らんかみち

童話から老話まで

歯痛は腕から

2009年03月18日 | 暮らしの落とし穴
 肩が凝って気が狂いそうだったので、といっても経験した人でないと分かってはもらえないでしょうが、その痛みが歯にまで魔の手を伸ばしてきたので整形医院に行きました。
「あのねえ、肩凝りから歯が痛くなることはありえないんですよ」
 先生からは聞きなれたセリフが帰ってきました。たしかに歯が良いとは言えませんけど、肩凝りが原因で歯が浮いた感じになって痛むことだってあるんですよ、と医者を啓蒙しようと試みるのは釈迦に説法って? 肩凝りを知らない医者に何を言っても無駄ってことはありますよね。
 
 整形医だけでなく歯医者も似たようなもんですが、歯医者は「歯が悪くて肩が凝ることはあります」と言うもんだから「それみろ、繋がってるんじゃないか」と言っても聞く耳は持ってくれません。
 結局、整形医院では鎮痛消炎剤と抗生剤を処方してもらったら痛みには良く聞きましたが、肩凝りは治りません。意を決してあんま屋さんを目指して歩き始めました。
 
 つづく

啓蟄のやせ我慢

2009年03月17日 | 暮らしの落とし穴
 啓蟄を迎えて地上に姿を現した虫たちが「しまった、遅刻じゃないか!」と一斉に慌てたであろう今日の陽気にそそのかされ、ぼくもストーブとホットカーペットを仕舞い込みました。

 でもね、ゴルフ場で遭難しかけたの確か7、8年前の今頃だったと思います。ゴルフ場に行くまではどうってことなかったし、着いてからも「少し薄着しすぎたかな、まあプレーしてたら温もるか」なんて言ってるうちに雪がチラホラ。
「昼飯に熱燗をつけてからでないと午後からのプレーはできんぞ」と、クラブハウスもどったものの、予定の1合が2合3合になったころ、「おい、カラーボール持ってきてるか?」というほどの本降り。

 午後のスタートをするや否や、1ホール目で50ヤード先のピンも見えない猛吹雪に見舞われ、「眠るな! 眠ったら死んでしまうぞ」と、ドッペルゲンガーに、たったいま後にしたばかりのクラブハウスに戻るよう促され、我々3人はすんでのところで命拾いしました。

 あのときのことを思い出すと、今日の春支度はやや勇み足だったかもしれませんが、家の中で遭難もないでしょうから、しばらくはやせ我慢する構えです。

飛青磁を目標に

2009年03月16日 | 暮らしの落とし穴
 陶芸の先輩から電話があって「おまえの汚い作品など見とうない」と、自分で引いた安宅コレクションの贋作の写真を送ってきました。
 といってもこの写真は、大阪市立東洋陶磁美術館で展示された『安宅コレクション』から『飛青磁=とびせいじ』ですが、さすがに国宝、美しい! 
 この形は『玉壺春=ぎょくこしゅん』というらしく、世界に類似の品は三つあるそうです。次からはこの形を目標に徳利を作ってみたいと思っていると、
「おまえの技術じゃ、百年経ってもムリムリ」
 などとプッツンしそうなことを言われるのもしゃくですが、電話で陶芸の技術を論じても伝わりません。かくなる上は作品で知らしめるしかないということでしょう。

昨日のエゴにはさよならを

2009年03月15日 | 社会
 ドラマ『ラブレター』の舞台となった小豆島も今、ダム建設予定地の強制収用問題で揺れてます。「なんで今のダムじゃダメなのか。治水にも利水にも役立たないじゃないか。景観の破壊、自然破壊だ」などなど、住民に説明できないダム建設が始まろうとしてますが、水漏れするダムというのもひどい話ですね。
 
熊本のダム、水が貯まらない 4年たっても給水できず(朝日新聞) - goo ニュース

 こちらのダムは住民が待ち望んでいたのならまだしもですが、ダム建設の土地が当初予定されていたのと異なって、某という政治家と関係のある団体があらかじめ買収していた土地に移った、なんてことが背景にあったとしたら、とんでもない。もちろんぼくの憶測に過ぎませんが、農林水産省と聞いただけで猜疑心が止まりません。
 
 小豆島の内海(うちのみ)ダムについては、よそ者のぼくでもこれはおかしいぞと思ったので反対署名をしました。でも調べれば調べるほど複雑な問題が絡み合っていて、建設反対が正しいのかそうでないのか分からなくなってしまいます。

