すこぶる…日記 

室長のアートな日々

ブックガイド

2015-04-28 21:04:25 | 日記
 以前、テレビのトーク番組で、出演していた俳優が、加藤大介著「南の島に雪がふる」を絶賛していたので読んでみたいと思っていたら、タイミング良く最近「ちくま文庫」から刊行されました(ラッキー!)。即購入して読みました。

 舞台、映画、テレビなどで活躍した昭和の名優「加藤大介」(1911~1975)が、32歳の時に太平洋戦争に召集され南方(西部ニューギニアのマノクワリ)に送られた時の体験を綴ったもの。南方と言えば漫画家「水木しげる」の戦記「総員玉砕せよ!」などで知られている様に、過酷な激戦区だったが、西部ニューギニアのマノクワリは、攻撃はされてもアメリカ軍の上陸はなかった。しかし、食料の供給が断たれていたので飢餓や病気(マラリア、デング熱、赤痢、熱帯性カイヨウetc)に苦しめられた。そんな兵士に元気をだしてもらおうと加藤大介を中心に劇団(マノクワリ歌舞伎座)を立ち上げる。

 その劇が生死をさまよう兵士たちに勇気を与え、人間らしさを取り戻させた。そんな劇団の活動を支えた上官の杉山大尉がこう言った「娯楽じゃない。生活なんだよ。きみたちの芝居が、生きるためのカレンダーになっているんだ。演分(注・演芸分隊)は全支隊の呼吸のペースメーカーだぜ。そのつもりでガンばるんだ」そして、劇団員も必死で答えた。そんな活動の中で生まれた数々のエピソードに感動しました!

 また、それと同時に国家に捨て駒にされた兵士たちの悲惨さも伝わってきて、この本は、戦争の貴重な記録だと感じました。戦争体験者が少なくなっている現在に一人でも多くの人に読んでもらいたい本です。

 ゴールデンウィーク中、本を読もうと思っている人にはぜひぜひ!

旅、町歩き

2015-04-22 21:20:02 | 日記
 先日、川本三郎著「東京暮らし」(潮出版社)を読了しました。川本氏のエッセイを読むと、旅や町歩きの楽しみ方のヒントが載っていてとても参考になる。たとえば...。

 ― 懐かしい風景がいま、どんどん消えている。それだけに町歩きは難しくなるが、逆に稲毛で、昔の海の家を見つけ出した時のような、うれしい驚きがある。「新しい」世の中で、子供時代を思い出させてくれる「古い町」に出会うと本当に、ほっとする。私にとって、町歩きとは、あくまでも「古い町」に出会うことである。「隠れ里」探しに似ている。きんぴかの町のどこかに、隠れるようにして「昔の町」がある。それが私の町歩きである。 ―

 ― 映画も好きだし旅も好き。そういう人間が映画を見ると、どこでロケされたのか、舞台になった町のことがとても気になる。とくに鉄道や駅が出てくると、そこに行ってみたくなる。以前、雑誌「旅」がJTBから出版されていた一九九八年から九八年にかけて、「映画の舞台へ」と題し、日本映画の名作のロケ地を訪ね歩いたことがある(九八年に「日本映画を歩く」と題し単行本になって出た)。小津安二郎監督「東京物語」(53年)の尾道。五所平之助監督の「挽歌」(57年)の釧路。木下恵介監督「カルメン故郷に帰る」(51年)の群馬県の旧草軽電鉄跡。今井正監督「ここに泉あり」(55年)の群馬県の上野村など十三ヶ所を旅した。映画が作られてから五十年ほどたっているのだから、、もう風景が変わっているかと思ったが、思いがけずに、映画のままの町並みや風景が残っているところがいくつもあり、それには感動したものだった。 ―

 ― 一人旅の良さは目的地に着くことより、過程を楽しむことにある。列車のなかでは本が読める。目が疲れたら風景を見る。この季節、東北は田植えの終った水田が美しい。列車の旅には駅弁というささやかな贅沢もある。水田の緑を眺めながら、弁当のおかずを肴に缶ビールを飲む。待ち時間の楽しみもある。地方の旅は、列車やバスの本数が少ないから、どうしても待ち時間が長くなる。仕事の旅の場合は不便だが、仕事と関係ない旅では長い待ち時間も悪くない。町に出て商店街を歩いたり、駅前食堂でビールを飲んだりする。 ―

 ― 夏の町歩きは汗をかく。幸い下町には銭湯が多い。バッグにはタオルと石けん、それに下着、シャツの替えを入れている。玉の井には盆休みをとらずに営業している銭湯があったので、そこに飛び込む。夕暮れどきで空いている。客は私を入れて十人もいない。広い湯船に湯はたっぷりで温泉気分を味わった。

 ― そんな時、昔の本を持って小さな旅に出る。東京を少し離れ、ひなびた温泉や海辺の宿で、現代から離れた昔の本の世界に浸る。そんなとき「生命が延びたような気」がする。<中略> それよりも、小さな町を歩いていて、思いがけずに見つけた古書店を覗くのが楽しい。老主人がいればなおいい。そこでは本が「仕事」や「情報」「勉強」ではなく、ただ老いの楽しみごととして慎ましく置かれている。 ―

京都異国遺産

2015-04-15 21:19:01 | 日記
 先日、京都の仁和寺に行って来ました。目的は、春と秋に公開されている霊宝館の名宝展です。もちろん仏像ファンなので一番見たかったのが国宝阿弥陀如来坐像及脇待(観音菩薩・勢至菩薩)立像です。その他に愛染明王坐像、吉祥天立像、文殊菩薩坐像などを見る事ができました。

 そして、館内を巡っていたら中国から伝来した東洋医学の文献を発見!これは、仕事がらうれしかったです。特に、正人明堂伏人明堂図(人体のツボ、エネルギーの流れを表したもの)は、思わず集中して見てしまいました。

 その後、境内を巡って五重塔、金堂、御影堂そして満開の御室桜も見ることができ良かったです。そして、最後にサプライズが!御所「九所明神」を祀ってある場所に行った時に、鶴岡真弓編著「京都異国遺産」(平凡社)に掲載されていた「キリシタン燈籠」が建っていたんです!

