『ボトル・ラック』
レディ・メイド:ボトル・ラック、鉄に亜鉛メッキ、64.2㎝
白(銀白)のボトル・ラックは美しい均整を保ちながら光り輝いている。瓶かけは保存ではなく空き瓶掛けであれば、使用済みを掛けて置く装置である。しかしこれを見たデュシャンは実用的な日用品の持つ隠喩めいた空想に置換したのだと思う。
並べて上方を向いているこの角度は単に鉄の棒の傾斜に過ぎないがデュシャンは精巣(睾丸)の勃起の擬似と見たのではないか。等しく並んだ数多の精巣の勃起、愉快で皮肉めく光景である。あちらでもこちらでも世界中の精巣の勃起が地球の大家族を生んでいる。
生きとし生きるものの連鎖、歴史、世界の根源である精巣の勃起、しかし、受胎すべき女性の存在を欠くこの装置。
デュシャンの妄想は『ボトル・ラック』に意外な接点を見つけ、深く悩み深く肯いたのではないか。
写真は『DUCHAMP』TASCHENよりジャニス・ミンク




