らんかみち

童話から老話まで

マジカルドロップスを読んでウソの練習

2007年08月04日 | 童話
 区役所に転出届を出してしまうと、もう堺市民ではありません、みたいな扱いをされるような気がして悄然となります。といっても本当は区役所の方々はとても親切だったのですが、なんとなく余所者のひがみを感じてしまったぼくなのです。
 
 部屋が片付いていよいよ引越しの臨戦態勢に入ったと思うと、夢に見るのは不思議なことに前に務めていた会社の連中だったりします。ただ引越しするだけで、今生の別れというわけでもないのに、彼らと最後の晩餐を楽しむぼくの姿がそこにあるのです。
 
「うわ~、自分ら久しぶりに会うたけど、みんな若いなあ!」
と、ぼくが驚きの声を上げたら、
「HALさん、えらい老けたなあ、なんでやのん?」
 そんな言葉が返ってきて、ぼくは憮然とします。確かに彼らは若くて、ぼくだけが年相応の風貌になっているんです。でもそれは、ぼくが彼らの若い頃の容姿しか覚えていないのですから当たり前なのでしょう。
 
 風野潮さんの「マジカル・ドロップス」を読みました。42歳の主婦が、ドロップを噛むと2時間と17分だけ15歳に戻れるという物語なんですが、読み終わってみると「え、もう終わりなの、さみしい!」って思うほど楽しい小説でした。
 
 ただ一つだけ違和感をぬぐえないのは、42歳から15歳に戻ったからといって、我が子が見ても分からないほど激変しているでしょうか。まして初恋の人の顔を一目見て分かったというエピソードを挿入していたるするのですから、太ってしまったからといっても都合が良すぎやしませんか、と文句を言いたくはなりますが、それを差し引いても素敵な物語でした。
 
 小説を書くというのは、ある意味では嘘を書き連ねることでもあり、それにリアリティを持たせるために長々と情景描写や心理描写を重ねていくのでしょう。どうもぼくはその辺が苦手で、ストーリーだけを展開させてしまいたくなってしまうんです。なので他人が読むと「うそ臭い」と評されてしまうのかも知れません
 ここらへんで思い切って嘘つきになり、自分では冗長に思えるほどの間をとったものを書いてみようかと思います。

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