らんかみち

童話から老話まで

そうか、不時着すれば英雄になれるんだ

2009年01月17日 | 社会
 凍結しそうなハドソン川に旅客機が不時着水して、機長を讃える話で持ちきりの米メディアですけど、ええかげんにしときや! などと苦言を呈するのはひねくれ者ですね。暗い世相に一筋の光明を見る思いで不時着のニュースに歓喜するのは同感ですが、あんまり英雄扱いしたら、「そうか、不時着すれば良かったんだ!」と、真似する輩が出ないともかぎりません。
  
 バイオリニストの五嶋みどりさんが14歳でレナードバーンスタイン指揮の下で演奏したとき、バイオリンの4本あるうちの一番細いE線を2回も切りながら見事に演奏しきったのはアメリカの教科書に載るくらい有名なエピソードです。
 いまならE線にはスチール弦を張るソリストが多いと思うんですが、当時みどりさんはラム・ガット弦を張ってたそうです。ラム・ガットは羊の腸を素材にしている関係で湿気に弱く、あの日の会場は湿度が高くて切れるのに十分な条件が揃っていたんだそうです。
 
 バーンスタインと競演するくらいだから実力はすでに認められていたみどりさんですが、この一件でいきなり英雄扱いされるようになります。すると、「なんだ、弦を切れば英雄になれるんだ」と、わざと自分の指でE線を切ってしまう演奏家が続出したとか。証拠映像を見たことがありますけど、バレバレだっちゅうの!
 
 よもやプロのパイロットが旅客の搭乗している実機でわざとエンジンを切るバカはしないと思うんですが、フライトシミュレーターでハドソン川に不時着してみて、「なんだ、これなら俺にだってやれるぞ」なんて考えた素人は少なくなかったはず。
 何年か前にジャンボ機を乗っ取ってレインボーブリッジをくぐろうとした、頭をハード・ストライクしたようなマニアがいましたよね。マニアってのはどこの何に反応するか分からないので、今回のようなニュースの取り扱いは難しいものがあります。

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