らんかみち

童話から老話まで

まぁた祭りかよ!

2009年11月03日 | 暮らしの落とし穴
 ったくぅ、次から次へと行事が押し寄せてきて目が回りそう。今日は段原神社の例大祭ということで、朝から幟立てやら神社の幕張りやらして、夜には宮司さんが村人を前に太鼓を叩いて祝詞をあげました。
 かつてこれらは神事でありながら、一方では村人同士の融和と娯楽の場を提供する役割を果たしていたのでしょう。しかしながら高齢化の進む過疎地にあって、これらの年中行事をこなすのはもはや責苦と似ています。

 これでも行事は少なくなったはずで、昔ならこの季節には「亥の子さん」というのもありました。子どもが生まれた家に小学生たちが押し寄せ、「ごーりんさん」と呼ばれる丸い石に縄をかけ、円陣を組んだ彼らが歌いながら庭にごーりんさんを打ち付けて穴をうがつ、そんな習わしがあったのです。

 亥の子さんで家々を渡り歩くとお菓子やお小遣いがもらえたとように記憶しているんですが、終わった後に罰ゲームのようなパフォーマンスが待っていました。すなわち、お神酒をいただいた青年らがどこからともなく現れたかと思うと、ごーりんさんの縄を切って持ち去ろうとするのです。もちろん子どもたちは抵抗するものの、青年らは陽道作戦などを駆使して結局ごーりんさんを奪い去り、畑の中、山の中、あるいは小川に沈めて意地悪します。

 青年らと子どもたちの、ごーりんさんを巡る戦いは夜中まで続けられ、寒空に瞬く星々を見上げながら「こんなバカげた風習は、ぼくが大人になったら絶対に廃止してやる」と月に誓ったりしたものでした。
 そんなことも今は昔、あの時の心境で夜空を見上げることなんてもうあり得ません。思えばあれは子どもたちにとって得がたい経験であったし、青年らにとってもまたとない娯楽だったのかもしれません。

 今となっては不可能な行事を振り返ってノスタルジーに浸ることができるのは、村の行事がくれた贅沢な感傷といえるでしょうか。当時の青年らと語らう時、彼らは敵であったにもかかわらず、どこか懐かしい温もりを感じるのも事実。今の子らに同じような経験をさせてあげるのは望むべくもないけど、せめて往時の残り香みたいなものでも伝えられたらなと、おじさんたちは細々と祭りを続けるのです。

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