らんかみち

童話から老話まで

ジャングル農法の果てに

2011年10月12日 | 暮らしの落とし穴
 近所の偉い先生がうちの隣に畑を作っていらっしゃる。一見すると耕作放棄地と勘違いしそうなのですが、こういった農法もどこかで聞いたことがあります。木の下も自然に任せて雑草の生えたいようにさせながら土を肥やす、いわば「ありのまま農法」でしょうか。

 人の力で雑草や作物をコントロールできているうちは良いですよ、でも先生の畑はコントロールされているのかどうか、微妙に怪しく茂っております。
「先生のジャングル畑は色んな花が咲いていて楽しいですね」
 嫌みというスパイスをふりかけてないといえば嘘になりますが、ある程度本気で褒めたところ、「たくさんの種類を植えるのが好きなんです」と返ってきました。

 あの日からぼくは先生の畑有り様を「ジャングル農法」と呼んで愛でておりますが、写真はそのジャングル畑の名も知らぬ花。スモモかなんかの木の下で、野良生えなのかどうか微妙だけど、あでやかに咲いておりました。

     

「やられました、またやられました!」
 先生が畑で叫んでいるので見ると、ジャングル畑のあちらこちらに浅いバスタブほどの穴が掘られているではありませんか。イノシシが畑に住むミミズ目当てに掘り返したのは間違いありません。うちの畑もそば畑もイノシシは来ませんが、流石はジャングル畑です。

 思い出すのは「桃李不言下自成蹊=桃李もの言わざれど、下自ずから小径成す」のことわざ。桃や李は美しい花を咲かせ美味しい実をつけるので、木の下には多くの人が通るようになり、やがて自然に小道ができるという意味でしょうか。
 この木の下に咲く花のように、先生の元にはその名声と人柄に惹かれて大勢の門下生が通うようですが、ジャングル畑にはイノシシも通うようで、怖いです。