らんかみち

童話から老話まで

立山、純米ですか?

2015年03月18日 | 酒、食
             

 ずいぶん前のことだけど、いまだに忘れられない酒の銘柄がある。仕事で会社の人たちと富山に出張してホテルに着き、とりあえず一杯やろうとなってホテル内のレストランへ。
 せっかくだから富山の地酒を飲みたくて「立山の小瓶を一本」と女給さんに注文したら「純米ですか」と聞かれた。メニューには純米もあったけど、高い値段に設定されていたので「いや、普通のをお願いします」と答えた。

 たいていはそこで「畏まりました」だろうが、そのおばちゃんは、また「純米ですか」と聞き返してくる。「いや、本醸造の方をお願いします」と答えたら、また「純米ですか」と聞き返された。
「純米じゃない方を」と答えたら、またもや「純米ですか」と聞き返してくる。これはもう純米しか出さないつもりだと悟ったので「もうええわ、純米にして」と観念したら、会社の連中に大笑いされた。

 あのときの「純米立山」の味は悪くなかったけど、「女給にカモにされた情けない男」というレッテルを貼られ、一月ほど語りぐさになっていた。それも今となっては楽しい思い出だけど「純米立山」に対するコンプレックスがどこかに残っていたか、これを飲み干さなくてどうするよ! みたいな勢いで4号びんを買ってしまった。
 百名山の一つである立山を名に冠しているだけあって、クリアでありながら深みも持ち合わせている。これはやっぱり「純米ですか」ね。