 近年、鉄鋼需要が急激に伸びて国内の製鉄所がフル稼働した結果、大量の鉄鉱石のくずが産出されてきました。このくずは鉄鋼スラグと呼ばれ、数年間ねかせると無害になるのだとか。で、そのねかせる場所をめぐって全国でトラブルが起きているんです。この島にも持ち込まれたことがあるので他人事ではありません。
 
 住民運動や応援してくださる方々の努力が実ってうちの島からは消えたスラグですが、どこへ行ったのでしょう。あちらこちらをたらい回しにされたスラグ、最後はコンクリートに混ぜて埋め立てやダム建設に使われると聞いてます。

 またうちの島は御影石の産地でもあるんですが、山を爆破して石を掘り出してもほとんどがくず石で、墓石に使えそうな綺麗な石は20パーセントほどしか採掘できないそうな。じゃあくず石は山に埋め戻すのか? そんなわけないです。やっぱり埋め立てとかに使われるそうです。
 
 つまりダム建設などの大規模工事は、日本が成長する過程で排出するゴミの受け皿、ごみロンダリングの優れものというわけで、もしその工事が無くなってしまったら日本中にごみがあふれかえるのかもしれません。

 そう思うと、うちの近所にごみを持ってくるな、ごみ処理のダムも作るな、というのはエゴイズムでしょうか。どこかにごみを処分しないといけないからといって、外国に押し付けるなんてのは、今までも国際的な非難を浴びてきたあからさまなエゴでしょう。
 
 日本が成長したくないのなら解決は難しくない問題かもしれませんが、豊かである続けたいと願うなら、こういったジレンマを解決するのは困難に思えます。
 ダムにや埋め立てに反対するのは分かりやすい正義ではあっても、それだけで果たして良いのでしょうか。戦後復興から高度成長期を経て大規模な土木工事が一段落した今、ごみ処理と公共工事について日本全体で考えないといけない時期にさしかかっているのです。

なにがご当地グルメじゃ!

2009年03月14日 | 酒、食
 当地愛媛県は今なぜか八幡浜市ブーム。八幡浜ちゃんぽんや、はらんぼのじゃこ天なんかがメディアで取り上げられ、ついに田舎のスーパーにもその波が押し寄せてきました。
 でもこれ、自然発生的に訪れたように見えて、実は仕掛け人がいる人工的なブームなんですが、今治の焼き鳥と同じように外地の方々は易々と乗せられてしまうようです。
 
「鉄板で焼く今治の焼き鳥が美味いかって? 炭火焼の方が美味しいに決まってるよ」
 聞かれてそうは答えるものの、今治に来て今話題の焼き鳥とせんざんきを食わずして帰れるか、みたいな強迫観念をできるだけ満足させてあげようとは思ってます。でもね、期待して食べるから喜びもひとしおなのであって、何も知らずに食べて感動できる人は稀でしょう。
 
 先日ご当地グルメの仕掛け人と飲む機会があって、きっとユルキャラに違いないと思っていたら、想像以上だったのには驚きました。氏いわく「次は、焼豚玉子飯を流行らせますよ」との言葉どおり、最近スーパーの弁当売り場に並び始めました。

「焼豚玉子飯というのはどういうものか、美味いのか?」
 知り合いからさっそくお問い合わせをいただき、「想像してみろ、美味いわけが無いだろうが」とは答えるものの、親切なぼくは嘘つき呼ばわりされているに違いありません。そして今日も軽薄なB級グルメのバスターたちが今治にやってくるのでしょう。でもこういった愚かな連中を笑うことはできません。だってぼくも今日、八幡浜ちゃんぽんとじゃこ天を買いに走ってしまったのですから……。

この手口は使えるよ

2009年03月13日 | 酒、食
歌舞伎町昏睡強盗バー…96度の酒で客泥酔、経営者ら逮捕(読売新聞) - goo ニュース

 病院回りの営業マンだったころ、ある大病院の入院薬剤部に行くと、調剤台の棚にポッカレモンが置いてある。「あれは矯味剤に使うのですか」と、入院薬剤部長に聞いたら、「私が当直の夜に飲むために置いてます」
 初めその意味が分からなかったんですが、ポッカレモンの隣には局方エタノール。その隣にあるのは精製水じゃないですか。つまりくだんの部長先生、レモン風味の水割りを作って飲んでいるらしいのです。
 