 ― 「キリシタン燈籠」とは、笠の張り出しが十字架に見え、竿部に聖人や宣教師像を彫ることもあるため、キリシタンの礼拝物だったのではないかというのが一般的な説で、「織部燈籠」の形を共有する。しかし仁和寺のものは、茶人、古田織部が考案した、つくばいの鉢明りとして使用する燈籠に倣っていてもスケールとデザインの強調において、明らかに異なっている。
 頂の部分に宝珠を載せ、むくりをやや付けながら大きく張り出す笠、立方体に近い火袋、それを支えるゆるぎない中台、なによりその下には楕円を横にしたときに現れる、張りのある孤線を突き出したバロック的な竿上部の装飾。その高さもさることながら、竿部の幅や厚さは、ミケランジェロも驚くような、西洋彫刻的な量感の強調をもち、見るものを圧倒する ―

 ― 仁和寺に「キリシタン燈籠」が建った原因には、したがって ①「九所明神」のために燈籠を新たに建立する際、仁和寺という寺が異国文化をつねに進取するセンターとして役割を果たしており、織部燈籠のたかさをはるかしのぐ、竿部が長くモ二ュメンタルな「キリシタン燈籠」を設置することによって、その寺格の象徴を増大させた。 ②巨大に際立つ燈籠の設置には宗教的な理由も加味されており、京における異国と日本の狭間で宗教的受難にあった人々を(キリシタンの側からではなく)国際文化に接していた仁和寺ならではの表現方法として「キリシタン燈籠」を建てた、など、推測することも許されるかもしれない。 ―   「京都文化遺産」 本文より

 改めて京都の歴史や文化の奥深さに感嘆しました。これだから、これからも京都寺社巡りは、やめられません。

野田秀樹

2015-04-08 21:40:23 | 日記
 先日、野田秀樹 作・演出 椎名林檎 音楽 Noda・Mapの舞台「エッグ」を見て来ました。

 野田秀樹と言えば、「夢の遊眠社」の時代からずっと気になる存在でしたが、今回ついに野田秀樹の舞台を初体験しました!

 場所は、シアターBRABA!前回は、ここで大人の新感線(大人計画×劇団新感線)の「ラスト・フラワーズ」を見ましたが、席が2階席の後ろ、でも今回は、1階の左寄りでしたが前から六番目でしたのでよく見えました(ラッキー!)。

 内容は、「エッグ」という架空のスポーツでオリンピックを目指す選手たちと歌姫をめぐる物語。前半は、私自身この劇の世界に入っていきづらく戸惑っていましたが、後半に入って全容が見えてくると、がぜん引き込まれていき、終わりを迎えた時には感動・感動・感動でした!

 この劇で、スポーツと音楽の熱狂を国家が利用して、国民を戦争に向かわせるというあやうさが表現されていて、今の日本の政治状況に警鐘を鳴らしているんだなと思いました。

 そんな劇に出演した役者陣(野田秀樹、妻夫木聡、深津絵里、仲村トオル、秋山菜津子、大倉孝二、藤井隆、橋爪功etc)の熱演も素晴らしかったし、カーテンコールも5回ぐらいあり興奮しました。また、Nada・Map見たいなと思いました。

 生で見る演劇は、最高ですね!

格闘本

2015-04-01 20:56:31 | 日記
 先日、増田俊也著「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上)(下)」(新潮文庫)を読了。この本タイトルのインパクトと話題性で読もうと思いました。

 不世出の柔道王「木村政彦」が戦争によって翻弄された数奇なる運命を描いたノンフィクション作品。

 「牛島辰熊」(柔道の師)×「木村政彦」師弟悲願の天覧試合制覇への道。

 「木村政彦」×「力道山」(プロレスラー国民的スター)昭和の巌流島遺恨試合の真相。

 「木村政彦」×「エリオ・グレイシー」(グレイシー柔術の父)ブラジル、マラカナンスタジアムでの世紀の一戦の検証。

 「木村政彦」×「岩釣兼生」(弟子)師弟プロレスリベンジへの道。

 極真空手の創始者「大山倍達」や合気道養神館の塩田剛三も登場!これは、格闘技の戦前・戦後史の貴重な記録でもある。

 格闘好きにはたまらない内容です!

 格闘技と言えば、夢枕獏著「東天の獅子 全四巻」(双葉文庫)も面白い。この小説は、嘉納治五郎が創始した柔道の黎明期を舞台にして、講道館四天王と古流柔術の猛者たちとの生き残りを賭けた死闘が描かれていてワクワクします。また、琉球空手の達人や大東流合気柔術の創始者の武田惣角も登場!その上、柔道の歴史も学べます。こちらも、おすすめです!

 格闘技に興味がない人にはぜんぜん面白くないテーマでした(笑)。