007f
「要するに、これはスパコンの名を借りた公共事業であり、世界市場で敗退したITゼネコンが税金を食い物にして生き延びるためのプロジェクトなのである」とのことで、まったくその通りとうなずきっぱなしです。
池田さんのBlogは、5号館同様人気スポットですね。コメントも大変参考になります。
納入前なので今からでも遅くないというコメントがありましたが、どうなのでしょうね。
池田のような反IPCC活動者にとって目障りなシミュレーションを封殺する反科学主義的動機に基づいた煽動なんぞをまともに考慮する必要などどこにあるのか。
解析する人間を増やす事が必要なら、その予算どりとデータ精度向上とは並列でやればいい話であり、選択をしている時点で煽動者の意図に負けている。ヒグマ道路作る金を科学予算に回せと言うだけで済む話だという視点から考え直しなよ。
人間への予算と計算機への予算が両方取れたらいいんでしょうけど、なかなかそうもいかないんですよね、よく知りませんが。おっしゃるように、どこか他の分野の予算をブン取らなきゃ無理なんでしょうね。
そこで、関連の方々は「本当に必要なのか」ということ、「何に利用されるのか」ということを周知説明する努力が必要と思います。いや、義務かな。税金ですから。
それとは別に、利権が動いているようならば問題です。
池田さんが反IPCC活動者とは知りませんでした。あんまり読んでいないものですから。
ただ今回も、入札にして外資のITが受注していたら、もっと安かったはずという話を披露されていたと思いますが、これは、池田さんのこれまでの思考パターン(大枠でしか知りませんが)から考えると、容易に推測できる主張です。
まぁどちらにしても経済学者さんですからね。