 当直中に飲んでいいのか、という問題はさて置き、「美味いんですか?」というのが真っ先に浮んだ疑問でした。「君ぃ、日本薬局方のアルコールに、同じく局方の精製水だよ、舐めてはいかん」とおっしゃったので、意地汚いぼくとしてはさっそく実験してみました。まあ……すっきりして飲みやすいといえばそうですが……。
  
 昏睡強盗に使われた『スピリタス』というのはウォッカで、ぼくも使ってます。もちろん昏睡強盗にではなく、機械を洗浄したりといった一般用途にです。薄めずに飲めといわれて飲めないことはないんですが、相当なチャレンジ精神と酒通を自認した痩せ我慢を必要とします。でもカクテルにするなら、くせが無くて重宝しますね。つまり、アルコール度数が高くても分かりにくく、だまして酔わせるにはもってこいでしょう。
 
 知り合いがこの手口で女をモノにしようとしたことがあるそうです。実に卑劣な男ですが、結果は自分が先に酔いつぶれたほど女の方が圧倒的に酒が強かった。介抱され、反省し、挙句の果てに結婚に至ったのは、女の方も同じ手口を駆使したからでした。早い話が、相思相愛だったと。
 スピリタス、いざというときのために常備しておきたい1本です。ちなみに、局方無水エタノール、局方エタノールは飲めますが、消毒用エタノールは飲めません、念のために。

文章を書く器用さがあるなら

2009年03月12日 | 童話
 とっくりの高台を削っていたら陶芸教室の先生が「これ、あんたが作ったの? う~む……才能があるのかな、いやあるんじゃろぞい」とおっしゃったんですが、陶芸の才能ってなんでしょう。
 
 音楽なら、絶対音感、リズム感、美しい声、などなど、持って生まれた才能が必要だとする考え方もありますが、関係ないと思います。どれもこれも先天的というよりは、努力で獲得できるものばかりじゃないでしょうか。
 
 もし才能を云々するなら、努力できる才能があるかどうかの一点に尽きると思います。言い換えれば好きかどうか、楽しいかどうか。楽しければ努力を苦労と思わないばかりか、苦しさを楽しさに変換できてしまうんでしょう。
 
 今のところ、ろくろを回すのが苦しいとは思いません。こんないい加減な取り組みでやってられる工芸って他に無いよな、と楽勝気分なんです。だって、ろくろで失敗しても土に戻せば済むことなんですから。
 
 あと少し、もう少しだけ良くしたい。そう思ってプラモデルを組み立てていて、ポキっと何度やったことでしょう。余計なことをやらなければ上手く行くのに、ぼくは余計なことをやりたくなって失敗するタイプなんです。
 
 器用なだけでろくろを回せる陶芸もそうですが、文芸も何度でもやり直しがききます。デジカメで撮影した写真が気に入らなければ消して上書きする。恥ずかしい作品が残ることも無い。それと同じで、文芸ほどぼくに向いてるものも無いような気がします。文章を書く器用さが、もしぼくにあれば、無ければ努力しか……。

醜聞戦の幕開けか

2009年03月11日 | エンタメ
中原誠・十六世名人が引退、5つの永世称号保持(読売新聞) - goo ニュース

 ぼくが将棋を覚えたのはまさに中原時代なので残念ですが、引退することでむしろ露出の機会が増えるんじゃないでしょうか。露出といっても米長将棋連盟会長のように鳥取砂丘で脱いだりすることじゃなく、体が不自由でも引っ張りだこになるだろうという意味です。
 
 願わくば体を治して、来年にでもあるらしい将棋連盟の理事選挙に立候補してもらいたいもんです。かつて会長を務めたこともあるんだから、また選ばれても不思議じゃない。それに故大山康晴会長が中原さんに「あいつにだけは会長をやらせるな」と言い残した御仁を会長の椅子から引きずりおろすと見るが、どうでしょう。
 
 中原vs米長といえばぼくらの時代のゴールデンカード。判官びいきということもあるかしれないけどぼくは、中原さんに負け続けた米長さんのファンで、その奔放な指し回しにあこがれて氏の本を買って勉強したもんです。
 ですがそれは盤上でのこと。将棋指しはなにも盤上だけで勝負しているわけではなく、盤外で戦っているんですが、そこでならぼくは中原シンパです。
 
 名人の座にあった中原さんを降ろし、一度はその座を襲いはしたものの、林葉直子さん争奪戦では中原さんの後塵を拝して恥をかかされた格好の米長会長が、中原さんの放った引退の一手を受けてどんな手を用意しているでしょうか。将棋ファンのみならず、ゴールデンカードの復活(あるいはスキャンダル戦)に期待を寄せるメディアは多いはず。今年は将棋界の動向から目が離せない1年になるかもしれません。

