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新・浜田節子の記録

デュシャン『罠』

   『罠』
 レディ・メイド:木製コート掛け、床に固定、11.7×100㎝

 床に固定された木製コート掛けを『罠』とタイトル。
 コート掛けは完成品(レディ・メイド)である。破損しているわけではない。しかし床に固定とあらば歩行に邪魔であり、使用目的を果たせない。

 製品(レディメイド)は使用目的に準じて生産、消費される物である。需要によって供給された物であるコート掛けという日用品が床に転がっている景は奇妙である以上に不要な異物である。

 製品にはそれ相応の相応しい場所を得ることが必至。製品は人の需要にこたえるものであり、使用は人の生活に利便性を与えるものでなければならない、にもかかわらず人の動きを制する床に設置とは。

 『罠』、人を騙す企み、謀である。獣を捕らえる罠、仕掛けとは考えにくいが(コート掛け)が餌や好物であるはずもなく、気づかずに躓くケースもママあるかもしれない。
 用途に不適切な場所に設置されたコート掛けはストレスとなり不要の長物と化す。役に立つはずのものが役に立たないばかりか嫌悪の対象に落ちてしまう不条理。室内の床に置かれた(コート掛け)への困惑。

 (コート掛け)は有用なものであるが、違えた位置(平坦な床)に設置された(コート掛け)を過る人はまさか転倒を予期させる罠だとは思わないが、適切な設置を意識する。
 そうするべき責務を外した物への蔑視は免れない。

 違うことへの抗議、蔑み、憤懣は位置を違えたという常識(通念)の欠如と見なされる。コート掛けは明らかに完成品である、にもかかわらず《負》の対象になる。
 個の存在が然るべき場を違えたという理由で蔑視に陥るという恐ろしい現場である。
 『罠』は見えない心理を衝いている。

 写真は『DUCHAMP』TASCHENよりジャニス・ミンク

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