ビッグコミック深夜食堂に物申す、つもりは無いけど

2009年03月10日 | 酒、食
 コンビニでビッグコミックオリジナル深夜食堂を立ち読みしていたら、あらら、ぼくの料理レシピが紹介されている! その名をぼくのブログでは『ニュー・コンビーフ 赤鬼風』
 といってもぼくが編み出したレシピではなく、深夜の場末の飲み屋で『赤鬼』とあだ名される男が毎晩のように食べていたもの。いかにも体に悪そうなところがまた酒の肴にぴったりです。漫画に取り上げられるくらいなら、わりとメジャーな食べ方なんだろうか。
 
 いかにも体に悪そうといえば、ハンバーガーもそうですよね。だからぼくも好きなんですが、その発祥は諸説あれど100年前のアメリカで『ハンブルグ風』と呼ばれるサンドイッチが始まりであると、アメリカのとある店は主張します。いわく、その店に来たお客の『歩きながら食べられるものを作ってくれ』という注文に応えて作ったのが最初だと。

「うちの店にはケチャップは置いて無いんだ。そんなもので味をごまかしたくないからね。焼いている道具だって100年前のものさ。本当に美味しいものだけを食べてもらうのが、我々の誇りなんだよ」
 どうしてケチャップがかかってないのだという客に、店の方針をごり押しする高飛車な態度にもかかわらず人気の店だそうです。
 
 ところがこういった店がアメリカ中にわんさかあるらしく、それぞれがハンバーガーの元祖だ本家だと公言したはばからない。しかし、おそらくは全米で同時多発的に食べられ始めたのだろうから、それで間違いじゃないのだそうです。

 軍隊の携行食みたいな塩漬け牛肉の缶詰であるコンビーフですが、日本に入って来るや否や様々なレシピが考案されたことでしょう。だけど『ニュー・コンビーフ 赤鬼風』は断じてぼくの命名です。なんて、日本中に同じ主張している人がわんさかいることでしょうから、商標登録でもしておくべきだったか!

怖い話には、わけがある

2009年03月09日 | 童話
 怖い話というのは嘘っぽいけど怖いので、わざわざ本を買って読むことはありませんが、たまに書いてみようかと思うことはあります。
 ミステリーでもラブストーリーでも、苦手だからこそ書いてみるべきなのかもしれない。去年文庫本にアンソロジーとして収載されたのもそんな気分で書いた作品でしたが、今年は色気を出して上位入選を狙ったものの、結果は前回と同じく佳作入選でした。
 
 締め切り日の日記を読み返してみたら、やっぱり当日消印有効のその日に書き上げて投函してました。たった5枚とはいえ、なめた真似して結果は着いて来るはずもありません。せめて1週間、いや1日でも推敲していたら違った結果になっていたかもしれないのに、後悔先に立たずというやつです。
 でもそれは仕方ない。まだ怖い話のツボが良く分かってないんですよね。だから取っ掛かりにぐずついてぎりぎりになってしまうんでしょう。ところが先月、阿刀田高さんの短編を読んでいて、うわっ怖ぇー! こういう風にかけば怖いのか、とツボが少し分かりました。
 
 怖いもの、お化けとか怨霊とか、そういったものをいきなり出して、どやっ怖いやろ、とやっても駄目なんでしょう。そこにいたるプロセス、どうして化けて出たかのか、その背景を知っているからこそ怪談を聞かされて我々は震え上がるんでしょう。
 たった一枚の皿のために命を落とす羽目になり、死んでなおその皿を探し続けるお岩さん。さぞ無念であろう、恨めしいであろう、という昇華できない情念が、嘘っぽい話にリアリティーを持たせるのかもしれません。
 
 振り返って今回の怖い話は、やっぱり実在の人物、舞台をイメージして書きましたし、エピソードもそれに準ずるもの。いわゆる噂、憶測の域を出ない、ありがちなもので、なおかつ怖い背景が書けてない。佳作が相当であるより、良く考えればラッキー! 
 それにしてもこの作品、文庫本に掲載されても、またペンネームを変えられるでしょう。いかにもそれらしい名前が、作品の信憑性を著しく低下させそうだからです。それなら本名で発表するか? ダメダメ、できの悪さが恥ずかしい。いやそれより、関係者各位に突込まれる恐怖こそが、作品の怖さに勝るでしょうから。